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話題の製品の使い勝手や音質とは?

【最速レビュー】iBassoの超弩級ポータブルオーディオプレーヤー「HDP-R10」を聴く

2012/08/21 野村ケンジ
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■歪みやベール感のないダイレクトなサウンド − 音楽表現も豊か

肝心のサウンドはどうか。正直いって、最初の一音からイリュージョンだった。カスタムイヤーモニターのFitEar MH335DWを、「HDP-R10」の大小2つあるヘッドホン出力のステレオミニ端子に接続、GainをLoにして再生したところ、まるでイヤホンの中で(というよりもイヤホンの口でといった方が的確かもしれない)楽器を演奏しているかのような、勢いのある、それでいて歪みやベール感のいっさいないダイレクトなサウンドが飛び出してきたのだ。

底面。標準フォーンジャック、3.5mmステレオミニジャック、ラインアウト端子を装備。ほかにゲイン切替スイッチも備える

加えて、解像度感がとてつもなく高いため、演奏や歌声がこれまでに経験のないレベルで、細やかなニュアンス表現を披露してくれる。まるで、聴き慣れたはずの曲が全く新しい録音であるかのようにすら感じる。特にピアノは、倍音成分までがしっかりと届いてくるため、響きの良さも空間的な広がりも全くの別物。こんなにもストレートでリアリティの高いサウンドは、少なくともポータブルプレーヤーでは初めての経験だ。

とはいえ、ダイレクト&リアル一辺倒でなく、同時に柔らかくて聴き心地の良い音色を持ち合わせている点も興味深い。女性ヴォーカルを聴くと、心にスーッとしみこむような、優しく柔らかな歌声で、感情豊かに歌い上げてくれる。音質だけでなく、音楽表現も見事といっていいだろう。

と、ここで気がついた。「HDP-R10」がとてつもない優秀機であることは確かだが、優秀だからいい音になるのではなく、もともと楽曲自身がここまでの情報を有していて、それを「HDP-R10」がうまく引き出してくれているからいい音に聴こえるのだ。

その証拠といっては何だが、96kHz/24bitのハイレゾ音源を再生すると、CDリッピングの音源とは同じ曲でも空間表現や音色のきめ細やかさがかなり異なっているし、逆にMP3との比較では、MP3に明らかな情報不足を感じるようになる。「HDP-R10」を使い始めたら、ハイレゾ音源を大いに求めるようになると同時に、MP3でリッピングした楽曲を、再び非圧縮で取り込み直す羽目になるかもしれない。

■ヘッドホンアンプ無しでここまで鳴ったのは初めて


イコライザー機能も装備。何種類かプリセット値も用意されている
続いて、ヘッドホン出力の駆動力を知るべく、シュアSRH1840とAKG Q701で試聴を行ってみる。すると驚くことに、どちらも迫力、キレともに申し分のない、ダイナミックなサウンドを聴かせてくれた。ただしQ701に関しては、もう少し低域の駆動力が欲しい気もするが、ボリューム、解像度感などは申し分のないレベルに達しているので、気にならない方の方が多いだろう。少なくとも、ヘッドホンアンプなしでSRH1840がここまで魅力的なサウンドを奏でてくれるのは、初めての経験だ。

ちなみに、iBasso D12Hjなど、手元にあるポータブルヘッドホンアンプを使い、「HDP-R10」直のサウンドと聴き比べてみたが、それぞれ魅力的な個性は見られるものの、クオリティ、パワーともに絶対の必要性は感じなかった。気がついたらアンプや単体DACを活用し、2段3段重ねの大型システムになってしまった、というようなケースを想定すると、少しはポータブル性についても優位な状況にあるかもしれない。

このように「HDP-R10」は、これまでのポータブルプレーヤーではなしえなかった、まるでホームオーディオを持ち歩くかのような、ハイレベルなサウンドを実現する貴重な製品であることは確かだ。とにもかくにも、一度このサウンドを聴いてみてほしい。筆者同様、一日も早く自分のものにしたい欲求に駆られるはずだ。

(野村ケンジ)

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