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<山本敦のAV進化論 第91回>キーワードは「UI革命とモバイル連携」

ソニー独自UI「XMB」廃止。旧モデルユーザーの筆者が新モデルから考える“今どきのBDレコーダー”

公開日 2016/05/25 18:26 山本 敦
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想定されるシチュエーションとしては、例えばお母さんはリビングのテレビで、子供は自分の部屋でタブレットを使って、お父さんは出張先でスマホを使ってレコーダーを利用するといったことが可能になる。なお宅外へのリモート視聴は変わらず1ストリーミングのみ配信可能だ。

実際に使ってみると、BDZ-ET1100で利用していた頃から機能的には大きく変わっていないと感じた。以前の機種ではレコーダーで2番組以上の録画が行われると、リアルタイムトランスコードしながらのモバイル視聴ができない仕様だったため、おまかせ・まる録とバッティングしてレコーダー本体のタスクが優先されると、リモート視聴は突然シャットダウンしてしまった。最新モデルでは3番組を同時録画中もリアルタイムトランスコードしながらのモバイル視聴が可能になったので、外出先のリモート視聴はより安定感がアップしている。

香港のホテルではサクサクとリモート視聴が楽しめた。中国本土のシンセンでは下り速度が1Mbpsにも到達せず、苦戦を強いられるハメに

■リモート視聴機能、2つの不満

ただ、筆者もリモート視聴を活用してはいるが、この機能がレコーダーの圧倒的な進化を物語るものに成り得ていないと感じている。その理由は大きく二つある。

1つは次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が規定する「リモート視聴」の技術要件により、外出先でBDレコーダーに録画した番組をムーブする、つまりソニーのBDレコーダーで言うところの「おでかけ転送」ができないことに起因する不便さだ。

今回本機を借りている最中に、中国の香港とシンセンへ出張に出かける機会があったので、旅先のホテルで息抜きに録画番組を見て過ごそう試みたのだが、ホテルのインターネット環境がとても不安定で、夜中の遅い時間でも下りの通信速度が1Mbpsも出ないことが続き、結局番組を途切れ途切れに見ることしかできずストレスがたまった。

部屋で仕事をしている最中、あるいはシャワーを浴びたり就寝前の支度中にコンテンツを端末にダウンロードしておいて、寝る前に楽しむことができれば時間がより有効に使えたのにと、悔しい思いをした。旅先での滞在中に最新話が放送されたドラマなど、ネットワークの状態に影響されずにリモート視聴が活用できる手段が増える必要があるのではないだろうか。

もう1つ、LTE回線を使ったリモート視聴がのびのびと楽しめないのも難点だ。通勤時間にリモート視聴を使ってニュース番組や朝ドラをチェックしたい時もある。国内で大手キャリアが提供するLTE回線を使えば、もちろんスピードと安定度では問題なくリモート視聴は楽しめるのだが、データ通信量の上限に達してしまうと、メールやWebのチェックなど普段使いに支障をきたしてしまうので、リモート視聴のために思う存分スマホを使うのもはばかられる。

ヨドバシカメラとワイヤレスゲートが提供する最大3MbpsのLTE通信が“使い放題”になるSIMカード「ワイヤレスゲートSIM FONプレミアム Wi-Fi」などを、SIMフリーのモバイル端末と組み合わせて使う手もあるが、さすがに3Mbpsの通信速度では画質やデータ伝送の安定感ともに十分ではない。

例えば、今夏からLINEが提供をはじめる予定のMVNO、LINEモバイルではLINEの各サービスを利用する時だけは通信量が発生しないSIMサービスが用意されると言われている。もしソニーグループで、Video & TVSideViewによるリモート視聴時にのみデータ通信量が発生しない通信サービスを企画開発してくれたら面白いことになりそうなのだが。

■これからのBDレコーダーに求められるもの

昨年秋には、放送後のテレビ番組がインターネットで無料視聴できる動画配信サービス「TVer」が始まった(関連ニュース)。最新のテレビドラマなどが、放送後1週間はキャッチアップ視聴できるので、レコーダーで録り逃した番組、あるいはレコーダーで予約録画するほどではないけど、チェックしておきたい番組はTVerで見るというふうに筆者はこのサービスを活用している。

一方でVODもすっかり筆者の生活に定着してきた。Netflixが製作するオリジナルの海外ドラマは、いまテレビで放送されている国内のドラマよりも完成度の高いものが揃っている。

例えば「デアデビル」など“一気見”の機能に対応する連続シリーズものは非常に中毒性が高く、仕事が詰まっている時の息抜きのつもりで見始めたら、すっかりハマって仕事が手に着かなくなるということにもなりがちで困っている。Netflixはモバイル端末に動画をキャッシュして、外出先でオフライン再生する機能がないのが残念だ。

その点、dTVはスマホのストレージ容量に合わせて画質を選んでキャッシュができるので、よりヘビーに活用している。現在放送中のアニメ作品にはテレビでの放送終了後に少し遅れて配信しているものもあるので、ほぼリアルタイムでフレッシュな内容が追いかけられる。放送が終了した作品のアーカイブがいっきに見られるので、ヒット作「おそ松さん」もフォローできた。

BDレコーダーといえばテレビ録画やBD再生に活用するのがセオリーだったが、これからは様々なVODサービスを取り込んでターミナル的な機能を組み込むことも求められるようになるのではないだろうか。

その点ではパナソニックが作年秋に発売したDIGAの一部機種でNetflixに対応したのは画期的な出来事だったように思う。いま自分が新しいBDレコーダーを買うなら、NetflixなどVODのコンテンツも見られる方を選ぶだろう。

これからのBDレコーダー、特にスタンダードクラスのモデルに関してはVODサービスと、あるいはモバイル端末とのテレビ番組を越えたコンテンツ連携を柔軟に採り入れることがますます重要になってくるのではないだろうか。

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