B&O PLAY「H6」レビュー:デザインと音質を両立する、洗練された“王道”ヘッドホン

中林直樹
2015年07月13日
「B&O PLAY」。このブランドの製品を紹介するとき、ルーツとなっている「Bang&Olufsen」についてまず綴るのが定番だ。しかし、先進のテクノロジーとミニマムなデザインとを融合させるその企業文化は、すでに多くが語られて来たから、敢えてここで述べることでもないだろう。

とはいえ、その長い伝統に安住しているわけではないのが興味深い。先日発表された、創立90周年を記念して展開される限定製品たち(Love Affair Collection)の佇まいには、正直唸らされた。4Kディスプレイやスピーカー、リモコンなどで構成される製品群は、ローズゴールドのカラーを纏ったプレミアムなモデルである。創業時期とも重なる1920年代の「ジャズエイジ」をイメージのモチーフにしたきらびやかさに溢れている。また、アールデコ、あるいはバウハウスを連想させるロゴタイプにも強く惹かれる。


B&O PLAY「H6」

さて、そんなBang&Olufsen のディフュージョンブランド「B&O PLAY」には、オーバーヘッド型のヘッドホンが4タイプラインアップされている。その中でも「H6」はルックスも含め、ハイクラスといってよいだろう。実際に触れてみると、ダイナミック型密閉タイプとしての安心感がある。デザインは洗練されているが、オーディオプロダクトとしての「王道感」を漂わせているのだ。デザインは、このブランドとのコラボレーションを多数行っている、デンマーク出身のヤコブ・ワグナーが担当しているという。彼はインダストリアルデザイナーであり、メカエンジニアでもあるという稀な存在だ。デザインとサウンド、その両方に精通していることは、ブランドの目指す方向性と合致している。


本革をふんだんに使っており、非常に肌触りが良い

ヒンジ部分も直線と曲線を組み合わせたつくり。細部まで気が配られたデザインだ
ドライバーユニットはφ40mmで、ハウジングはアラウンドイヤータイプ。ケーブルは片出しの着脱タイプで、左右どちらにもジャックが設けられているから、使用シーンに応じて選択できる。イヤパッドに使用されたレザー(羊)はひじょうに滑らかで、内部のクッションも耳の凹凸にフィットしてくれる程よい柔らかさ。ヘッドバンドに使用されている革はこことは別のもので、ニュージーランド産の高級な牛革を丹念になめしたものだという。こうした温かみと、対照的にスライダーやハウジングなどメタリックで、極めてクールな印象にまとめている。細かく眺めてみると、ハウジングを支え、ヘッドバンドへとつながる部分のパーツ(ヒンジ)は、直線と曲線を組み合わせて仕上げられている。ミニマムだけど、豊かなセンスが盛り込まれているといってはおおげさだろうか。

左右どちらにもケーブルジャックが設けられている。使い方によってどちらに接続するか選べるのはもちろん、2台の「H6」をつないで同時に音楽を楽しむこともできる

さて、ウォーミングアップではないけれど、まずリファレンスとしている、ホセ・ジェイムズの『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース』から聴いてみる。このアルバムはビリー・ホリデイをトリビュートした、しっとりとした温かみのあるジャズボーカル作品。もちろん歌声が中心になる。その声のテクスチャーがしっかりと伝わってくる。ホセのボーカルワークが細かな部分まで表現されているようだ。とはいえ、耳に刺激的にならず、かつマイルドにもなり過ぎず良いバランスだ。バックを務めるジェイソン・モランのピアノの輪郭も甘くならない。ウッドベースもしっかりと弾んでおり、全体で密度の高い音空間を織り上げているように感じた。落ち着いた中にも、徐々に熱を帯びてゆくセッションの様子もイメージすることができた。

マンドリンやチェロなどで構成されるパンチブラザーズの『The Phosphorescent Blues』は、オルタナティブロックのような男性ボーカルも入る、ジャンルレスな音楽だ。ただし、サウンドは高品位で一度はどこかで試聴して頂きたい推薦盤である。ハイレゾも配信中で、今回はそれをハイレゾ対応ポータブルプレーヤーで再生してみる。まず感じたのは、ストリングスの伸びやかさだ。同時に低域にも深みがある。また、ボーカルはバンドサウンドから一歩前に飛び出し、透明度も高い。こう感じさせるのは本機の遮音性の高さも大いに関係している。周囲の騒音としっかり隔絶できているため、全ての音がもれなく聴こえてくるのだ。立体的でもある。

最後に聴くのは原田知世の新作『恋愛小説』。洋楽のラブソング10曲をカバーした作品。ただ、カバーだからといって侮ってはいけない。美味しいメロディーだけをすくいとって、ボサノヴァ風味で歌いました、というような凡百のカバー集では決してない。そこにはプロデューサーであり、アレンジャーの伊藤ゴローの手腕が十分に発揮されている。たとえば、ノラ・ジョーンズの「ドント・ノー・ホワイ」は、まるでサザンソウルのような仕上がりだ。さて、これもハイレゾで試聴した。原田のボーカルを中心に、ギターやベース、ドラムス、ストリングスなどが配置され、音場は広大ではないものの、まとまりのよいサウンドが描き出される。落ち着きのある音楽性と音質とがマッチしているようだ。ホーンセクションからも音のツヤが感じられた。


90周年記念シリーズ「Love Affair Collection」のH6も用意されている
ちなみに、冒頭で述べた90周年記念シリーズ「Love Affair Collection」にも本機をベースにしたモデルがラインアップされている(ブラックとローズゴールドのツートーン)。サウンドのポテンシャルは変わらないはずだから、そちらも是非手に取ってみたい。