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有機ELもCLDも開発を継続

【CES】ソニー平井CEOが語る“変わりだしたソニー” ー リスク取ってイノベーティブな製品づくりを

2014/01/09 折原一也
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2014 International CESでひときわ大きな存在感を放っているメーカーがソニーだ。現地時間6日に開催されたプレスカンファレンスでは、4Kテレビ“BRAVIA”を中心にVideo Unlimited 4Kなどの配信サービス、スマートフォンの新モデルXperia Z1 compact(日本のXperia Z1 fのグローバルモデル)、そしてウェアラブルデバイスを発表。そして現地時間7日のキーノートスピーチでは、「感動」(英語では「WOW」)を生み出す製品を作るというコンセプトと、4K超短焦点プロジェクター「Life space UX」、ネットワークサービスを披露するなど新機軸の製品を意欲的に送り出す姿勢を打ち出した。

現地時間7日、日本人プレス向けのラウンドテーブルでグループインタビューをする機会が得られたので、主にデジタル機器に関連する質問と回答を抜粋・要約してお届けしよう。


日本の新聞各社、フリージャーナリストらのラウンドテーブルで取材に応じるソニー平井一夫CEO

ーー キーノートスピーチで披露された「Life space UX」は面白い。あの発想はどこから来たのか?

平井CEO:ソニーの様々な研究所では技術交換会が行われており、そこで私も実際にいろいろなものを見てきました。そこで私はいつ商品するのか、何が課題なのか、かならず聞いています。「Life space UX」も、技術交換会で見て、単純に大画面で映画を見たりする以上の価値があると考えました。そこで私直下のTS事業部を作り、商品化を行いました。いざやると決めると、他にブースで展示しているものも含めて様々なものが出てきました。それをソニーのひとつの方向性としてCES会場で皆様に披露し、ご意見をうかがうことにしました。


Life Space UXのデモ
今回、キーノートで(ソニーが過去に発売して失敗に終わった商品を)あえて出したのは、なんでも安全な商品だけを出せばいいというのはソニーじゃない。失敗のなかに成功があるんだと、リスクを取る文化というのを根付かせないと、安全な商品だけでイノベーティブなものは出てこないと発信するためです。

たとえばサイバーショットのDCD-RX1が、成功したから、Eマウントでやろうといういことでα7やα7Rができたりと成果も出ています。レンズ一体型カメラもそうですが、リスクを取ることが評価されるという文化を作っていかないと、私自身が面白くないですよね。

ーー キーノートで披露された「PS NOW」などのPSN(PlayStationNetwork)と、本社の展開しているネットワーク構想はつながってくるのか。


キーノートスピーチでは、SENの解説にも時間が割かれた
平井CEO:当然つながってきます。お話しさせていてだいたアンディー・ハウスはSCEの社長をやっていますが、SENの担当役員でもあります。テレビに関してはSCEではなくSENの提供するネットワークサービスの一環、VideoUnlimitedなどは次のステップとして、ライブのTVとストリーミングコンテンツを合わせて紹介しようという、新しいものとしてやっていきます。

PSNとSENはすでにIDは統合されているし、ビデオの映像コンテンツの方は相互乗り入れしていて、ユーザーからすれば完璧に1つのサービスになっているので、あえて壁を作ったりはしません。キーノートでお話しした「PlayStation NOW」は、今までのPlayStationのコンソールで楽しんでいただいた内容を、BRAVIAやスマホ、iPadなど、OSに限られることなく、PlayStationの世界をもっとオープンに楽しんでもらえればと考えています。

ーー 今回、Lifelogアプリで日々の活動を記録できるウェアラブルデバイスを発表したが、昨年9月のIFAの時は「ウェアラブル端末は人間の体という“不動産”は非常に価値が高いもので、どんな製品をどうやって快適に身につけてもらうかについては深く検証していく必要がある」と語っていた(関連ニュース)。新しく発表した製品は、どのように身に着けてもらえると考えているのか。


ソニーの送り出す新コンセプトのライフログ商品群

平井社長自らウェアラブル端末を身に付けて取材に応じていた
平井CEO:ウェアラブルデバイスを身につけてもらうには、面白い価値があると思っていただけることが大事です。腕時計型では、腕時計やブレスレットをつけていたら付けてもらえないので、あえて違うかたちにしています。見せたくないという人はハンドバッグに付けてもらってもいいし、足首につけてアンクルバンドにしてもいい。Lifelogアプリを楽しんでもらうためには、ブレスレットというスタイルを押しつける必要はないのではと考えました。

