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貝山知弘・大橋伸太郎が視聴

東芝の“第2世代”4Kテレビ、<レグザ>Z8Xの画質をチェック

公開日 2013/07/01 14:22 貝山知弘/大橋伸太郎
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画面に吸い込まれるような映像体験

テレビの4K時代は東芝のレグザによって開幕した。今期各社が競って4Kテレビを投入する中、東芝の動向が注目されていたが、Z8Xシリーズ3機種(58/65/84型)が一斉に発表された。

東芝は、レグザのハイエンド機は今後すべて4Kに特化していくと宣言しており、自信のほどが伺える。Z8Xはレグザの4Kモデルとして第3弾の製品だが、2011年の「55X3」と2012年の「55XS5」が内容面で比較的僅差だったのに対し、今回のZX8は大きな飛躍を遂げている。

他社の4Kテレビが第1世代であるのに対し、Z8Xは早くも東芝として第3弾のモデルとなる。では、Z8Xはどこが違うのか。その映像を一言で表現するのは難しい。確かなことは、2H(Hは画面高)程度の近さで視聴をはじめても、画面を凝視しているうちに次第に画面ににじり寄っていく、言い換えれば画面に吸い込まれていく自分がいることだ。本物の芸術を目前にしているように、近づくほどに隠されていた細部と色彩が次々に現れる。映画館でたとえると、一流館の大スクリーンに対峙している錯覚。これはもうテレビではない、と一種の当惑さえ感じさせるのがZ8Xなのだ。

超解像技術の4K対応と「高解像度シネマ」モードの新設

Z8Xの飛躍をもたらしたのは、技術面では映像の頭脳、つまり高画質エンジンの進化である。<レグザ>の中核技術がエンジンにあることはご承知と思う。XS5ではデュアルコアの「レグザエンジンCEVO Duo」だったのが、Z8Xでは新たに「レグザエンジンCEVO 4K」が追加され、オクタコア構成に発展した。

新エンジンに与えられた仕事は3つある。1つめが地デジの高画質化。2つめがBDなどフルHDコンテンツの高精細化。そして3つめがネイティブ4Kコンテンツを認識し、美しく表現すること。これらを実現するポイントが東芝独自の超解像技術だ。

東芝が4Kと同様に先鞭を付けた超解像技術は、今回「4K超解像」に発展した。「4K微細テクスチャー復元」「4K輝き復元」「絵柄解析 再構成型超解像」という、高精細な4K映像を得るための3つの技術が新たに導入されている。

それだけではなく、XS5の開発を通して浮かび上がった課題の多くがZ8Xで解決された。中でも4Kダイナミック階調補正は、入力映像を解析し、オリジナルが4Kと認識されると、リアルタイム4K映像解析で輝度/色補正を行うもので、4K映像の高画質化に大きく貢献している。

また画質モードに「高解像度シネマ」を新設した。4Kカメラで撮影した映像や、4K/8Kプロセスを使用した映画ソフトなどに効果的なモードで、入力画像を12bit×3の非圧縮4:4:4クロマ処理でキャプチャーし、微細成分の小さな振幅も映像に反映。ノイズリダクション処理を行うとそれらの情報は消えがちなので、三次元YNRはあえて使わない。このモードを選ぶと、4Kカメラで撮った新作映画の、例えば俳優のクローズアップの肌の微妙な質感が従来になく活かされるのが一目瞭然だ。

「高解像度シネマ」モードを新設。4K撮影された映画などをより自然に視聴できる

「高画質アニメ」モードも用意された


<4Kレグザ>で「映画」「アニメ」をチェック


じっくりと視聴を行う大橋伸太郎氏
これらの高画質化技術の成果がよく分かる作品に、一昨年の米映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』がある。9.11で父を失った少年の自己回復の物語だが、本作での4Kカメラは、精密感のある映像で映画の<物語>と同時代の歴史的事件を結びつける役割を担っている。実景映像が多い本作を「高解像度シネマ」で観ると、カメラのファインダーと映像を見る目が次第に重なり出す。少年にとって“何かが変わってしまった”が、とどまり続けねばならない現実世界が浮かび上がり、そのディテールをZ8Xが非情なまでに描き出す。遠くまで見通せる映像の奥行き感は圧巻の一言だ。

