【レビュー有】パイオニア、AirPlay/ネットオーディオ/iOSアプリ操作対応のAVアンプ「VSA-1021」など3機種を発売

text／高橋 敦
今回の取材では、再生音のクオリティに注目してチェックを行った。

映画BD「9 〜9番目の奇妙な人形〜」から試聴。小さな人形たちが、人間が残した彼らにとっては巨大な廃墟を訪れる場面では、その空間の圧倒的な広がりが再現されなくては雰囲気が出ない。本機は高度な空間描写力で、空間の広さや高さ、空気の唸りを見事に描き出してくれる。

人形たちとビースト（機械の獣）の対決の場面では、ビーストの唸り声が硬質に響き、無機質な怖さを演出。低域の引き締めや硬質感はパイオニアの”らしさ”だ。効果音のキレ、サラウンドのスピード感とつながりも、同社アンプへの期待を裏切らない。台詞も素晴らしくクリア。

キレの良さやスピード感の向上には「フェイズコントロールPLUS」の効果も大きいと思われる。従来の「フェイズコントロール」はアンプ内での低域の遅延を補正するものだったが、「PLUS」はソース内の遅延まで補正。補正値は手動で変更可能なので、マニアックに追い込みたい方は要注目。

また、同社対応プレーヤーとの組み合わせ時に有効になるHDMI伝送のジッター低減機能「PQLS」も、「PQLSビットストリーム」に進化。システムを同社製品で揃える利点をさらに強めている。

ネットワーク再生では、遂にハイレゾ配信が開始されたBill Evans Trio「Waltz For Debby」をチェック。

この演奏の醍醐味である、ウッドベースの強引なまでに唸るドライブ感を、本機の硬質な低域は見事に再現。ピアノがリリカルに歌う場面では、パイオニアらしい高精細な高域が発揮され、透明感溢れる音色。食器の物音などが醸し出す空気感からも、ハイレゾっていいな…と実感できる。

一方で、非ハイレゾ音源も切り捨てていない。圧縮による音質劣化補正機能は「オート・サウンドレトリバー」に進化。128kbps未満など低ビットレートの音楽ファイルやネットラジオに対しても有効に働くようになった。

それにしても前モデルからの機能向上や追加が多すぎて、ここには書き切れないほどだ。AVアンプの超多機能時代、その最前線に飛び出る新鋭機である。