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「防音/調音クリニック」読者訪問第1回

DAIKEN製品がリビングシアターの防音/調音に挑む! − ビフォーアフターを徹底レポート!

2011/04/28
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音に対する研究を長年積み重ねてきた“音のDAIKEN”と、評論家の大橋伸太郎氏がタッグを組んで読者諸氏の防音/調音に対する悩みを解決する「防音/調音クリニック」。記念すべき最初の登場者は、マンションのリビングにてホームシアターとオーディオを楽しんでいる守屋公晴さん。どんな悩みが飛び出し、DAIKENはどのような解決策を提示するのか!? ビフォーアフターの様子の一部始終を徹底レポートする。

■約15畳のリビングシアターではフラッターエコーやブーミングが…


守屋さんがシアタールーム兼用で使っているリビングは、およそ15畳ほどの洋室フローリング。下記の図のように機器を配置し、iTunesライブラリ内のクラシック音楽をワイヤレスで再生するなどといった使い方をしている。

守屋さん宅の機器配置。7.1ch環境でホームシアターを楽しんでいる


リビングの様子。キューブ型の小型センタースピーカーとサブウーファーもテレビ周りに配置されている

リビング後方。パソコン内の音楽ファイルなどをワイヤレスで再生してのオーディオライフも楽しんでいるという


フロントスピーカーはB&W「CM8」。AVシステムにはマランツ「SR7002」や「PM15S2」などを使用

サラウンドスピーカーはBOSEのキューブ型タイプをDIYで天吊り配置。配線隠しなどもすべて自分で行ったとのこと

iPadをリモコンとして利用してパソコン内のコンテンツを再生するなど、新しい技術もどんどん活用しながらホームシアター/オーディオライフを送る守屋さんだが、現在は特に防音や調音への対策は行っていない。調音に対する漠然とした不満を感じており、「例えばサラウンドで映画を観ている際の臨場感が今ひとつに感じられるのですが、何をどう改善すればいいのか検討がつかないのです。また、賃貸マンションであるため大がかりな工事もできません」と悩みを打ち明けてくれた。

「妻のほうが自分より耳が良いので、妻が気に入るような音にしたいのです」とも語る守屋さん

iPadをリモコンとして利用するなど新しい技術も積極的に活用している

この悩みに答えるべく守屋さん宅を訪れたのは、大建工業(株)建築音響部サウンドセンター の井上氏。同社が東京ショールーム秋葉原にて毎月開催している「防音相談会」も担当している音のスペシャリストだ。

残響を測定する井上氏

まず井上氏は「計算をすると、この部屋の容積は約57m3ですので、ここから求められる最適残響時間は、ライブな状態でしたら0.51秒、デッドな状態にするのでしたら0.29秒となります」とコメント。部屋の容積と用途による最適残響時間の関係を説明する。

部屋の容量と用途による最適残響時間の関係

残響測定の結果、「全体的にライブであり、特に低音域が長すぎる傾向にありますね。また、高音域もライブです」とコメント。「もちろんそれぞれに好みがあるので一概には言えませんが、サラウンドシステムを楽しむにはもう少し全体的にデッド気味に振ったほうがよいのではないでしょうか」とアドバイスする。

■測定結果データ
測定周波数(Hz)631252505001000200040008000
カーテンが在る(閉めた)場合1.671.050.470.400.480.530.530.48
カーテンがない(開けた)場合1.370.940.440.440.500.550.550.50
 (低音域)(中音域)(高音域)


守屋さん宅の音響測定結果。なお、カーテンを開けた状態と閉めた状態の両方で測定したがそれほどの違いは見られなかった

また、「測定データを細かく見てみると、フラッターエコーとブーミングが発生しています。ブーミングとは部屋が矩形で寸法比が整数比に近い場合に発生しますので、家具を置くなどして部屋形状のバランスを崩すことが必要です」とも語る。

■1/3オクターブバンド周波数分析での残響時間測定結果の一部
63801001251602002503154005006308001k1.25k1.6k2k
0.730.891.120.490.450.610.410.410.430.380.410.460.550.480.470.49
100Hzや200Hzなど、オクターブバンド周期での残響時間が長くなっていることが確認された


これらの音の問題については、大橋氏も「ベースの音階が、ある音は膨満し大きくある音は逆に薄く小さく、ムラに聞こえます。本来同じ音量のはずが引っこむ音と出っ張る音があるのは、部屋に定在波が存在しピークディップが発生しているためです」と指摘。「波長の長さによって逆相の反射波とそれが反転し正相になった音が室内に止まり、ある周波数の音を減算して消したり、重乗して膨らませるわけです」と説明する。

大橋氏は参考として部屋の音場以外の要素にも言及。「守屋さんの場合はフロントスピーカーとセンタースピーカーとがサイズ的にもバランス差が大きいことも不満を感じる要因になっているかと思います。サラウンド再生での『声が不自然に広がる』などの問題はスピーカーのアンバランスをアンプが無理に補正した結果によるものと推察されます」ともアドバイスを送った

そして「実際に測定結果を見ても、100Hzあたりに大きいピークが発生しています。ライブであることが一概に悪いといえませんが、守屋さんの場合は減退して消える音が一方であるわけで、ライブというより“音の暴れ”が存在しているわけです。これを改善するためには、第一にスピーカーシステムの対向面の壁を吸音することが必要でしょう」と、改善策を語る。

また、「CDを聴くと、楽器の定位がやや曖昧で音場描写が不鮮明に聞こえます。守屋さんがお使いになっているB&W CM8はリアバスレフ方式のフロア型システムですが、背後の壁とかなり接近して設置されていて、壁の反射が定位を不鮮明にしているのではないでしょうか」ともコメント。スピーカーの背後にも対策が必要ではないかと指摘した。

これらの結果からDAIKENが提案したのが、ビス留めや接着が不要な音調吸音材「オトピタ01」と、自立式の調音ツール「アコースティックツリー」の使用(各製品の紹介などはこちら)。また、スピーカー前にカーペットを敷くことも提案し、元々ペット用であるが優れた吸音性能も有する「ワンパークマット」(製品資料ページ)を使用してはどうかとも述べた。

「オトピタ01」(左)と「アコースティックツリー」(右)

なお、「ワンパークマット」は裏面吸着加工を施した製品。既存の木質フローリングに吸着することですべらないという仕組みで、粘着テープなどは使用しない。「オトピタ01」などと同様に設置も撤去も簡単に行える点も特徴のひとつだ。また、ペットの鳴き声のキンキン音を和らげることも意図し吸音性能も高くしてあることから、今回のようにホームシアターやオーディオ用途で使用しても十分な効果が期待できる。そして井上氏は、これらの製品を使っての音場調整として次のような施策を提案した。

DAIKENが提案した音場調整策
中高音域の改善床からの一次反射低減のためスピーカー前に「ワンパークマット」を設置
フラッターエコー対策スピーカー背面と対向面の壁に「オトピタ01」を設置
低音域の改善「アコースティクツリー」を設置してコーナー部のこもりを抑えることにより、聴感上の低音の歯切れ良さを向上
ブーミング対策視聴位置近く背後に「アコースティクツリー」を設置


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