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チューニング担当者に話も聞いた

Unique Melody「MAVERICK IIカスタム」を聴く ー 大幅進化した第2世代ハイブリッド型IEM

公開日 2018/03/01 11:11 編集部:小澤貴信
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あえて粗探しをしてみると、クリアさが増して曖昧さがなくなったぶん、音そのものに注意がいくからなのだろう、従来のMAVERICKで際立っていた音の響きの3次元的な広がりがやや薄くなったような気もする。ただし、例えばボブ・ディランの『血の轍』から3曲目「You're Big Girl Now」の冒頭のアコースティックギターで音の広がり感を厳密に聴き比べると、音場はむしろ広くなり、より遠くまで見通せることがわかる。楽器の位置関係も明快で、その意味で空間再現もさらに強化されていると言える。

宮永氏が語るMAVERICK II 開発秘話

初代MAVERICKの音が完成度の高いものだっただけに、まだ伸びしろがあったことには驚かされた。この第2世代機の音作りは、どのような狙いの元に行われたのだろうか。音質チューニングを担当したミックスウェーブの宮永賢一氏によると、MAVERICK IIでは、高域の特性改善、そして中高域の音の抜けを向上させることがまず大きなテーマとしてあったという。

MAVERICK IIでは、高域の特性改善、そして中高域の音の抜けを向上させることががまず大きなテーマとしてあった

進化のベースとなったのは、先行したMAVISやMASON IIで確立されたポート増設や音導管の変更だろう。これらの開発成果が、MAVERICKらしいサウンドを引き出しつつ、よりソリッドでタイトにできることは、当初から想定できたという。宮永氏も「MAVERICKを完成させた当時は気にならなかったのですが、MAVERICK IIを開発する段階では、中高域の開放感を向上させることがひとつのテーマになりました」と語っていた。

従来機を開発したときには気にならなかった要素にも、第二世代の開発時には進化の必要性を感じた。その理由には、先行した同社モデルの成果に加え、ミックスウェーブが取り扱う各ブランドのイヤホンの影響もあった。MAVERICK IIの開発タイミングでは、ちょうどCampfire Audio「Andromeda」が人気を博しており、やはり意識させられたという。64 AudioがADELテクノロジーとApexモジュールによって実現する独特の開放感も、MAVERICK IIの音抜けを向上させる上でインスピレーションになったようだ。

「他社も含め、先行して登場しているモデルに対して、新しいモデルが優位でなければいけないのは当然です」と宮永氏は語っていた。

ダイナミックドライバーを従来から変更

ドライバー構成は従来から継承しているが、低域を担当するダイナミックドライバーと、中域を担当するBAドライバーは変更された。特にダイナミックドライバーは、従来よりユニットの厚みを小さくしたものを選択。レスポンスの高速化やアタックの再現性の向上を狙った。

フェイスプレート上の配置したポートを2つに増やすことで、音の抜けをはじめ音質チューニングをさらに追い込んだ

音導管は従来の樹脂製チューブから合金製チューブへ変更

「ダイナミックドライバーをフルレンジで鳴らす場合なら、例えばベリリウムコーティングを用いるような手法で、再生帯域を広げるというアプローチが有効です。MAVERICK IIの場合はハイブリッド構成なので帯域を広げる必要はなく、むしろレスポンスを向上させることに着目して、低域の解像度を向上させました」と宮永氏は語る。

新しいMAVERICKをでもうひとつ力を入れたのは、ボーカルの再現性だったという。従来機が楽器の表現やバンドサウンドの再現に重きを置いていたことは以前の記事でも紹介した。一方、その後に登場したMAVISでは逆にボーカルの再現に振ったチューニングを行った。今回のMAVERICK IIでは、ボーカル再生にも改めて意識を向けたのだという。実際に聴いてみると、確かに初代よりボーカルが前に出てきてバックミュージックの中に埋もれず、明瞭さも増している。

初代MAVERICKを聴いたときに特に印象的だったことのひとつが、ハイブリッド型とは思えない位相の良さで、この点もMAVERICKIIはしっかり引き継いでいる。各音に焦点がぴたりと合い、広い音場の中に楽器がしっかり定位する。Unique Melodyでは特定の波形を再生して測定を行いながらドライバーの配置も入念に調整することで、優れた位相の再現を可能にしているのだという。

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