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木目が美しいタグチクラフテックの小型無指向性スピーカー「REXスピーカー」を聴く

公開日 2010/11/24 10:55 炭山アキラ
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タグチクラフテックとは耳慣れない社名だが、プロオーディオや建築音響の世界では名を知られた実力派のメーカーである。このたびそんな同社が持ち前の木工技術を生かして民生用スピーカーの世界に参入した。今回聴いた製品は、片手でひょいと持つことのできる小型のものだが、大変な手間と情熱のかかった逸品だ。フィンランドバーチという板材は堅く目の詰まった材質で、明るく端正な響きを持つことから高級スピーカーのキャビネットによく用いられる。本機はその材を積層し、内部をくり抜いた構造のものである。仕上げは手にしっとりとなじむウッドオイルの磨き上げのようだ。6cm口径のフルレンジ・スピーカーユニットは上向きに取り付けられ、これも積層削り出しのディフューザーで360度の指向性を持たせている。価格は126,000円(ペア・税込)と伝えられているが、この作りにしてこの価格は大いにお買い得だ。

タグチクラフテック「REXスピーカー」

ボディはコンパクト。フィンランドバーチの木目がインテリアに馴染む

小口径フルレンジなのでまず小編成のクラシックから聴いてみる。シューベルトのアルペジオーネ・ソナタをかけると、チェロが艶やかに実体感あふれるサウンドを奏でてくれる。ピアノはチェロよりも一歩奥に定位し、響き豊かに録音現場へ鳴り渡る様が見えてくる。無指向性のスピーカーは時に実際の録音現場よりも深いのではないかというエコーを表現することがあるが、本機もまさにそんな感じだ。ジャズも快調で、がんがん張り出す方向ではないが、ピアノトリオをしっとりと情感豊かに描き出す。この大きさでウッドベースがそこそこちゃんと聴こえるのは驚くべきだ。低域も高域も大型スピーカーほど伸びないのは当たり前だが、両端のバランスが極めて良いせいで、違和感なく音楽をじっくりと聴かせてくれるのだ。ポップスはボーカルがやはり耳へ染み渡るように鳴る。ウッドベースやドラムのアタックは聴こえない。しかしこの声を聴けば、そんなことはどうでもよくなってしまう。魅力的なスピーカーだ。


執筆:炭山アキラ
1964年、兵庫県神戸市生まれ。17歳の時、兄から譲り受けたシステムコンポがきっかけでオーディオに興味を持ち始める。19歳の時、粗大ゴミに捨ててあったエンクロージャーを拾ってきて改造し、20cmフルレンジを取り付けた頃からスピーカー自作の楽しさにも開眼する。90年代よりオーディオ・ビジュアル雑誌に在籍し、以後FM雑誌の編集者を経てライターに。FM雑誌時代には故・長岡鉄男氏の担当編集者を勤める。現在は新進気鋭のオーディオライターとして、様々なオーディオ誌にて活躍する。趣味はDIYにレコード収集。また、地元の吹奏楽団では学生の頃から親しんだユーフォニウムを演奏する一面も持つ。

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