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コアレス・ストレートフラックス型カートリッジ「青龍」の上位モデル

トップウイング代表取締役 佐々木原幸一氏インタビュー。注目のカートリッジ「朱雀」に秘められた挑戦を訊く

公開日 2018/08/15 10:13 季刊・アナログ編集部
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「振動しない筐体」から「良い振動をする」筐体へ

「軽量にするということは、非常に振動しやすくなるという運命にある。だから朱雀は『振動しても“悪い振動”をしないようにしよう』と考えました。部材それぞれは振動するんですけど、影響を与えない振動となると、別々の共振モードを持つ素材でサンドイッチすればいいんです。私の頭の中にあったのが、まずカーボン。それからチタンを使ってみたかった。それから端子板には当然金属は使えないので、エンジニアリングプラスチック。それも非常に高度な、温度特性に優れたものを使わなきゃいけない。この3つをなんとか組み合わせようというところから、朱雀の開発がスタートしています。ところが、これが青龍を作ってくれた協力会社でこれをやるのは、無理だったんですね。チタンの加工が難しかったんです。実際に朱雀は、チタン板の積層と溶接技術を駆使した、おそらく日本でしか作れないだろうという作り方をしています」(佐々木原氏)
 
この軽量化には、想像以上の困難がつきまとったそうだ。そこで目をつけたのが、高精度なイヤフォンの製作で定評あるK2デザインという企業。この会社と青龍の筐体設計を行ったファーストメカニカルデザインとで、何度も設計図をすり合わせながら、最終的に朱雀の筐体を作ることのできる町工場を見つけることができたという。ただし、その町工場もカートリッジを作ったことは一度もない。“自分たちが何を作っているのか”というところから指導する形で、朱雀はようやく軽量化への一歩を踏み出せたのである。

朱雀の天板はカーボンを採用。カーボンは実はネジが切れないため、特殊なバネを埋め込むヘリサートという技術を使っている。こうした細かな部分にも、朱雀に投入された技術力が隠されている

早くも世界的な評価を獲得。完全バランス構造も構想中

「結果として、朱雀は非常に良いカートリッジとなったと思います。おそらく青龍と聴き比べていただくと、朱雀のほうがさらに“静か”になっていると思いますよ」と佐々木原氏はその自信をのぞかせる。事実、朱雀は登場するや否や、世界で最も高価な部類に入るカートリッジであるにもかかわらず、世界各国で異例ともいえるほどの評価を獲得した。ちなみにロクサンの創設者であり、現在はVERTEREというブランドのファウンダーとしてその腕を奮っているTouraji Moghaddam氏も、そのサウンドに惚れ込み、自身の製品のデモンストレーションに使っている。ポーランドのウェブメディアであるhigh fidelityでは、日本ブランド特集の際に朱雀をキービジュアルに使用した。

かつてロクサンでその腕を奮ったTouraj Moghaddam氏も朱雀のサウンドを評価するひとり。ミュンヘンで行われたHI-Fi Deluxeでは、現在主宰するVERTEREのレコードプレーヤーのデモに朱雀を使用していた

はやくもカートリッジにおける重要ブランドとなったトップウイングだが、このあとの展開にどのようなことを考えているのだろうか。

「実は7端子の完全バランス構造のカートリッジの特許を出願しました。つまりカートリッジからアームにいたるまで、フルバランスで伝送する製品を、トップモデルとして予定している白虎でやりたいと思っています」(佐々木原氏)
 
ある意味ではオーディオ界の異端児かもしれないが、そういうブランドがあるからこそ、アナログはまだまだ面白くなる。朱雀はそんなトップウイングらしさ溢れる挑戦の結果誕生したカートリッジとして、今後も目が離せない存在だ。



本記事は「analog Vol.60』からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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