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手頃な価格でモニターにもリスニングにも

AKGの新モニターヘッドホン入門機「K92/K72/K52」。各機のキャラの違いをレビュー!

公開日 2017/05/26 10:00 岩井 喬
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ナチュラルなバランスサウンド「K52」


K52
まずK52は、AKGらしいハリ良く粒立ち細やかな高域感と、最近のトレンドである中低域の厚みを適度に融合させたナチュラルなバランスを持っており、オーケストラも厚み良く伸びやかに表現。中高域に多少詰まるポイントも感じるものの、リリースのクリアさや弦楽器の潤い感も素直に捉えている。

ロックのディストーションギターは軽快なリフとなり、ソリッドに描く。リズム隊は密度良く締まり、シンバルの響きも軽やかだ。ボーカルはボトムをしっかりと残して口元の潤いもハリ艶良くスムーズに描き出す。ピアノの響きは落ち着き良く、ホーンセクションの鮮やかな伸びもハリ良くストレートに展開。女性の声はAKGならではのクリアで瑞々しいタッチで描かれ、肉付き良くナチュラルで存在感豊かだ。

基本的に音像の描写は滑らかにまとめ、個々の楽器を丁寧に重ねてゆくスタイルを持つ。モニターの正確さという点では上位機種に譲るものの、音像の素直な表現においてはK52でも十分に掴みとることができた。


低域に厚みあるリッチサウンド「K72」


K72
続いてK72であるが、K52の持つ素直な音色を低域方向へ引き延ばし、リッチなサウンドになっている。リズム隊やウッドベースの帯域を豊かかつ濃密に表現し、太く安定的に描き出す。高域の描写性もそれに当たってチューニングされているようで、よりエッジ感を際立たせるシャープで切れ味の良い描写となる。

ボーカルもボトムがより太さを増しどっしりとした存在感が際立つ。弦楽器はより艶良くクリアに浮き上がるが、ピアノはウォームでまろやかな響きが強まり、ハーモニクス豊かに表現。ホーンセクションやシンバルなどの金属系楽器は涼やかで細身の描写となり、余韻もクリアで見やすい。オーケストラのハーモニーもウォームな響きを湛えており、潤い良い弦のスムーズで滑らかなタッチを丁寧に描き出す。

低域方向の響きも高密度であり、中域のヌケ感がもう一つという印象ではあるものの、昨今求められる低域の豊かさを他の帯域とのバランスを保ちつつ、破たんなくまとめ上げているようだ。


モニターにもリスニングにも向く「K92」


K92
最後にトップモデルのK92である。K72の持つ低域のリッチさと、K52の持つバランスの良さをより高次元に融合させるため、中高域の表現力をより高めて全体のバランスが整うようレンジの強化を図ったかのようなサウンドだ。

低域方向は深くリッチに響かせつつ、高域はクリアで煌びやかなゴージャスさを持たせた、際立ち良いものとしている。ボーカルは艶良くスムーズな口元を滑らかに描き、中域から下のボトム感がより太く感じられ、安定力が高い。オーケストラは雄大で、ハリ良くふくよかな管弦楽器の響きは堂々として伸びやか。ピアノのアタックも澄んでおり、クリアでありながらボディの響きは厚み良くふくよかで温かみある余韻を楽しめる。ウッドベースのしなやかな弦運びも自然であり、シンバルの響きも爽やかだ。女性の声もしっとりとして密度高く落ち着き良い。

バランス良く解像度も保ちながらもゴージャスに音楽を聴かせる、ある意味モニターよりもリスニング寄りの音作りが特長といえるだろう。




ハイパフォーマンスシリーズの3台はいずれもAKGらしい芯のある音像とバランスの巧みさを軸に持っており、モニターヘッドホンとしての用途だけでなく、広くリスニング向けとしても薦められる内容を持ったハイC/Pモデル達である。

この中で最もモニター的なニュートラルに近いバランス傾向を持つのがK52だ。本来のモニターとしての役割に加え、満遍なく様々な音楽を楽しめる絶妙なサウンド性を持つ。

K72はリズムに特長を持たせたEDMやヒップホップなどを楽しむリスナーに最適だろう。K92についてはモニターユースに限らず、エントリー向けヘッドホンのなかでもワンランク上のサウンドを目指す第一歩として最適なチョイスであり、バランス志向でありながらもゴージャスに音楽を楽しめるモデルとなっている。

AKGの歴史あるモニター機としての実績を背景にしながらも、プロ由来のより音楽に寄り添ったダイレクトな表現に加え、より華やかなサウンド性を両立した新提案のヘッドホンシリーズと言えるだろう。

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