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新11シリーズのプリメインアンプ

デノン「PMA-SX11」開発者が語る - シンプル&ストレート設計は全て正確な増幅のため

公開日 2015/12/14 10:24 構成:編集部 小澤貴信
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国産だからこそ可能な厳格な品質管理

−− PMA-SX11を開発する上で1番苦労されたのはどのようなことだったのでしょうか。

新井氏 ひとつは電源トランスです。スイッチング電源のような高効率電源が主流になってくるなかで、アナログ電源を使うエレクトロニクス製品はオーディオ機器くらいしかなくなりつつあります。こうした状況において、電源トランスの選択肢はかつてほど多くないのです。

シンプル&ストレートを徹底したPMA-SX11は、トーンコントロールやREC出力なども省略。正確な増幅を優先するために機能も最小限に絞り込んでいる

なおPMA-SX1はEIトランスでしたが、PMA-SX11ではトロイダルトランスを用いています。一般的にはトロイダルトランスの方が上級と思われているようですが、そんなことはありません。トロイダルトランスの利点とは、サイズのわりには大きな電流を流せることで、電源トランスを小さくできるためにトロイダルトランスを選ぶのです。かつてはトロイダルトランスの方が音が良いと言われた時期もありますが、実際はそんなことはありません。適材適所でトランスの方式も選びます。

−− 実際にPMA-SX11においてトランス選びは難航されたのでしょうか。

新井氏 最終試作の段階で、実はトランスから発生するうなり音が大きいのではという問題が起こりました。電源トランスは振動するので、音や振動が周囲に漏れないようにアルミケースとトランスの間に樹脂を充填するのですが、音が漏れて耳についたのです。そこでトランスメーカーに中を切って調べてもらうと、トランス内に充填された樹脂の中に気泡が入っていて、それが原因で音が大きくなっていたのです。そこで量産品に用いる電源トランスについては気泡の問題を全てクリアしてもらい、問題なく出荷することができました。

最も苦労したポイントのひとつという電源トランス

−− この電源トランスのケースのように、もし試作段階や製造過程で部品の品質に問題があれば、チェックできるような体勢が引かれているのですか。

新井氏 デノン製品に採用する部品は、必ず厳しいチェックによる部品認定が行われています。今回のケースでは、部品認定後の量産試作にたまたま品質の悪いものが混ざっていたのですが、それも事前の確認で対処できました。

−− オーディオ機器において、音質の良し悪しはもちろんなのですが、品質というのもユーザーの方々が非常に気にされるポイントだと思います。

新井氏 品質チェックは、オーディオ製品の製造において非常に重要な要素です。例えば、各製品は先行量産で20台ほど「ヒートラン」を行います。これは30〜35度の部屋で50〜100時間音楽信号を鳴らし、製品に実使用状態以上の負荷をかけても問題がないことを確認するものです。スピーカーではなくダミーロードという抵抗を用いるので、実際に音は出ないですが。また、この製品では出荷前にセット全数に3時間以上のヒートランを行い、ここで問題ないことが確認された製品だけを出荷できることになっています。

製品の開発および製造を行う福島県・白河のデノン拠点。国産ならではの品質管理にも注目したい

−− デノンのHi-Fi製品は、この白河工場で製造されているとのことですが、国産という安心はあると感じました。最後に、先ほどお話されていたとおり、国内ブランドにもライバルも多い価格帯ですが、そのなかでのPMA-SX11の強みを一言で言ったらと何でしょうか。

シンプル&ストレートのコンセプトのもと、1組の大電流型素子を使ってスピーカーを完璧に駆動することができるという点です。トーンコントロールまで省略するなど音質に影響する要素を徹底的に省いて、シンプルに徹するすることで、先ほどの例えで説明した「コピーの精度」を徹底的に高めています。そして、こうした純度の高い再生が可能なアンプに、CR型フォノイコラーザーが搭載されているのです。アナログ再生をとことん楽しみたい方にとっても、PMA-SX11はこの価格帯における最良の選択肢になると思います。

−− 本日はありがとうございました。

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