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<山本敦のAV進化論 第29回>

「ヘッドホンでもDolby Atmos」の可能性とは? モバイル向けドルビーアトモスの詳細を聞く

公開日 2014/10/27 18:00 山本 敦
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Amazonインスタント・ビデオもドルビーデジタルプラスによるサラウンド音声を収録したオンラインコンテンツの配信を行っているが、Dolby Atmosの音声信号は、このドルビーデジタルプラスの音声信号上にメタデータとして加える。このオブジェクトオーディオのためのメタデータは今まで「ドルビーデジタルプラス」では使われていなかったが、ここにオブジェクト音声データを収録することで、対応するタブレットで再生可能になる。

Amazonインスタント・ビデオのトップページ

アマゾンのタブレット「Fire HDX 8.9」は11月4日から日本でも発売されるが、発売時にDolby Atmos対応コンテンツがユーザーにどういうかたちで提供されるのかについては現時点では未発表である。日本ではVUDUのコンテンツを視聴することは基本的にできないが、Amazonインスタント・ビデオにはドルビーデジタルプラスによるサラウンド収録コンテンツも用意されているので、日本向けにもDolby Atmos対応コンテンツが配信される可能性もある。


■劇場・ホーム向けとモバイルム向けコンテンツの共通点と相違点

Dolby Atmosのコンテンツをモバイル機器で楽しむためには、スタジオでAtmos専用のエンコードツールやワークフローを使って制作された独自のコンテンツが必要になる。

Ganti氏は「ドルビーは常に劇場の感動を、コンシューマー機器でも変わることなく体験できる環境づくりを目指しています。モバイル用のコンテンツも、ソースはホーム用と全く同じものを使って、オブジェクトの空間情報を元に最適な配置を行っています」と語る。Dolby Atmosのコンテンツは、劇場からホームまで兼用できるメリットがあるが、これをモバイルまで広げられるということになる。

劇場やホームの場合は、設置されたスピーカーの数や配置に合わせて音声信号を再構成し出力するレンダリングを行うが、モバイル機器の場合はヘッドホンやイヤホンが対象となるため、デコードした音声信号から最適な3D音響空間をつくり出すバーチャル処理が必要になる。そのため、モバイル機器側にはAtmos対応コンテンツの信号を展開するデコーダー、バーチャルヘッドホン処理のシグナルプロセッサー、およびプレーヤーアプリが必要になる。

ホーム用では高さ方向の情報を再生するため天井にスピーカーを設置する方法が提案されたのも特徴。しかし、設置ができない場合のため天井の反射を利用する「イネーブルドスピーカー」も用意している

なお、タブレットと組み合わせるヘッドホンやイヤホンに、特に規定はない。「Dolby Atmosではどんなヘッドホンでもリアルなサラウンドが体験できることが特徴ですが、Amazon Fire HDX 8.9のようにDolby Atmosを搭載したタブレットで、Dolby Atmos対応コンテンツを視聴した場合のみ、Dolby Atmosを体験できます」とGanti氏は説明する。だが今後の可能性として、ドルビーがヘッドホンメーカーとコラボした「Dolby Atmos専用ヘッドホン」があっても良いのではないだろうか。現在、ヘッドホンやイヤホンは「ハイレゾ対応」が売り文句の一つになっているが、“サラウンド感がしっかり得られる”という提案もおもしろい。こう伝えると、Ganti氏は「興味深いアイデアとして、検討してみたいと思います」と答えてくれた。


■Dolby Atmosが組み込めるモバイル機器に制限はあるのか

Dolby Atmosの技術はどんなタブレットにも組み込むことができるのだろうか。Ganti氏に訊ねてみた。

次ページ今後はアマゾン以外にも様々なメーカーからDolby Atmos対応のモバイル機器が登場する予定

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