イヤーカップのタッチセンサーなど快適機能も継承

ストレートな力強さと、広い音場感を兼ね備えたB&O PLAYのワイヤレスNCヘッドホン「H9」レビュー

山本 敦
2017年03月30日

バング・アンド・オルフセンのカジュアルブランドであるB&O PLAYは創業以来、そのラインナップに欠けていた商品を着実に埋めながらここまで順調に展開してきた。最新モデルの「H9(関連ニュース)」は、2015年3月に発売された「H8」に続くワイヤレス・ノイズキャンセリングヘッドホンだ。

「H9」がベースとしているのは、ワイヤレスヘッドホンの「H7」やその先達であるワイヤードヘッドホンの「H6 MKII」だ。いずれのモデルも北欧を代表するプロダクトデザイナーのヤコブ・ワグナー氏がデザインを手がけている。カラーバリエーションは落ち着きのあるブラックとアルジラグレイ(ベージュとシルバーのコンビ)の2色が揃う。

試聴に使用したのはブラックモデル


Bluetoothによるワイヤレスリスニングと、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を合体させたいわゆる“全部入り”のヘッドホンは、いま名だたるヘッドホンブランドが競い合いながら先端技術を投入したフラグシップモデルを世に送り出す熱いバトルフィールドである。

その中でB&O PLAYは、オンイヤータイプの「H8」をいち早く投入してブランドの存在感を高めた。本機はアルミ製イヤーカップの表側がタッチセンサーリモコンになっていて、音楽再生やハンズフリー通話を快適に操作できる機能が斬新だった。同じ機能は最新モデルの「H9」にもそのまま継承されている。

イヤーカップ部がタッチリモコンになっている

モバイルアプリ「Beoplay」との連携にも注目したい。同アプリはiOSとAndroid、両方のプラットフォームで配信されている。ブランド初のBluetoothワイヤレスイヤホン「H5」の誕生とともに配信がスタートしたBeoplayアプリは現在、ヘッドホンはH9/H8/H7と、ワイヤレススピーカーはA1/A2などのB&O PLAY製品と連携できる。

H9の場合、アプリから最も頻繁に使うのはイコライジング機能とノイズキャンセリング機能のオン/オフの切り替えになるだろう。イコライジング機能についてはH5の頃から使い方は同じ。WARM/EXCITED/RELAXED/BRIGHTの4象限マトリクスの中で、任意の場所に白いポインターを移動させるとヘッドホンから聴こえるサウンドがリアルタイムに変化し、好みのサウンドをモニタリングしながら選べる。Commute/Clear/Workout/Podcastという4つのプリセットも用意されている。任意の設定をユーザープリセットとして複数個保存することも可能だ。

アクティブ・ノイズキャンセリング機能のオン/オフは、タッチリモコンのパネルを上下にスワイプする操作でも切り替わる。タッチリモコンは感度良好で、レスポンスも正確。筆者は特にパネルを回すように円を描きながら指でなぞると、音量をアップダウンできる操作がお気に入りだ。

イヤーカップ部で操作。右側には有線接続用の端子部も装備

有線でも使用可能

アクティブ・ノイズキャンセリングは、イヤーカップの表と裏にマイクを内蔵して高精度にノイズを解析、打ち消すハイブリッド方式を採用する。H8同様にその効果は高く、地下鉄に乗りながら試してみると、継続的に響く低音域のノイズをきれいに消音してくれる。カフェでは隣席の会話が気にならなくなるほど、中高域の外音もバランス良く遮断する。ノイズキャンセリング機能をオンに切り替えた時のプレッシャーはほとんど感じない。そして最大の魅力は、音への影響がとても少ないことだ。

表と裏にマイクを内蔵。周囲のノイズを解析して打ち消す高精度なハイブリッド方式を採用

高純度アルミニウムのヘッドバンド、本革を使ったヘッドバンドとイヤーパッドは、ただ材質にこだわったというだけでなく、ゆったりとした装着感を全体のバランスを整えながら実現している。モノとしての作り込みは、隅々まで配慮が行き届いているところもH6から受け継ぐB&O PLAYの流儀だ。

ヘッドバンド部やイヤーパッドは本革を採用。高級感とゆったりとした装着感を両立する

バッテリーはワイヤレス再生とノイズキャンセリング機能を同時に使いながら、最長14時間の連続再生をカバーできる。最近では飛行機のエコノミー席でもUSB充電ができるので、連続使用については海外旅行の長旅でもバッテリー切れの心配はほとんどないだろう。むしろ1時間前後の通勤に毎日H9で音楽を聴いても、3〜4日以上は充電しなくても大丈夫というところに使い勝手の良さを実感した。

オリジナルUSBケーブルを付属

音質については、B&O PLAYのサウンドマイスターとエンジニアが時間をかけてチューニングを練り上げている。B&O PLAYの他のモデルと同様に、ニュートラルでバランスの良いサウンドを基本としているが、H9はH8のストレートな力強さと、H7の広々とした音場感の両方を兼ね備えているヘッドホンだ。なお、BluetoothのオーディオコーデックはaptX-LLとAAC、一般的なSBCをサポートしている。

電源と合わせてBluetooth機能もON。接続可能な状態になるとブルーに光る

iPhone 7につないで、Apple Musicの楽曲をチェックした。映画「La La Land」のサウンドトラックより『Another Day of Sun』を聴く。ボーカルの声はタッチが滑らか、コーラスの解れも爽やかだ。金管楽器のハートーンは深いがギラつきはなく、柔らかく伸びやかに突き抜ける。芯のしなやかなベースラインがオーケストラの足下をブレずにしっかりと支える。低域の沈み込みが深く、奥行きが遠くまで見通せるほど豊かな空間表現力を持っている。

ディー・ライトの「World Clique」から『Groove Is In the Heart』では、彫りの深い低音の弾けるような軽快なリズムが心地良い。解像感が高いので、打ち込みによる細かい音の粒にもフォーカスがきっちり定まる。ボーカルは歯切れが良く、余韻が滲まない。それでいてしっとりとした柔らかさも感じさせる。

ビル・エヴァンスとジム・ホールの「Undercurrent」から『My Funny Valentine(Alternative Take)』を聴くと、駆け引きを繰り返しながら展開するピアノとギターによる、緊張感あふれるメロディと静音とのコントラスト感がとても鮮やかだ。プレーヤーの熱気が生々しく伝わってくる。ノイズキャンセリング効果が高く自然なので、アウトドアで聴いていても微弱な音の立体感が損なわれず、ストレスのない音楽再生が楽しめる手応えがあった。



H9にはB&O PLAYの音質とテクノロジーに一切妥協しない強い姿勢をこれまで以上に強く感じた。上質なヘッドホンリスニングのかたちを純粋に、そして徹底的に追求したヘッドホンだ。オーナーの期待を超えるほどの高い完成度にきっと満足できるはずだ。