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車内/家庭内兼用モデル

“カーAV難民”の救世主となるか − ソニーのタンブラー型スピーカー「SOUND MUG」を試す

公開日 2010/04/12 11:49 ファイル・ウェブ編集部:風間雄介
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先日発表されたソニーの小型スピーカー“SOUND MUG”「RDP-NWV500」。愛称はマグカップから取ったのだろうが、マグカップというよりはタンブラーのようなユニークな形状をしている。

ソニーの小型スピーカー“SOUND MUG”「RDP-NWV500」。本体色はブラックとオレンジの2色を用意する

本機の最大の特徴は、家庭でウォークマン用のドックスピーカーとして使用できるだけでなく、車内でもカップホルダーに置いて使えるという、家庭/車内兼用を実現した点にある。

■意外に多い? カーAV難民

ニュース記事に「ヨーロッパ車など一部では、センターコンソール部のデザイン上の制約により、カーナビやカーオーディオ機器をコンソールに設置できない車種も多い」と書いたが、実は記者自身もこの問題に悩まされた経験がある。

昨年秋までMINIコンバーチブルに乗っていた。このクルマのセンターコンソール部には巨大なスピードメーターが据え付けられており、デザイン上のマッチングを考えると純正オーディオ以外は選択しづらかった。1DIN型のナビを入れることは可能だが、ディスプレイがメーターの一部で隠れてしまうという問題があるのだ。このクルマのユーザーコミュニティなどを見ても、純正オーディオとポータブルナビを併用している方が多いようだ。

純正オーディオはiPodやウォークマンの接続には対応しておらず、デジタルオーディオプレーヤーを直接操作して、スムーズに楽曲を選んで再生したい、という欲求が日増しに強まった。

そこで、まず初めに試したのはFMトランスミッターだ。当初から音質が良いわけはないだろうと覚悟していたのだが、実際の音は予想をはるかに下回るもので、全体的に帯域が狭く、率直に言って聴くに堪えないレベルだった。

たまりかねて音質が良いと評判の機種に買い替えたが、それでも劇的に良くなるわけではない。使い勝手の面でも、たまたま同じ周波数帯を使っているクルマとすれ違うと音が途切れてしまうという問題があり、これは一度気になり出すとストレスになった。

このような経緯からFMトランスミッターはきっぱりと諦め、最終的にはMP3形式で焼いたCD-Rを何十枚かクルマに常駐させるという原始的な方法に落ち着いた。だが、これにも問題があった。純正CDプレーヤーにはID3タグを表示する機能やアルバムスキップ機能が装備されていなかったのだ。たとえば目的のアルバムが68曲目から始まる場合、スキップボタンをその回数押さなければならない。これでは音楽を聴こうという気持ち自体が萎えてしまう。

国産車では、カーAV/カーナビを設置するスペースが無いなどということはまずあり得ないが、ヨーロッパ車はまだまだカーナビ自体の普及が遅れていることもあり、1DIN型しか入らないものも多い。また、外国車はカーAV/カーナビの取り付け費用が割高に設定されていることもあり、同じような不満を感じている方も多いはずだ。

前置きが長くなったが、今回ソニーのSOUND MUGに目を付けたのは、記者がかつて経験したような“カーAV難民”の救世主になり得るのでは、と考えたからだ。

■コンパクトなボディからは想像しづらい豊かな音場

SOUND MUGの本体はやや大きめのタンブラー型で、ブラックとオレンジの2色を用意している。オレンジは車内のアンバーの照明に映える色として用意したとのことで、UV塗装により耐久性を高めている。本当はオレンジを使いたかったのだが、今回はスケジュールの都合で、ブラックモデルでテストした。またウォークマンはAシリーズを使用。音源は一般的な使い方を考慮し、256kbpsのAACを主に使用した。

まずは家の中で聴いてみた。家庭内ではウォークマン用ドックを内蔵した「ホームステーション」に置いて使用するのだが、この小さなボディからよくぞここまで、と感じさせる、重心がしっかりと低く据わった音に驚かされる。低音の量感はかなりのものだ。

ホームステーションにスピーカーとウォークマンを設置した状態

音を360°に拡散させる「サークルサウンド」は非常に有効で、ある程度スピーカーから離れると、スピーカーの位置を意識しなくて済むようになる。だから、じっくりと腰を据えて音楽と対峙するというよりは「ながら聴き」に向いている。たとえばリビングに設置しておいて、キッチンで料理しながら音楽を聴く、といった用途には最適だろう。

■これまでのカーAVの常識を覆す鮮明なサウンド

続いて、いよいよ車内のテストに移る。とは言っても、セッティングは非常にカンタン。本体をカップホルダーに置き、付属のシガーソケットケーブルから給電。あとは背面に用意された端子とウォークマンをつなぐだけだ。

シート脇のカップホルダーに本体を設置

シガーソケットから給電する

運転席に座ってウォークマンの再生ボタンを押して、まず初めに驚かされたのは、音がとにかく明瞭なこと。ボーカルの強弱も、ストリングスのピアニシモも全てはっきりと聴き取れる。FMトランスミッターのこもった音とは、まさに対極にある。

車内の場合、音源との距離が近く、さらに音が窓やドアなどに拡散して反射するためか、家庭内で聴いたときよりも、低音がさらに力強さを増した印象だ。少しブーミーにも感じたので、付属のフィッティングシートを本体の下に敷いてみた。本来はカップホルダーに安定して本体を置くためのものだが、設置が安定したことで本体の振動が伝わりにくくなり、低域の質感が高まった。車内使用には必須のアイテムと言えるだろう。

ウォークマンから直接操作を行えるのは快適の一言

しばらく聴き続けるうちに「音が元気なのは良いが、全体的に中域が強調されすぎているな」という印象も持ちはじめた。楽曲によっては、音量を少し上げると、ボーカルが若干割れ気味になってしまうのだ。ただし、これはウォークマンのイコライザー機能を使ってかんたんに調整することが可能。プリセットから好みのものを選べば、驚くほど自然な音に変わる。

なお、360度に音を拡散させているとは言え、運転席や助手席では、さすがにスピーカーの存在を意識させられる。「ここで鳴ってるな」ということがはっきりと分かってしまうのだ。気になるようであれば、ウォークマンのサラウンド機能を利用することで、かなり改善できることもあわせて報告しておきたい。

車内の使用では、ウォークマンのVPT(サラウンド)機能を利用することで音の広がり感を調整することをオススメしたい

後席でも聴いてみたが、これは秀逸だった。音が色々な場所に反射してから耳に届くためか、イコライジングなどを全く行わなくても、耳障りな印象は全く受けない。かと言って細部の情報量が損なわれているわけではなく、現在乗っているクルマ(Golf Variant TSI)の純正スピーカーで聴くよりも高音質と感じた。

車内で使用する際の操作性の高さも特筆しておきたい。ボリュームは本体上部に用意されているので、運転しながらでも手探りで容易にボリュームを調整することができる。電源ボタンも同じく上部に装備しているので、オン/オフ操作に手間取ることはない。

本体上部に電源とボリューム、インプット切り替えボタンを集中的に配置している

本機はウォークマンとの使用に適しているが、ステレオミニ入力も備えているので、iPodなどほかのポータブルメディアプレーヤーと接続することもできる。この場合はもちろん充電は行えないが、遠出をあまりしないという方ならさほど問題はないはずだ。

ウォークマンの専用接続端子に加え、ステレオミニ入力も備えている

2万円前後と、家庭内/車内の両方で使える製品としては手頃な価格帯を実現している本機は、ウォークマンユーザーはもちろん、iPodユーザーにとっても要注目の製品と言えるだろう。

※記事初出時にエンジン停止に合わせてウォークマンの電源が落ちないと記載しましたが、これは誤りでした。正しくは、エンジンが停止するとSOUND MUGの電源が切れるとともにウォークマンの再生が一時停止し、しばらく後にウォークマンが自動的にスリープモードに入る仕様となっております。お詫びして訂正致します。

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