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【開発者インタビュー】オーディオテクニカ「ATH-MSR7」に込められた思いを訊く

公開日 2014/12/01 11:00 山本敦
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オーディオテクニカが1974年に初めてヘッドホンを発売してから今年で40年。記念すべき時を迎えて発売されたポータブルヘッドホン「ATH-MSR7」が開発された背景、本機に投入されたオーディオテクニカが誇る音響技術について、商品企画を担当したマーケティング本部 企画部 コンシューマー企画課 企画グループの奈良崇史氏に訊ねた。

ATH-MSR7。鮮やかなレッドカラーの限定機「ATH-MSR7LTD」(写真右)もラインナップする


純粋に「高音質再生」にこだわったポータブルヘッドホン

インタビューに答えていただいた奈良氏は、今回「ATH-MSR7」の商品企画を担当する以前は、ヘッドホンの「SOLID BASS」シリーズ、再生コンテンツの音に同期しながら本体が振動する新技術「V-ACTモード」を搭載するデジタルワイヤレスヘッドホン「ATH-DWL700」をはじめ、スポーツイヤホンやBluetoothスピーカーなど幅広い商品カテゴリーの企画を手がけてきた。

はじめに「ATH-MSR7」の企画意図からうかがった。

オーディオテクニカは40年間、ホーム用のHiFiヘッドホンからポータブルヘッドホンまで、種類・数ともに多くの商品をつくってきました。現在ポータブルヘッドホンのラインナップには、着こなしとスタイルにこだわったEARSUITシリーズや、低音を強化したSOLID BASSシリーズ、アグレッシブなサウンドとデザインを追求したSONICFUELシリーズなど、“いい音”に何か付加価値や機能のコンセプトを加えたラインナップを数多く揃えています。ただ一方では純粋に高音質のみを追求した“オーディテクニカの音”を代表するポータブルヘッドホンがありませんでした。そこで今回、オーディオテクニカが持つ音響技術の粋を集めてつくったモデルがATH-MSR7です

「ATH-MSR7」の企画を担当したオーディオテクニカ 奈良崇史氏

昨今はハイレゾオーディオにマニアだけでなく一般の音楽ファンが関心を寄せはじめ、ハイレゾの再生環境がホーム、PCからポータブルにも広がりつつある。ポータブルで聴く音楽の「音質」への期待が高まる中、オーディオテクニカが満を持して「究極のポータブルヘッドホン」を完成させたモデルが本機というわけだ。ブランドの新しい「顔」となるヘッドホンをつくるにあたって、奈良氏をはじめ開発スタッフはどんな音づくりを目指してきたのだろうか。


今から約1年半ほど前にプロジェクトが立ち上がってから、原音を忠実に再生できるポータブルヘッドホンを目指して開発を進めてきました。今春に先行発売した、”デュアルフェーズ・プッシュプルドライバー”搭載のCKRシリーズは、原音再生を追求したオーディオテクニカの看板イヤホンですが、開発側の感覚としては、本機を指標にしながら原音再現のリアリティに迫るポータブルヘッドホンとしてATH-MSR7を位置づけてきたところもあります」―「クリアで自然なサウンド」が、ATH-MSR7の音づくりにおける一つのポイントとなったようだ。

もちろん全ての音楽に対して忠実に再現できるように音をつくり込んでいますが、特にヴォーカルが前面に出てきたり、複数の楽器で構成された生演奏やライブ感のある楽曲を再生した時に、本機の特徴が一番発揮されるのではないでしょうか」と奈良氏は語る。

実機を試聴してみると、特に研ぎ澄まされた高域の再現力は他のヘッドホンに類を見ないほど洗練されている。ハイレゾ音源を再生してみると、演奏の空気感までも見事に蘇ってくるところに本機の優れたパフォーマンスが実感できるはずだ。中高域がスムーズにつながり、まるでライブの演奏を聴いているような自然なリスニング感が得られる。低域の透明度が高く、音の立ち上がり・立ち下がりのレスポンスも俊敏だ。奈良氏の言葉のとおり、確かに生演奏の再現力は抜群に高いのだが、打ち込み系の楽曲を聴いてもディティールの情報量に富んだ立体的な音が楽しめる。特定の音楽ジャンルに偏ることのない広範な対応力は、さすがにポータブルヘッドホンのリファレンスを目指してつくられただけのことはある。

本機の高音質を支えているオーディオテクニカならではの音響技術について、より詳しいポイントを奈良氏に訊ねてみた。

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