B&O PLAYのヘッドホン「H6 MKII」は「H6」からどんな進化を遂げたのか? 中林直樹が試聴レビュー

中林直樹
2016年06月02日

B&O PLAYのヘッドホン「H6」は、φ40mmのドライバーユニットを擁した密閉型のアラウンドイヤータイプだった。また、ワイヤレスやノイズキャンセリング機能は搭載しない、ブランドのオーバーヘッド型の中でもオーソドックスな位置づけにあった。こうした特徴を受け継ぎながらサウンド面でのブラッシュアップを図ったのが、今回紹介する「H6 MKII」である。

H6 MKII

まず率直に言おう。今回H6とH6 MKIIを比較試聴したが、その進化の度合いには驚いた。品名の末尾にMKIIとだけ付されたことが慎ましやかに思えるほどだった。

ケーブルは方出しで着脱可能、ハウジングの左右どちらのジャックにも対応できること、高純度アルミニウムのハウジング、良質なレザーを惜しげもなく使用したヘッドバンドやイヤーパッド、デザインをヤコブ・ワグナーが手がけたことなどは、前モデルを踏襲している。インピーダンス(30Ω)や質量(230g)といったスペックにも変更は見られない。

それはH6の完成度がそもそも高かったことを示しているといえよう。しかし、それに飽き足らず、さらなる音質向上を目指したのである。採られた手法は詳しく明らかにされていないが、ひとつはドライバーユニットの取り付け角度を再検討したこと、加えてハウジングにベースポートを設けて低音域のチューニングを図ったことだという。

外観はほぼ一緒

H6 MKII(右)はハウジング内部がグレーになり、文字が判読しやすくなった


左が「H6」、右が「H6 MKII」。パッケージは若干サイズが異なるが、基本イメージは一緒だ

基本性能はそのまま、音質は確実に向上

さて新旧モデルを、ハイレゾ対応ポータブルプレーヤー、アステル&ケルンのAK380と接続。まず、デイヴィッド・ボウイの『★』(96kHz/24bit)から「Sue (Or In a Season of Crime)」を聴く。

早速、新旧モデルの違いが、低域に現れた。H6 MKIIはベースやエレキギターの低域が柔らかくなり過ぎず、解像度もほどよく向上している。そのため立体的で、躍動感も伝わってきた。

この楽曲はニューヨークの若手ジャズミュージシャンたちが、ロックのリズムに倣いながら白熱した演奏を聴かせる。だが、各パートの分離感よりも、バンドサウンドとしての調和を図ったミックスが施されているため、音楽全体が一塊となってしまうことが多いのだ(体調の思わしくないボウイのボーカルと、サウンド上のブレンドを図った結果なのかも知れない…)。ゆえに、ヘッドホンに限らず、ハイグレードなオーディオシステムでもなかなか思うように鳴らしにくいのだ。

H6 MKIIは、そんな雰囲気をさっぱりと拭い去ってしまうわけではないけれど、前述したように低域がかなりクリアになるため、リズムセクションが弾むように表現される。これが最たるアドバンテージであり、今回のブラッシュアップの産物といえるだろう。

なおH6 MKIIはリモコンマイク付きケーブルも付属。H6 MKII同士をつなげて音楽をシェアするデイジーチェーン接続にも対応している

次は約1年前にH6をレビューしたときにも使用した原田知世の『恋愛小説』(96kHz/24bit)を再生。H6 MKIIでは原田のボーカルの透明感が一層アップする。低域のモヤが薄まり、ホーンセクションやオルガンなどの輪郭も際立ち、巧みなプレイが浮き彫りになった。なお、原田は本アルバムの続編『恋愛小説2』をリリースしたばかりだ。こちらもハイレゾで配信中。「木綿のハンカチーフ」や「年下の男の子」など日本の珠玉の歌謡曲たちをカバー。アレンジや録音にも優れ、オーディオ的な視点でも存分に楽しめる作品となっている。

やや話が逸れたが、次は坂本龍一が手がけたサウンドトラック『レヴェナント』(44.1kHz/24bit)を聴いてみた。旧モデルではストリングスの中域が滑らかでかつ粘りも感じさせた。音場も広く、これらのポイントだけでも性能の高さを十分に感じさせた。それがH6 MKIIでは、全ての楽器の立ち上がりが俊敏で、しかもストレートに耳に迫ってくる。H6の雰囲気を巧みに残しながら、音場の密度を高め、濃厚な味わいに仕上げている。それでいて、ストリングスの背後に漂う微細なエレクトロニクスも暴き出す。

最後はジャズ作曲家、挾間美帆の『タイム・リヴァー』(96kHz/24bit)。H6ではサックスやトランペットの角が取れ、全体にマイルドな印象だったのに対し、H6 MKIIでは各楽器の低域から高域まで伸びやかで解像度も高い。ストリングスやホーンセクション、ヴィブラフォンやピアノがきれいに分離し、軽やかな印象を与える。また、音像の中心から、サウンドが前後左右に広がって、立体感も生み出されている。

H6の基本性能の高さをキープしつつ、心臓部に手を加えることで誕生した最新モデル。変わらぬ上品さを湛えたルックスの内部には、そんな大胆なチャレンジが施されていたのだ。その成果を比較試聴を通じて確認することができた。