ーー ライフログにも関係する話として、ハードのほかの付加価値をどのようにビジネスにしていくのか。

平井CEO:ライフログはスマホというデバイスをベースに回していきますが、利用に際し「月額いくら」なんてことはありません。ネットワークサービスは、今までは無償だったものを有償でご提供し、内容を深めてビジネスモデルを変えていく、というのはあります。例えばゲームでは、ディスクベースのゲームは値段が下がっているし、ゲームを買ってもらう事には慣れています。様々なビジネスによって段階があります。基本的にはコンテンツに応じて、各サービスが拡大していくことが大事だと思っています。

スマホアプリとクラウドを連携させてライフログ記録を行う

ーー スマートフォンもコモディティ化が進んでいて、利益が出ないという見方もあるが。

平井CEO:スマートフォンのコモディティ化が進んでいくとしても、ソニーはコンテンツ、ネットワークコンテンツ、アプリも含めて持っていますので、もしそうならシフトしていきます。そうなった時に自社でマネジメントしていくかどうか。他社のコンテンツであると、バウンティーはあっても、それ以上がないんですよね。

もう一つは長期的な話として、スマートフォンだっていつまでも続くわけではない。しかし続けていかないと、スマートフォンの次に来る新しいパラダイム、次の時代にリーダシップを取れるかどうかに関わってきます。ソニーはネットワークサービスを自社で持っている強みがありますし、そこが他メーカーのみなさんが持っていない部分なので、今後、ソニーのネットワークサービスを他社に提供するという形もあるかも知れません。

ーー 4Kテレビと薄型テレビの将来の展望についてはどういった戦略を描いているか。

平井CEO:まず4Kという新しい軸については、ソニーがリーダーシップを持ってマーケットに参入していきます。4K放送についても、日本では次世代放送推進フォーラムがあり、試験放送もやりますし、これから期待できる分野だと思っています。テレビ事業としても、今の段階では4Kはかなり価格帯が高いですから、売り上げベースでは全体の数%ですが、テレビビジネスに対する貢献はしています。


ソニーはCESで4Kテレビを3ライン発表した

「4K」についてはコンテンツ拡充の重要性も強調
一方で、2Kについては競争が激しい状況です。ソニーのブラビアは液晶でもLEDのローカルディミング性能を備え、最大輝度も2倍から3倍に引き上げ、商品を強くする差別化を図っています。経営面では、ここ3年進めてきていたテレビ事業の改革ですが、2年前は2,000億の赤字だったものが700億にまで減っています。いち消費者として自分が見ても、ソニーの商品力が上がったなと思います。為替など外的な要因もありますが、改革は進んでいます。


ーー 4Kコンテンツはどういうフェーズにあるという認識なのか。

平井CEO:4Kについては、まだまだ導入のフェーズだと思っています。コンテンツ面で言えば、ひとつの試みとしてアメリカでは昨年から4Kネイティブコンテンツを展開しています。NetFlixさんも4Kストリーミングに参入しようとしていますし、日本の次世代放送推進フォーラムではFIFAのワールドカップ決勝戦は4Kで撮影しようという動きがあります。ただ、すぐにみんな4Kになるというわけではないので、エレキ業界だけでなく放送業界なども一緒になって大切に育てていく必要があると思います。

ーー パナソニックとの有機EL共同開発が解消されたが、今後への影響は。

平井CEO:パナソニックさんとの有機ELの提携解消は、当初の契約通りです。(有機ELを)やらないというわけではなく、単に契約期間が過ぎたので、成果をそれぞれ持ち帰ったというものです。2年前に出したCrystral LEDも研究を続けています。次世代テレビと呼ばれるデバイスは、有機ELもCrystral LEDも、私が厚木に足を運んで実物を見て意見を言っているので、それは確実に言えます。

今年のソニーブースには次世代TVデバイスはなく液晶BRAVIAの画質をアピール


ーー 今回のCESを総括すると。

平井CEO:今度の4月で社長に就任して2年になりますが、これまで「One Sony」など色々なメッセージを発信してきました。今回の基調講演では「感動(WOW)」をアピールしましたが、以前語っていた自分が思い描いているような商品群がある程度できてきたと思います。特にここ半年〜1年の間にRX100やXperia Z1、RX10、α7など、面白いと言っていただけるものが少しずつ増えてきました。ある程度納得できたものも含めて、「感動」する商品を出し、それがパッションを生み出す…というのがソニーです。


キーノートスピーチでは「感動」(WOW)をキーワードとして挙げていた
「ソニーが変わった」という過去形ではなく、まだ道半ばです。商品としても、もっともっと良いものを出して行きたい。そういった意味でも、変化したというよりも、変化する方向に走り出している、変わったと宣言するようなタイミングにはなったと思います。

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