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新Contour最上位の3ウェイ・スピーカー

【レビュー】ディナウディオ「Contour 60」 ー 生音のような低域を再現する“新たな金字塔”

公開日 2017/03/22 10:00 井上千岳
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ジャズはウッドベースもそうだが、ドラムがずっと盛大に聴こえる。音量が大きいということではなく、はっきりわかるのだ。キックドラムのチューニングはたぶん40Hz以下だと思うが、いままでこれほどエネルギッスに炸裂したことはなかった。やはり音程だけではなく、振動と停止の速さと確かさが鍵なのである。

おそらく本機の低音は、ディナウディオの中でも最も進んだものと言っていい。その点では上級機を凌ぐのは確かだ。そしてこれだけ低音がいいと、音楽全体の生命力が全く違ったものになる。

新Contourの3ウェイ機が実現した、ディナウディオの誇るべき金字塔

オーケストラのトゥッティ(全合奏)では起伏が大きく、そのため一音々々の彫りが深い。その落差の大きさが、ダイナミズムを広げ生命力を高めているわけである。そして常に厚く柔軟だ。ここが大切なところで、大音量のアタックでもがちがちに硬質な塊のような音になることがない。生の音はそのように荒っぽくなることはなく、どんなに厚手でもまた強烈でも弾力的で柔らかいものなのだ。

井上千岳氏とロナルド・ホフマン氏

ピアノやバロックでも、このごく生に近い手触りが備わっている。バロックのチェンバロやヴァイオリンはともすると硬質でぎすぎすしたものになりがちだが、ここではきめ細かな粘りと輝かしさが潤い豊かに描き出されている。そしてやはり厚いのだ。細かな余韻が打ち消されないためかもしれない。

ピアノのタッチもどこか違う。ことに低音部の実在感がそうだ。無機質で機械的な打鍵のタッチではなく、肉質感のある太さが乗っている。それがフォルテになっても崩れたり濁ったりすることがなく、どこまでも整然としていながら強靭だ。ニュアンスのデリケートなことは言うまでもない。



3ウェイだからいいというわけではないが、やはり下位2モデルとは情報量と再現力が違うようだ。このサイズとユニット構成は、単に広い空間のためにあるのではない。これでなければ出せない音を、どうしても現実のものにしたかったのだ。実に渾身の設計というべきかもしれない。ディナウディオの誇るべき金字塔と呼んで差し支えなさそうである。

(井上千岳)

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