B&O PLAY「H7」レビュー:アーティストの声と音楽のニュアンスを描き出す美しいヘッドホン

中林直樹
2015年12月07日

ブランドのコンセプトやラインアップを、まず語る− こうしたレビューを綴るときの定石である。ただ、今回は、せっかく特設ページもあることだし、そちらにゆだねたい。全てのプロダクトがまとっている美しく端正なフォルムを一覧すれば、B&O PLAYの目指すデザインの方向性も自ずと見えてくることだろう。

密閉型のオーバーヘッドタイプはカジュアルな「H2」、スタンダードな「H6」、ワイヤレスでノイズキャンセリング(NC)機能も搭載したフル装備の「H8」がすでに発売されている。今回紹介するのは新モデルである「H7」で、そのモデル名のとおり、H6とH8の間を埋めるかのようなフィーチャーとしている。

B&O PLAY「H7」

つまり、H6をワイヤレス化しつつ、H8のようなNC機能は非搭載。なお、イヤパッドの形式はH2とH8がオンイヤー、その他がアラウンドイヤータイプとなっている(結局、ラインアップの紹介になってしまっている…)。

さて、このH7がワイヤレス対応であることは前述の通り。Bluetoothのバージョン4.1で、AACやaptXといったコーデックにも対応する。

右側のハウジング外側にはタッチセンサー(アルミタッチインターフェイス)を採用。タップしたり、スワイプしたりすることで曲の再生/ポーズ、曲送り/戻し、ボリューム調整、通話といった操作を可能にしている(動画解説はこちら)。昨今、このような装備が施された製品が増えてきた。しかし、中には誤操作を招くようなインターフェイスとなっていたり、ヘッドフォンとプレーヤー間の動作にズレが発生したりするモデルがあることも確か。操作に慣れるまで時間を要する製品も数多く見てきた。だが、本機ではそうした不利を一切感じなかった。ノンストレスで使用できる。それにはマットに仕上げられた表面で、指なじみが良いことも大きく作用している。

右側のハウジング外側にはタッチセンサーを採用し、基本操作が可能

イヤパッドはラムスキン、ヘッドバンドにはカウスキンを採用。これはH6やH8でも使われている素材で、極上のフィット感と高級感のあるルックスとを両立させている。特にイヤパッドの柔らかさと厚みが絶妙にバランスしており、遮音性能も極めて高い。

イヤパッドはラムスキンを使い肌触りよく仕上げている。ケーブルを使用し有線ヘッドホンとしても使用可能。

ドライバーユニットはφ40mm。サイズや再生周波数帯域は、H8と同じスペックだが全く異なるタイプのものを使用しているそうだ。さらにBluetoothのチップもH8とは別のものだそうで、それも手伝ってバッテリー寿命を20時間まで延ばすことに成功したという(H8は14時間)。


アーティストの声と音楽のニュアンスを描き出すフラットな音づくり

まず聴きたいのはワールドスタンダードの鈴木惣一朗とカーネーションの直枝政広による、ユニット、ソギー・チェリオス。彼らのニューアルバム『EELS & PEANUTS』がリリースされた。それぞれの道で、さまざまな経験を積んできた2人(ともに1959年生まれ)が生み出す大人のロック。決して暴れない、それどころか全ての楽曲にじっとりとした寂寥感が漂っている。しかし、その中心にはほんのりとした体温が宿る。ちなみにアルバムタイトルはそれぞれの地元の名物に由来しているそうだ。鈴木が浜松で、直枝が千葉。異なる場所で育った同級生2人が紡ぎ上げる世界を示しているのだ。

さて、アルバムの解説はこの辺にして、「H7」をiPhoneとBluetooth接続してみる。「あたらしいともだち」では低域の密度が高く、シンプルなロックだが、音楽に深みがもたらされているのがわかる。また、ボーカルのざらりとした表情も伝える。つぶやくようなその歌声には同時に温かみも加わって、彼らならではの音づくりの丁寧さも感じられた。優しげで朴訥としているが、そこには確実に何かを伝えようとするパワーが存在する。

続く「いつも雨」は歌やギター、ドラムスなどの余韻が混じり合って潤いのある音空間が広がる。これはイヤパッドの内部が音で満たされるようなイメージ。鈴木の力強い声は、意外といっては彼に失礼だろうが、十分に堪能できた。

充電はmicroUSB経由で行う

左側ハウジングにはバッテリーを内蔵

女性ジャズボーカリスト、セシル・マクロリン・サルヴァントも新譜を出した。『フォー・ワン・トゥ・ラヴ』でミュージカル楽曲やバート・バカラックナンバーなどしっとりと歌う。

最も印象的なのは最終トラックの「ソー・イン・ラブ」。やはりこの作品でも歌声のほんのりとした温かみを特長的に伝える。また、ピアノの低域とベースとがユニゾンで演奏され、それが楽曲全体に面白みを与えていることがわかる。また、ピアノのタッチの強弱、ドラムスのブラシワークなども余すことなく再生した。

さらにこの曲でセシルは女性とは思えないほど、とてつもなく低い発声をしたり、逆に小鳥のさえずりのような可憐な歌い回しをしたりと、持っているテクニックをすべて披露するようなボーカルワークにチャレンジしている。一歩間違えば、嫌味なサウンドになってしまうところ。だが、H7は落ち着きのあるトーンで聴かせる。良い意味でフラットな音づくりなのだ。歪みっぽさも皆無。フォルムはもちろん、サウンドも、この完成度の高さ。企画開発に携わるエンジニアやデザイナーに、そのエッセンスを取材してみたい。そう純粋に思わせるモデルだった。