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独自技術が満載の注目モデル

B&W初のイヤホン「C5」の実力とは? 装着感から音質まで徹底レビュー

公開日 2011/09/02 15:53 高橋敦
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■ほぐれた音色、厚く包み込むような低音が特徴的

Helge Lien Trio「Hello Troll」の、ピアノの強烈なタッチは、角を少し落とした印象。ガチンと来る攻撃性は薄れるが、艶やかさを増し、魅力的な音色だ。ウッドベースのアタックの瞬間の暴れ、弦が指板にぶつかる様子も、ドラムスのバシッというアタックも、ややソフトタッチ。シンバルは柔らかく、きめ細かな粒子の濃厚な集まりのように描き出され、その音色のほぐれ具合は実に心地よい。

またこれも特徴的と言えるのが、低音が非常に厚いこと。音色の柔軟さや後述の音場表現とあいまって、イヤホンらしからぬ、優しく包み込むような低音を実現している。もっともその反面、ウッドベースは音像が少し緩んでおり、音源のタイトさは若干薄れてしまうという傾向も感じられる。

というわけで、この音源については、正確な音の再現と言うよりも、統一感のある音楽的な柔軟さが発揮されている。平易に言うと「これはこれでアリ」で、楽しめる音作りだなと感じる。

■音ヌケの良さは特筆モノ。音場表現はカナル型でトップクラス

それを踏まえて次に聴いてみたのは、Hilary Hahn「Bach: Violin Concertos」だ。

イヤーピースは、あらかじめ装着されているもののほか、3サイズが同梱されている

予想通り、この音源とは相性が良い。弦のしなやかさや伸びやかさが存分に引き出され、低音側に重心を置いた音場全体の安定感も見事だ。

そしてこちらでは、低音を担当するチェロやコントラバスのキレも良好だ。柔らかく肉厚な音色でありながら、スタッカートもしっかり決めてくれる。ウッドベースのピッキングとはアタックの質が異なるために、このような差異が生まれるのかもしれない。

高域側では、ヴァイオリンの軋むような音色を、その軋みを生かしつつも、耳に刺さる成分は控えて、穏やかで優しい音色にしてくれる。それでいて、キレ込む場面ではすっと自然な鋭さも見せる。

そして、素晴らしいのはその音場表現だ。これはマイクロ多孔質フィルターの威力なのだろうが、音が綺麗に抜けて行き、音場の密閉感や密集感があまり気にならない。この点においてはカナル型イヤホンでトップクラスと言える。

続いて歌モノから、The Carpenters「Singles 1969-1981」を聴いた。

これはまた、実に好ましい感触だ。柔らかな描写が曲、歌の雰囲気を後押ししてくれる。低音側、エレクトリックベースやドラムスをうまく押し出してくれるのも好印象だ。この押し出しが強すぎるとバランスが悪くなるが、その手前の、ギリギリのバランスでうまく成立させている。

主役の歌の描写は文句無し。耳障りな成分は抑えつつ、ボーカルの細かな機微、息遣いやリップノイズといった大事な成分は十分に引き出し、歌声が生々しい。音楽の美味しいところだけを引き出してくれる能力を、このイヤホンは備えている。



他にもロックからメタルからあれこれと聴いてみたが、何を聴いても、豊かに広がる低音と柔軟な高域、開放的な音場という個性は発揮される。特に低音と高音の感触はヘッドホンのP5とも共通しているので、この方向性が現段階の「B&Wのヘッドホン&イヤホンの音」ということなのだろう。

明確な個性を備えたイヤホンなので、例えばモニター的な中立性、透明度を求める方にはおすすめできない。しかしだからこそ、ハマる人には見事にハマるサウンドを実現している製品だ。

(高橋敦)

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