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米AUDEZEの最新平面駆動ヘッドホン「LCD-X」「LCD-XC」に迫る

公開日 2014/04/09 12:01 記事構成:ファイル・ウェブ編集部/レビュー:岩井喬
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・密閉型「LCD-XC」

LCD-Xの密閉型というべき存在であるが、サウンドの方向性はかなり異なる。LCD-Xが比較的穏やかな広がり重視の傾向に対し、LCD-XCは密閉型らしい締まり良いアタック感を利かせたハードタッチな傾向を持つ。


DA-06とP-700uによる据え置き環境の試聴ではキレ良く鮮明で解像度の高いサウンドを聴かせてくれた。管弦楽器の旋律は爽やかに浮き上がり、タッチも繊細。低域の制動も高く、音場はクリアで見通しも深い。ハリ良い倍音成分の華やかさも感じられるが、余韻の澄んだ表現やディティールの明晰な描写によってハードテイストながらリアルな空気感を巧みに描き出す。ボーカルはシャープな音像で口元のエッジ感が強調される。192kHz/24bit音源ではさらに音像の硬質感が増し、低域のタイトでソリッドなアタックによって音場のクリアさも際立ってくる。オーケストラの旋律は瑞々しくクールに描かれ、アタック&リリースも付帯感なくハイスピードに反応してくれた。

バランス駆動に切り替えて聴いてみるとレンジも広く伸びやかに感じられアタックのシャープさや解像感がさらに向上。音場も立体的でリアルさも増す。艶良くリッチなストリングスのハーモニーが煌びやかに拡散。ボーカルもハリ良くスマートに描かれる。ハイレゾ音源ではエッジがより強く鮮烈で付帯感のないソリッドな描写となり、ベースを引き締めアタックのレスポンスも極めて速い。DSD音源においてはアンビエント感が豊かに描かれ、適度な弾力を持つ低域の有機的な描写も相まってナチュラルさがより高まっている。

ポータブル環境のAK240でもシャープで切れ味のよいサウンドを味わえるが、パワー感が据え置きに比べ控えめとなったこともあり、押し出しよりも音場感を優先するような傾向となる。非常にすっきりとした空間にキレ鮮やかな音像が鮮明に浮かぶ。リリースの収束も速く音像の密度とのバランスも絶妙だ。付帯感のないボーカルの質感はしなやかで、DSDネイティブ再生も音場をシームレスかつ立体的に表現。音離れも良く追随性の高いモニター的なリアリティを味わうことができた。

一方、iPod touchでも基本的な音質傾向は変わらず、クリアで分解能の高いサウンドを聴かせてくれる。ローエンドはキレ良く弾みの良い描写となり、ピアノや弦楽器、そしてボーカルを艶良くくっきりと表現。アタックの力強さは控えめだが、滑らかで厚みの良い音像として描く方向性となり、耳当たりの良いサウンドともいえる。さらにHiFi-M8にiPod touchをデジタル接続し、LCD-XCをバランス駆動させると解像度の高さや切れ味のよいアタック感に加え、太く滑らかな音像表現も同時に味わえる絶妙なバランスを獲得。分離良くスムーズな音運びで、高S/Nな音場の余韻は非常に階調細やかだ。PCとのUSB入力による192kHz/24bit音源再生では解像度が如実に向上し、全体的に音像をタイトに表現。倍音の艶もほどよくディティールも流麗である。見通しはクリアでリアリティの高さが際立つ。

最後にHiFi-M8 LXとHDP-R10を光デジタルで接続した音も確認したが、質感の滑らかさに加え、どしっと重量感のある低域と好対照な爽快な中高域が適度に融合した耳当たり良いサウンドとなり、ゴージャス感溢れる音色を楽しむことができた。

平面駆動型システムの音色をぜひLCD-X/LCD-XCで体感してほしい

従来の平面駆動型ヘッドホンでは、ある程度駆動力を持つヘッドホンアンプと組み合わせないと本来のサウンドを味わえないというものが多かったが、LCD-X/LCD-XCともに低インピーダンス設計としDAP直接接続環境でも再生できるよう改良も加えられたことで、今までの平面駆動型ヘッドホンとはひと味もふた味も違う、癖がなく鳴らしやすい素直なサウンドが味わえるようになった。

特に密閉型のLCD-XCはその効果が顕著であり、DAPから据え置き環境まで基本的な音質傾向が変わることなく一貫した音色をキープ。オープン型のLCD-XはDAP再生でも許容範囲のバランスではあるが、最も理想的なサウンドであったのは据え置き環境でのバランス駆動であった。しかし、これまで若干敷居の高い印象のあった平面駆動型モデルが、開放か密閉の選択肢を含めシームレスにどの環境でも楽しめるようになったことの意義はとても大きい。まだ平面駆動型システムの音色を味わったことのない方は、ぜひともLCD-X/LCD-XCで一般的なダイナミック型とは違う、圧倒的に低歪かつ高密度、高スピードなサウンドを体感いただきたいと思う。

(レビュー執筆/岩井喬)

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