2009年07月02日
“生真面目なボンド”の代償
話題のソフトを“Wooo"で観る − 第21回『007/慰めの報酬』(Blu-ray)
大橋伸太郎
この連載「話題のソフトを“Wooo"で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo"薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。「007/慰めの報酬」(Amazon)は007シリーズ第一作から数えて22作目にあたる。ちなみに007の第一作は1962年の「ドクター・ノオ」だったので、同シリーズは実に47年間続いていることになる(映画に先立って製作された「カジノ・ロワイヤル」のアメリカTV版を除く)。
私が子供の頃、アクションスターの筆頭は初代ボンドのショーン・コネリーであった。母がミステリー好きで、早川書房刊のイアン・フレミングの原作本が我が家の本棚の一番高い所に揃っていた。家族が出掛けて独りになると、「ゴールドフィンガー」の表紙カバーの金粉を塗られてベッドに横たわる裸の女や、「007は二度死ぬ」の瀬戸内海の海女たちのセクシーな描写を盗み読んで、胸をときめかせたものだ。
そうこうして中学生になり一人で映画館に行くようになると、折悪しくもコネリーがボンド役を降板、007は低迷期に入る。代わってアクションスターの第一人者になったのがスティーブ・マックィーンだった。この人の人気は凄いものだった。「ブリット」「大脱走」「華麗なる賭け」「ジュニア・ボナー」は地元の映画館で、「栄光のル・マン」は、今は無きテアトル東京で見た。
時は流れて21世紀(007シリーズは2世紀に渡って大河のように続いているのだ)、「ミュンヘン」のダニエル・クレイグがリメイク版「カジノ・ロワイヤル」で新ジェームズ・ボンドを演じると聞いて、思わず膝をポンと叩いてしまった。
金髪碧眼のボンドが誕生。そう、スティーブ・マックィーンがジェームズ・ボンドを演じるが如きではないか。少年時代の夢が実現したように感じたのは、筆者の世代なら私一人ではないはずだ。
ダニエル・クレイグは今回で2回目の主演で、何だかんだ賛否両論だが、私は率直に好演だと思う。クライブ・オーエンが選ばれなくて本当に良かった。あの背中の脂ぎった感じはボンドには似合わない。
「慰めの報酬」では、前作のマーティン・キャンベルに代わって「ネバーランド」や「チョコレート」のマーク・フォースターが監督を務めている。まともな映画化作品のなかったボンドの原点「カジノ・ロワイヤル」を前作で作り直し、原作小説のサスペンススリラーの味を生かして007シリーズは大きく変わった。荒唐無稽なアクションからシリアスでシックな大人の娯楽映画になったのである。
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