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高橋 敦が音質傾向や各種機能をチェック

【レビュー】JVC「HA-S88BN」を聴く ー “+α”を持つノイキャン対応Bluetoothヘッドホン

公開日 2017/08/18 11:27 高橋 敦
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まず「超余裕のバッテリーライフ」だが、具体的には、

・ワイヤレスのみなら約27時間
・ノイズキャンセリングもオンにして約16時間

だ。ノイズキャンセル常時オンでも通勤通学往復3時間くらいとして平日の5日間はもつだろう。「ノイズキャンセリングは電車内でだけ使う」のようにすればさらに伸びる。

これに匹敵するバッテリーライフの製品がないわけではないが、サイズや装着感、サウンドクオリティ、そしてこの価格といった要素をバランスよく兼ね備えた上で、さらにこのバッテリーライフというのがポイント。

ノイズキャンセリングの効果も高い。例えば電車内では、走行音の「ゴゴゴ」や空調音の「グオオ」はそれぞれ「コココ」「サー」のように低音と濁点が半減、いや半減以上な印象だった。室内においてもエアコンはもちろん、除湿機や掃除機、布団乾燥機、ドライヤーなど、うるさい家電全般に対して強力な効果を発揮してくれた。ヘッドホンにおけるノイズキャンセリング性能として、トップとまでは言えないにしても上位クラスとは言える。

ノイズキャンセリングをオンにしているときの「サーッ」というホワイトノイズはやや大きめだが、消してくれる騒音の大きさと差し引きで考えたらそれほど気にならないはず。騒音がそれほど大きくない環境ならば、さほど目立たない。

なおノイズキャンセリング機全般によくあることだが、オンにすると再生の低音が強めになる。

音の面では「プリセットサウンドモード」が便利だ。どの帯域の楽器もフラットに鳴らす「ノーマル」モードの他、低音の迫力を増す「バスブースト」モードとボーカル重視の「クリア」モードを、曲や気分、周囲の環境に合わせて、スイッチひとつでさっと切り替えられる。

ポイントは「アプリから設定」ではなく「ヘッドホン本体のスイッチでさっと切り替えられる」こと。だからこそ実際の利用シーンで手軽に活用する気分になれる。

■高域のチューニングの「刺さらずぼやけず」の落とし所が巧い

サウンドチェックはまず「ノーマル」モードで行った。

女性ボーカルのポップスバンド、相対性理論の「夏至」では、ボーカルのいわゆる「刺さり」や「荒れ」が気にならない音作りにされていることに納得。Bluetooth伝送時の圧縮で目立ちがちな部分だが、その刺さる高域をソフトタッチにしてあるのか、この製品ではそこが気にならない。

それでいてそれぞれの音の輪郭が曖昧になることもなく、高域のチューニングの「刺さらずぼやけず」の落とし所が巧い。聴き疲れもしにくいタイプの音なので、バッテリーライフと合わせて「毎日たくさん音楽を聴いていたい!」という方にぴったりだ。

全体のバランスももちろん良好。他ふたつのモードとの使い分けを考えても、やはりこのモードが基本になる。

モードボタンを一回押すと「ポポ」とサウンドが鳴って「バスブースト」モードに切り替わり、低音楽器、例えばベースの肉感や厚みが明確にちょい足しされる。

この「明確に」「ちょい足し」というのがこれまた巧い。しっかりとした効果を感じられる、しかしやりすぎではない、巧妙な低音強化だ。こういった機能は効果が弱すぎても強すぎても使いにくいのだが、この製品のナチュラルなバスブーストは使える場面が多い。低音を楽しみたい曲、周りがうるさすぎてノイズキャンセリングしても低音がまだ物足りないときなど、積極的に使っていける。

「クリアモード」は中低域の空気感がすっきりとする印象。ボーカルに限らず中高域、例えばスネアドラムやハイハットシンバルの抜けっぷりも高まる。

音の響きが整理されることで余白が生かされ、空間表現も感じやすくなる。アコースティックな曲はもちろん、この相対性理論のようにエレクトロニックな空間描写を活用しているポップスやロックなどを、静かな場所でじっくり楽しみたいときなどに合いそうだ。他、ノイズキャンセリングをオンにした際の低音アップが好みに合わない場合にこのクリアモードをでそれを緩和するなんて使い方もできる。

サウンドにおいてもこのモデルの魅力は、ベーシックな部分の素直な仕上がりと、そこに加えての「モード」機能での幅広い対応力と言える。

機能においても音においても「+α」が光るヘッドホンだ。

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