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山之内 正が検証

【レビュー】USB-DACも新搭載、ラックスマンの“新世代スタンダード”SACDプレーヤー「D-05u」

公開日 2016/02/16 11:08 山之内 正
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もう1枚のCDはソル・ガベッタがソロを弾くエルガーのチェロ協奏曲。独奏チェロの音色は弦の金属っぽさよりも深々とした木質の柔らかい響きを強く印象付け、肉厚な響きのオーケストラと自然に溶け合う。もともと重心が低いバランスの録音なのだが、本機で聴くとオーケストラの低音楽器の音がこもらず、遠くまで音が到達する伸びやかさも感じられる。チェロの1オクターブ下を支えるコントラバスが澄んだ音で響き、見通しの良い空間を再現することにも注目したい。

SACD化されたコルトレーンの『ブルー・トレイン』は、音そのものに個性のあるプレイヤーが揃ったセクステットの演奏だけに、音色の描き分けがカギを握る。本機で再生すると、コルトレーンはもちろん、リー・モーガンやカーティス・フラーのプレイもまさに他の誰とも違う個性をありのままに再現して、迫真の実在感で音像が浮かび上がる。楽器の音としてのリアリティだけでなく、プレイヤーの個性豊かな音色を説得力のある音で引き出すということだ。当たり前のことと思うかもしれないが、音を演出し過ぎると、かえって個々のプレーヤーの個性が埋もれてしまうことがある。D-05uの音はけっして無色透明ではないが、余分な強調とは縁がなく、演奏の特徴やプレイヤーの個性をダイレクトに引き出す力がそなわっている。

D-05uの筐体内部

次にアノニマス4のSACDで女声だけのアンサンブルを聴く。4つのパートそれぞれが弧を描くように息づくフレージングが自然に浮かび上がり、4つの音像が寄り添いながら立体的なアンサンブルを作り出していく。ソプラノの澄み切った音色をが際立ち、和声の純度の高さに息を呑む。録音の優れたSACDを本機で再生すると、DSD録音のメリットの一つであるハーモニーの美しさが隅々まで実感できる。

USBではディスク再生の長所を引き継ぎつつ、ハイレゾらしい空間再現が味わえる

最後にUSB入力の音を聴く。MacのAudirvana Plusで再生した印象では、ディスク再生で感心させられた音色の美しさと密度の高さはそのまま聴き取ることができた。そして、ハイレゾ音源ならではの高い空間精度、音場の透明感の高さがそれに加わって、前後左右に見通しの良い音場が広がることが本機のUSB-DACのアドバンテージだ。

本機の背面部

R.コルサコフの管弦楽曲(WAV 176.4/24)ではステージの奥行きの深さをフルスケールで再現し、金管&打楽器と弦楽器の位置関係が手に取るようにわかる。再生機器によっては前後方向の距離感が圧縮され、各パートの関係や動きが曖昧になってしまうのだが、空間情報などの微小信号を正確に再現するプレーヤーを組み合わせると、一気に奥行きが深みを増すことがある。D-05uが引き出すサウンドステージは前後左右に立体的に展開し、舞台の様子がはっきり見えてくる。

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