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新フラグシップで目指した画作りとは?

<IFA>目指したのは“HDR時代のリファレンス” - ソニーの4Kブラビア「Z9D」開発者インタビュー

公開日 2016/09/04 15:59 山本敦
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Phile-webのニュースでも案内されているように、今回ソニーは敢えてBRAVIAの最新モデルに投入したパネルの明るさや、搭載したLEDの数などディティールを公表することを控えた。その理由は「細かなスペックからではなく、自信を持ってお届けする映像のクオリティを見て違いを判断して欲しいから」であると、開発を担当した長尾氏も語っている。

とかくIFAのようなコンシューマ向けのエレクトロニクスショー、言い換えれば“お祭り”のような場所ではテレビの画質もさることながら、例えば「世界初!〇〇インチの大画面」などキャッチーな商品が派手さゆえに注目を集めることも多い。今回の欧州向けフラグシップシリーズの中には100インチの大画面モデル「KD-100ZD9」もあるが、多くの来場者が75インチ、65インチモデルの前にも立ち止まって映像美に息を呑む姿を頻繁に見かけたことが印象的だった。

75インチと65インチのヨーロッパモデルも注目を集める

バックライトマスタードライブのほかにも、Z9Dシリーズの高画質を支える柱の1つとして、従来のテレビやBDディスクのSDR映像からHDR映像をアップコンバートによりつくり出す「HDRリマスター」がある。

これはバックライトマスタードライブと同様に、従来の4K高画質プロセッサー「X1」から約1.4倍の処理速度向上を果たした新開発の「X1 Extreme(エクストリーム)」が実現する高画質化技術だ。

「従来は画面単位で輝度のコントラストカーブを解析して、全体のコントラストを整えていました。最新のフラグシップモデルでは、画面に表示されている物体をある程度のオブジェクトごとに認識して、それぞれの中で色やコントラストに補正をかけています。例えば、明るい空に浮かぶ雲を表現しようとした場合、今までは一体が“明るい”と判断された映像の中での処理に止まっていました。それが本機では、空の中にある雲を特定してコントラストにメリハリを付けるので、より立体的な雲の形がわかるようになります。

輝度の高い部分から沢山の情報を引き出せるようになることがHDR映像の特徴でもあります。明るさだけでなく、どんな色が含まれているかということも解析しながらコントラストを付けることができます。そのため青い空も、より立体的に感じていただくことができます」(長尾氏)

HDRリマスターの効果を紹介

X1 Extremeのハイスピードなリアルタイム画像処理により、映像の輝度・色成分を今までよりも細かいブロックごとに解析しながら、より適切なコントラストカーブを当てることを可能にしたというわけだ。IFA 2016の会場では、青い海と波の映像、寿司の銀シャリの粒立ちを際立って再現できる新BRAVIAの実力がデモ映像により披露されていた。

HDR映像の画づくりについては、制作者サイドのプロフェッショナルとも議論を重ねながら、バックライトマスタードライブの技術を搭載するプロトタイプモデルを使ってチューニングしてきたという。

最新の高性能な4K高画質プロセッサー「X1 Extreme」が映像面で多くの飛躍を生んだ

「制作のワークフローでつくったHDR映像が、コンシューマー向けのテレビで再現したときにあまりにも変わってしまうという声は、制作サイドの方々からいただいていました。私たちは元の映像ソースを忠実に再現できるテレビであることに重きを置きました。

いま制作現場ではソニーの業務用4K有機ELマスターモニターの『BVM-X300』がほぼリファレンスになりつつありますので、本機で確認した映像が、Z9Dシリーズで再現した映像におけるどの輝度ポイントでも正しく反映されているかという点にものすごく気を遣ってチューニングしています。制作者の意図をそのまま再現するということが、特に色のリアルな再現性の鍵を握っているからです。

また、従来のSDR映像のスタンダードでは困難だった、高輝度部分の色味を正しく再現することが映像のリアリティに関わってくるということもわかってきました」(長尾氏)

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