Z8Xは色彩の鮮鋭感もまた素晴らしい。最近になって初めて映像化された日本映画『栄光への5000キロ』(1969年)は、オール4:4:4処理で色域が非常に広く、レースシーンを埋め尽くす原色、ことにR、マゼンタ系の発色がいささかも鈍らない。本作は筆者が子供の頃、地元の映画館で胸を高鳴らせて見たが、その時はフィルムのもっと甘い映像を見ていたはずだ。だが製作者で主演の石原裕次郎が望んだ映像は、Z8Xが映し出す、この映像ではなかったか。本作は「大スクリーンで見て欲しい」という石原裕次郎の思いから、ビデオ化が封印されていた映画だ。もし故人がZ8Xの映像を見たら「俺が見せたかったのはこれだったんだ」と呟いたかもしれない。

レグザのアニメへのこだわりは定評があるが、「高画質アニメ」モードの威力を『おおかみこどもの雨と雪』で見せつけられた。細田守作品は、シャドウを付けないフラットなキャラクターが特徴だが、描線に妨害成分がまとわりつかないため、キャラクターの存在感が引き立つ。中盤の白樺林のシーンの背景は対照的にCGで立体的に描かれるが、ここでは補間フレームを生成して挿入する「アクティブスキャン240」の動作が的確。主観視点で白樺林を駆け抜ける母子と見るものが一つになったような感覚が得られる。このシーンにジャダーは本来不要であり、細田守がイメージした映像はこれだったのではないか。

4K映像を見せることが本義ではない。4Kという手段によって映像と見る者を一体化させるのがZ8Xシリーズだ。筆者がZ8Xを新世代の4Kテレビと感じるのは、それゆえである。




【SPEC】
<84Z8X>
●サイズ:84V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO 4K ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル (4Kアドバンスド・クリアパネル)●解像度:3,840×2,160(QFHD) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(ビデオ入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1、SDメモリーカードスロット ●消費電力:630W(リモコン待機時:0.3W)●外形寸法:1916W×1195H×450Dmm(卓上スタンド含) ●質量:78.0kg(卓上スタンド含)

<65Z8X>
●サイズ:65V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO 4K ●パネル:VA方式 倍速LEDパネル(4Kパネル) ●解像度:3,840×2,160(QFHD) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(ビデオ入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1、SDメモリーカードスロット ●消費電力:424W(リモコン待機時:0.3W)●外形寸法:1463W×940H×374Dmm(卓上スタンド含) ●質量:49.5kg(卓上スタンド含)

<58Z8X>
●サイズ:58V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO 4K ●パネル:VA方式 倍速LEDパネル(4Kパネル) ●解像度:3,840×2,160(QFHD) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(ビデオ入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1、SDメモリーカードスロット ●消費電力:264W(リモコン待機時:0.3W)●外形寸法:1306W×857H×374Dmm(卓上スタンド含) ●質量:36.5kg(卓上スタンド含)



【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674

※本レポートの中で紹介している<レグザ>「Z8X」シリーズのGUI画面は開発中のものであり、実際の画面とは異なる場合があります。





貝山知弘 プロフィール
早稲田大学卒業後、東宝に入社。13本の映画をプロデュース。独立後、フジテレビ/学研制作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサーを務める。映画製作の経験を活かし、独自の視点で評論活動を行っている。

大橋伸太郎 プロフィール
早稲田大学卒業。AVレビュー誌編集長、ホームシアターファイル編集長を歴任。2006年春より、オーディオ・AV評論家としての活動をスタート。

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