HOME > レビュー > エソテリックのマスタークロックジェネレーター「G-01」&「G-02」を徹底検証

マニア垂涎の2モデルの効果と実力を集中レポート

エソテリックのマスタークロックジェネレーター「G-01」&「G-02」を徹底検証

公開日 2014/05/21 17:25 鈴木 裕
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■K-01+G-01の組み合わせ試聴
176.4kHzから要素が調和してきて10MHzでは臨場感がもの凄い状態に

今回、マスタークロックジェネレーターのテストをしているが、同時にエソテリックブランドのK-03、K-01、P-02+D-02というデジタルプレーヤーを同じ条件で聴いている。

通常はそれぞれにテスト。その記憶を総合して音のポジショニングを把握するわけだが、思っていた以上にK-01の音の濃さ、押し出しの強さ、積極的な音楽表現力を再認識することになった。語弊を恐れず言えば、いい意味で暴れん坊なのだ。グイグイ来る音を持ったプレーヤーと言える。以前からも思っていたが、個人的に相当好きな音だ。そして、このことがG-01からマスタークロックを入力しての音の印象にも強く関係してくる。

G-01(手前)とK-01(奥)

まずK-01単体で聴いてからG-01の44.1kHzを入力して聴いた時に、率直に言ってあまり音が良くならなかった。たしかにすっきりとして音の表面の質感などは良くなるのだが、どこか演奏の情念とか勢いが押さえられる感じになってしまう。88.2Hz入力でもハイファイ性能としては良くなるのだが、K-01の濃い音と、精度を上げたいG-01とが戦っているような印象がぬぐいきれない。船頭が二人いる感じ。これが176.4kHzまでクロック周波数を上げていくと、いろいろな要素が調和してくるのだからオーディオは面白い。メモにも88.2から176.4に上げたところに「ここの差は大きい。リアリティがぐっと高まる。太い音。低音ゴリゴリ出てくる。生々しい演奏。響きもきれいに広がる」と書いてある。

また、10MHz(正弦波)のクロック入力も良かった。オーケストラでは木管や金管のそれぞれのパートのいる場所の実在感が高く、音色的にもとても魅力的。クラプトンのライヴも極めて高いリアリティだ。もう何千回も聴いているソフトだがスピーカーの間に本当にメンバーがいて演奏しているような臨場感が凄かった。ここまで素晴らしいのは、そうそう聴けるものではない。

■P-02/D-02+G-01での組み合わせ試聴
晴れ渡った音場空間に圧倒されスーパーリアリズムの世界が展開

そもそもである。P-02とD-02が搭載しているクロック回路はモジュール化されており、他の回路ブロックから電源部、グランドまで完全に独立している。また、クロックの心臓部は大型水晶片を内蔵するVCXO(電圧制御型水晶発振器)で、しかもそれをトランスポート側とDAC側の双方がそれぞれ2個搭載しているという布陣だ。その上、「PLLレス・ダイレクトマスタークロックLINK」というものがあり、D-02側で作った22.5792MHzのクロックをP-02に供給する同期再生、いわゆるワードシンクのやり方ができるシステムだ。ここにG-01を接続しようというのだから、とんでもなく高いレベルでのテストになっていることを、まず断っておきたい。

「P-02」

「D-02」

最初にP-02/D-02をPLLレス・ダイレクトマスタークロックLINKで聴いた後、G-01を接続した。入力したクロック周波数は22.5792MHzである。お金のことを言ってなんだが、税別で280万円に135万円を足してどうなったか、というテストでもある。聴き始めた瞬間に、音場空間がスカーッと晴れ渡ったのに圧倒された。楽器の実在感がガツーンと来た。いわゆるスーパーリアリズムの世界だ。ダリの大きな絵のように、巨大なキャンバスの隅々までフォーカスが合いつつ、音楽の奔流に運ばれてしまうような感覚。

しかも面白かったのは、G-01を出力するときに、Aの2個の端子から出力するのと、A、Bのふたつの系統の端子一つずつを使ってクロック出力するのでは微細ながらやはり音が違った点だ。G-01内部の電源レギュレーターの使い方の問題だが、A、Bに分けた時は、鮮度感高く、聴いたことのない音が聴こえてくる感じが高かったのに対し、A系統からのふたつの出力では音像のまとまりや、音楽的なナチュラルな生命感が高かった。

また、もうひとつの目玉である10MHz(正弦波)を入力してみると、空気感に柔らかさがあり、ややステージから離れた感じで、特有の音楽の運びの流れの良さを持っていた。

マスタークロックジェネレーターというと、クロックの精度が上がることによって音のアキュラシーや空間表現力の高さが向上するといったパブリック・イメージがあるが、その働きとともにG-01、G-02ともに音楽のリアリティやヴァイタリティを増大させてくれた。

■G-01とG-02はどんなファンにお薦めできるか?
ハイファイ性能と音楽表現力を両立しており、ぜひ自身の耳で聴いてみることをお薦めしたい

G-01とG-02はそのクロックの心臓部がルビジウムであるか水晶であるかという違いを持ち、精度自体も差があるが、共通して単なる計測器的なものではまったくなかった。オーディオのコンポーネントとして、ハイファイ性能とともに音楽表現力を持っている。エソテリックの開発陣の「音色だけで勝負する機械ですから」という言葉も印象的だった。

また「マスターサウンドワークス」という考え方。つまり、音楽を製作するレコーディングスタジオなどの現場の熱気をリスニングルームに伝えようという方向の再生音に対して、きわめて有効度が高いのも納得がいった。ハイファイ性能が向上するのはもちろん、より音楽に近くなったり、演奏のニュアンスとかミュージシャンたちの感じているグルーヴ感が出てくる。こうした要素が再生音に欲しい人には悩ましい製品だ。まずは、実際に体験してみることをお薦めしたい。聴くと心穏やかでなくなるかもしれない。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE