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旗艦機直系の技術を搭載したコンポと話題のiPodトランスポートをレビュー

オンキヨーの血統 − 「A-5VL/C-S5VL」と「ND-S1」を山之内正氏が聴く

公開日 2009/10/05 11:25 山之内 正
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■「A-5VL」と「C-S5VL」を組合せ
− 立体感と量感のある伸び伸びとした再生音を楽しめる

試聴を行う山之内氏

最初にC-S5VLとA-5VLをアナログで接続し、CDとSACDの再生音を確認する。

思い切って大きめの音量を設定し、大編成のオーケストラを聴く(R.コルサコフ《道化師の踊り》)。専用スタンドに載せたD-312Eからは空気をたっぷり含んだオープンな低音が広がり、伸び伸びとしてスケールの大きなサウンドが展開した。ステージ最後部から響きわたる大太鼓は小型スピーカーのものとは思えない量感があり、旋律楽器が忙しく動き回る手前の音場との対比は音色、音場の深さで好対照をなす。

ジェーン・モンハイトのアルバムでは、ブラス群の瞬発力の大きさと、ボーカルの適度な柔らかさが聴きどころだ。音の立ち上がりが素早く、余韻の消え際がすっきりしているのはデジタルアンプならではの特質で、軽快ななかに適度な緊張感と的確なリズム感を聴き取ることができた。

本格的なオーディオコンポーネントに不可欠なのが立体的な空間再現力だが、その点でもこの組み合わせには合格点を付けることができる。アンゲリカ・キルヒシュラーガーがピアノやギターのシンプルな伴奏で歌う歌曲集《ララバイ》を聴くと、音が放たれた直後の余韻の広がり、声を包み込むプレゼンス感がとても素直で、透明な雰囲気が伝わってきた。声のイメージはほどよく引き締まっているが、高音部に硬い響きが乗ることもなく、心地よいサウンドをキープする。

■「A-5VL」と「ND-S1」を組合せ
−「これがiPodの音か」と驚くほどの音を鮮烈な音を聴かせてくれる

次に、ND-S1のデジタル出力をA-5VLに同軸ケーブルで接続し、iPod touchに保存したロスレス音源(ALAC)を再生する。

音が出た瞬間、これが本当にiPodの音なのかと接続を再確認したくなるほど鮮度の高いサウンドだ。シューベルトの《ます》やプッチーニの《ラ・ボエーム》などクラシックのソースを中心に聴いたのだが、室内楽もオペラも普段はiPodで再生する機会が少ないソースの代表だ。弱音部の精妙なニュアンスや声の広大なダイナミクスが再現しづらいことがその理由だが、ND-S1とA-5VLの組み合わせでは、そんなことを気にする必要はまったくない。表情の豊かさはCDに匹敵するし、声の力強さも期待以上だ。

ND-S1は付属リモコンで大半のiPodを操作でき、アルバムを選ぶ専用キーまで用意されている。使い勝手と音質が両立しているので、一度手にすると手放せなくなるに違いない。C-S5VL、A-5VLの組み合わせに追加したい機器の筆頭候補である。


山之内 正 Tadashi Yamanouchi

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在も市民オーケストラに所属し、定期演奏会も開催する。

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