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「HA-FX850」との音質傾向の違いは?

JVCの“エクスクルーシブ”ウッドドームイヤホン「HA-FX1100」レビュー

2014/12/29 野村ケンジ
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イヤホンやヘッドホンに関して、幅広いラインナップを取り揃えているJVCブランド。なかでも、ひときわ特徴的なコンセプトとスタイルを持ちあわせているのが、カナル型イヤホンのフラッグシップモデル“ウッドドームシリーズ”だ。筐体だけでなく、振動板などにも木材を採用することで、他に類を見ないオリジナリティを発揮している“ウッドドームシリーズ”だが、新たにエクスクルーシブモデル「HA-FX1100」が追加された。

HA-FX1100

この「HA-FX1100」、ユニークなことにフラッグシップモデルではなく、あくまでも“エクスクルーシブ”なモデルとして追加されたものなのだという。ちなみに、“ウッドドームシリーズ”の現行ラインナップはフラッグシップモデル「HA-FX850」と上級モデル「HA-FX750」、標準モデル「HA-FX650」の3バリエーションとなっていて、「HA-FX1100」とは型番の系統(名付け方)が異なっている(もしハイエンドモデルの追加であれば「HA-FX950」などの名前になっていたと想像する)。同じ“ウッドドームシリーズ”でありながら、別のコンセプトやアイデンティティを持つ製品となっているのだ。

実際、開発者に製品の詳細について訊ねてみたところ、この「HA-FX1100」は、「HA-FX850」発売時に盛り込めなかったアイディアや、発売後にユーザーからもらったフィードバックをもとに、様々なトライを行い、現状で最高の“ウッドドームシリーズ”を作り上げたものだという。

また、こういった最新のグレードアップが施された製品は“リミテッドモデル”として展開されていることが多くなっているように思うが、「HA-FX1100」は限定モデルではなく通常モデルとなっているため、そういった呼び名は当てはまらない。まさに、“エクスクルーシブ”という肩書きがピッタリの製品といえるだろう。

さて、それでは「HA-FX1100」の詳細を見ていこう。ベースとなっているのは“ウッドドームシリーズ”のフラッグシップモデル「HA-FX850」だ。ウッドハウジング、ウッドドーム振動板、ウッドディフューザーをはじめ、随所に木製パーツを採用しつつ、ブラスリングなどの真鍮パーツを組み合わせた特徴溢れる構造はそのままに、ハンダの素材を音響用のハイグレードなものに変更。同時に、MMCXコネクタを採用する着脱式ケーブルも、6NグレードのOFC編組タイプに交換されている。これらのグレードアップと、サウンドチューニングのいっそうの追い込みによって、さらなる高音質が実現できたという。

もうひとつ、嬉しいトピックがある。それは、イヤーチップサイズのバリエーション追加だ。この「HA-FX1100」には、イヤーピース内壁に丸くて小さなへこみ、ディンプルを設けることでイヤーピース内の反射音を拡散させて音のにごりを抑制するという“スパイラルドットイヤーピース”が採用されているが、これまでのS/M/Lという3サイズ展開からS/MS/M/ML/Lという5サイズ展開へと変更。いいまで以上にピッタリなサイズをチョイスすることができるようになった。こういった配慮は、ありがたいかぎりだ。

なお、「HA-FX850」との外観的な違いは、6NグレードのOFC編組ケーブルに布製のアウターが用いられていること、プラグがL字型になったこと、そしてウッドハウジングがシックな黒木目仕上げになったことなど。細かい部分ながらもいくつもあるため、比較的見分けは付けやすくなっている。

さて、肝心のサウンドはいかがなものだろう。基本的には、「HA-FX850」と同じキャラクター。弦楽器やピアノなど、アコースティックな楽器との相性が良く、ナチュラルで心地よい響きのサウンドを聴かせてくれる音色傾向は変わらない。しかしながら、音の粒の細やかさや音のダイレクト感など、基礎体力的な部分で格段のクォリティアップを見せる。

たとえばチェロの響きは、弦の振幅まで感じ取れそうなくらいフォーカスが高く、そしてリアル。細やかで丁寧なニュアンス表現のおかげで、弦の響きに呼応するボディの鳴りまでもがしっかりと伝わってくる。いっぽう、空間表現力の向上も特筆もの。ライブ演奏を聴くと、ステージとお客との距離感や、会場となったホールの広さまでもがしっかりと把握できる。

しかしながら、一番の魅力といえば女性ヴォーカルだろう。倍音成分の整いがよい、凛と張り詰めた歌声は、普段より鮮明で勢いもあって、とても清々しく感じる。しかも、距離感が近く、とても生々しいので、良質な録音だと聴いていてちょっとドキドキしてきそうなくらい。とても感動的なサウンドだ。

低域は、JVCらしいたっぷりとした量感を保ちつつ、雑味の少ない、フォーカス感の高いサウンドを実現しているため、生バンド演奏がピッタリ。ハードロックのライブ音源などを、積極的に聴きたくなる。

とはいえ、帯域バランス的にはかなり低域重視なタイプとなっているので、ヘビーかつグルーブ感溢れるサウンドを楽しみたいという人も、大いに気に入るはずだ。エクスクルーシブモデルという肩書きにふさわしい、なかなかにハイクォリティな製品だと断言しよう。

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