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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第68回】「僕得」な “ハイエンド開放型ヘッドホン” オススメモデル、AKG「K712 PRO」

公開日 2013/12/06 12:50 高橋敦
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■いよいよ試聴! K712 PROをひたすら聴き倒す

では音の印象を述べていこう。最初に簡単にまとめると、これぞAKGの開放型という音場の自然な抜けや広がり、高音側の繊細さはそのままに、そこに中低音のほどよい量感と躍動感もプラスされ、よりダイナミックで楽しい音楽表現を獲得したモデルだと言いたい。

上原ひろみさんのピアノトリオのプログレッシブでアグレッシブな曲と演奏を楽しめる「MOVE」。ジャズのコーナーに置かれているであろう作品だが、少なくともこの曲については、ほとんど完全にロックのフィーリングで演奏されている。

まず全体のバランスの良い厚みに感心。いまどきの一部の低音重視ヘッドホンのそれとは違って、低音をドカンと盛っていることはない。他の帯域との自然なバランスを確保した上で、中低音に厚みと充実感を持たせている。

低音楽器の明確さも見事だ。この曲のエレクトリックベースは通常のベースよりも低い音域までをカバーする楽器(6弦コントラバスギター)が使われているが、その低い帯域でのフレーズも音色の粒立ちや音程感がはっきりとしており、フレーズが生きている。アタックを目立たせる帯域を強調するといったことではなく、アタックをあくまでも素直に立ち上がらせることでの明確さと感じる。アタックだけではなく音の収まりも素直で、スタッカートするフレーズのキレもよい。

アタックということで言えば、この曲のサイモン・フィリップス氏のドラムスの演奏と録音の抜けの良さは極めて秀逸。このヘッドホンはそれもしっかり再現してくれる。しかも中低音をタイトに締め上げることで抜けをよく感じさせているのではない。その豊かな低音で太鼓らしい太さや空気感を生かした上で、抜けも良い。スネアドラムのバシッと荒い炸裂感のあるアタックも含めて、理想的な再現性だ。一言で言えば、従来のAKGヘッドホンと比べても、いや他の何と比べずとも、実にダイナミックな表現だ。

シンバルも完璧だ。ライドシンバルは薄刃にしすぎず厚みを持たせながらも抜けが良い。ハイハットシンバルも同じく、存在感のある音色だ。シャープネスを強調する音作りではない。しかし実際には非常にハイレベルな描写力、解像度を持っている。クラッシュシンバルの炸裂感も文句なし。バシャーンと濁点付きの音色を迫力満点に再現しつつうるさい感じにはならないのが、AKGらしくも不思議なところだ。…というわけで総じて、ロックへの適性は素晴らしく高いと言える。

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