「アーティストの個性を的確に表現」

【レビュー】JVCの新レーベル“N_W”から登場のウッドイヤホン「HA-FW7」を聴く

中林直樹
2017年01月24日
■JVCの新ウッドイヤホンが新レーベル「N_W」から登場

今回取り上げるイヤホン「HA-FW7」は、JVC新レーベルN_W(エヌダブ)からの第二弾である。第一弾はSOLIDEGE「HA-FD7」と冠されており、眩い光沢を放つステンレスボディに象徴されるシャープでキレのあるサウンドをコンセプトとしている。

HA-FW7

一方、本機HA-FW7のルックスはそれとは対照的なウッドのボディ。木の風合いが活かされた暖かみのある佇まいだ。同社が真摯に取り組んでいるウッドの技術がサウンド面にも活かされていることが容易に想像できる。

ただ一方で、第一弾と第二弾では、製品の特徴に大きな隔たりがあるように感じるかもしれない。製品群(レーベル)として統一感に欠けるのではないか、と。

しかし、このレーベルのコンセプトは「ライフスタイルに合った等身大の新しい世界の提案」。音楽との接し方が多様化する中で、オーディオプロダクトもそれにフィットするものであらねばならず、より多くの音楽ファンの耳や生活を楽しませるべき、という発想なのだろう。

狙いがそこにあるからこそ、こうした個性ある製品づくりにいそしめる。メーカー側の都合でターゲットユーザーを絞り込まず、最高の技術を盛り込んだ製品を感度の高い音楽リスナーへ、全方位的に展開する。N_Wからはそんな印象を受けた。

そもそも「シリーズ」や「ブランド」ではなく、「レーベル」と表現していることからも、これまでとは違う方向性を探っていることが見て取れる。今後もバリエーション豊かな製品の登場に期待したい。

さて、HA-FW7の特徴を見ていこう。キーパーツは50μmにまで薄型化した振動板だろう。これをドーム型に成形しφ8.5mmのダイナミック型ドライバーとして作り上げた。この部分だけでも、一朝一夕にはなし得ることのできない技術が詰まっている。

またボディ内部にはアルミを使用して不要振動を抑制、それをウッドハウジングで包むことで響きの調整を図ったという。さらにメタル素材を組み合わせて、ウッドの暖かみだけではない、モダンな印象も与えた。それにケーブルやイヤピースとのカラーマッチングが絶妙に図られ、3つのカラーバリエーションが誕生している。

ブラック、ホワイト、ブラウンのカラーバリエーション3色を用意

では、ポータブルハイレゾプレーヤーと組み合わせて試聴したい。このところ、ご存知のように多くの新作が国内外問わずハイレゾリリースされている。今、同じ世界を生きているアーティストが生み出す作品がすぐさまハイレゾで手に入ることは幸運だ。

僕も基本的には新作をメインに楽しんでいる。しかし、昨年、あるきっかけで出会ったリマスター作品には少なからず心を動かされた。それがジャズ/クロスオーバーレーベル「CTI」からリリースされているスタンリー・タレンタインの未発表曲集『ザ・シュガー・マン』(192kHz/24ビット)。e-onkyo musicからCTIレーベルリイシュー第2弾として配信されたうちのひとつだ。1971年から73年にかけて録音されたものだが、非常に鮮度の高いサウンドを聴かせるのがアルバムとしての特徴だ。

HA-FW7で「ヴェラ・クルス」を聴くと、まずベースの躍動感が否が応でも感じさせる。疾走はするが、制動も効いている、そんなプレイが伝わってきた。パーカッションが小気味よい。タレンタインのテナーサックスには芯があり、伸びやかだ。ただしソフトなジャズを目指したこのレーベルらしい、しっかりとしたサウンドプロダクションが保たれているのもわかった。

つまり、主役であるにも関わらず、敢えて抑制された演奏をすることで、ゴージャスなアレンジなどと調和したサウンドに仕上げているのだ。これはこのイヤホンとの相性の良さともいえるだろう。これは他のジャンルの音楽を再生してわかったことだが、決して荒れない、あくまでも耳に心地よいサウンドにチューニングされている。ウッドシリーズの真骨頂と言って良いだろう。

ハイレゾファイルではないがMETAFIVEの『METAHALF』も昨年、驚かされた作品のひとつである。高橋幸宏を中心とした日本の才能が集う、いわばスーパーバンドなのだが、一般的にこうした形式はセッション的な楽曲がならび、つまらなくなることがほとんど。だが丁寧に練り上げられた楽曲、吟味された音色など、決して一過性のものにならないパワーを孕んでいる。

こうした楽曲をHA-FW7はビビッドに伝えてくれた。シンセベースはタイトかつ前後左右に跳ね上がるように表現。ボーカルは耳に近く、リアリティーも抜群に高い。エレキギターのカッティングは非常にシャープで、音楽をスリリングに仕立て上げる。強弱や抑揚に富んだドラムプレイも堪能できた。

スピード感も十分。そして、それらが相まって立体的な音場が立ち上がる。調和やバランスを重視しながら、アーティストやバンドの個性も的確に表現する、そんなイヤホンだと思った。