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まさに“リファレンス”の実力

【連続企画第2回】ティアック「HA-P90SD」のアンプ駆動力を人気ヘッドホンと組み合わせテスト!

公開日 2015/03/06 16:44 岩井喬
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SHURE「SRH1840」との組み合わせではバランスの良さが光る

HA-P90SDとSRH1840を組み合わせたサウンドは音場の透明感も高く、音像のナチュラルな厚みもしなやかに表現。オーケストラの旋律は爽やかで余韻の伸びも潤いに溢れている。低域の弾力も自然であり、空間に拡散しすぎず、定位感も鮮明だ。解像度も高くS/Nに優れた表現で、有機的な質感描写は上品なタッチでまとめられている。空間の緻密な階調性をきめ細かくトレースし、楽器の前後感も的確に描く。

SHURE「SRH1840」

ジャズにおいてもピアノのクリアなアタックと自然な音伸びを堪能でき、ドラムやウッドベースのリアルな質感を付帯感なく浮き上がらせる。鮮度の高い立体感溢れる音場であり、胴鳴りの響きも制動を利かせ、弦のタッチをキレ良く押し出す。ロックにおいてはエレキギターにかけられた僅かなリヴァーブも鮮明に感じられ、個々のパートの隙間にある空間を誇張なく聴き取ることができる。ボーカルも癖なく素直で、リズム隊も引き締め良い。

一方DSD音源ではカッチリとした弦楽器のアタックやボーカルの鮮度良い発音のしぐさがスムーズに浮き上がり、低域の響きも弾力良く伸びる。定位感も自然で、余韻の階調の細やかさが際立つ。5.6MHz音源では音の滑らかさ、音像の歯切れ良さがよりリアルに描写され、その場にいるような自然な臨場感をダイレクトに味わえた。奥行き方向にも音が展開し、非常に有機的なサウンドである。試聴前はもっとドライな音になるかと想像していたが、思いのほかバランス良く聴きやすい、ニュートラルで瑞々しい音質だ。

HA-P90SDがフォステクス「TH900」の鮮度と質感を引き出す

TH900は密閉型でありながらも、オープン型のような開放感ある空間再現性を持ち、きめ細やかで高解像度、さらに密閉型ならではの押し出し良い密度感も併せ持つ、理想的な音質のハイエンド・クローズドバックモデルである。クラシックではオーケストラの旋律を丹念にトレース。個々の楽器の厚みもしっかりと感じ取れ、ハーモニーもリッチに融合する。低域は押し出しよい圧力を持ちながら、収束のスピードは速く音場が濁らない。これもHA-P90SDのドライブ力の高さのおかげであろう。高域にかけての倍音はほんのりキラキラとして耳当たり良い響きだ。

フォステクス「TH900」

ジャズ音源では各楽器の密度感の高さが際立ち、ボディの太さやアタックのリアルさをダイレクトに味わえる。ピアノの自然なレンジ感、誇張のないハーモニクスの響きが心地よい。ウッドベースの胴鳴りは豪快に響くが、制動力も高く、ドラムのプレイと合わせ、グルーブ感に溢れたサウンドになる。ロックにおいてはリズム隊の密度良くパワフルな演奏が力強く全体をリード。ディストーションギターの粘り良いリフは重みを伴い、重心の低い安定感あるサウンドだ。

DSD音源では、これもHA-P90SDの駆動力の賜物だろう、カラッとした倍音のハリを感じさせるアコギや、むっちりとした艶を持つウッドベースの弦がくっきりと際立つ。余韻の広がりが奥行き方向にも自然に広がり、リアルな空間が展開。ボーカルは肉付き良く潤いある口元の動きが鮮やかに浮かんでくる。左右の定位感もシームレスで、臨場感の高さ、充実感は極めて高い。5.6MHz音源におけるピアノのペダルの音のリアルな響き、余韻の豊かさに驚いた。ボーカルの有機的で生々しい肉感は純度が極めて高く、演奏の熱い躍動感がそのまま湧いてくるような鮮度の良さと、アナログライクで温かみのある、滑らかな質感を両立した品位の高いサウンドだ。

次ページ続いてゼンハイザー「HD700」とベイヤーダイナミック「T1」

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