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“待望の新素材”開発の裏側に迫る

PCOCCを超える? 注目の新銅素材「PC-Triple C」開発者インタビュー

2014/01/23 編集部:杉浦 みな子
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優れた導電特性を持ち、オーディオ用ケーブルの導体として長年採用されてきた銅素材「PCOCC(Pure Cupper Ohno Continuous Casting Process)」の製造中止発表(関連ニュース)から約1年。今回、このPCOCCの代わりとなり得る注目の銅素材が発表された。FCM(株)が開発した「PC-Triple C(ピーシー トリプルシー)」だ(関連ニュース)。

PC-Triple C(0.9mm径のもの)

Phile-webでは、このPC-Triple Cを開発したFCM(株)取締役 電気機能線材事業部管掌 事業改革推進担当 芥田泰夫氏と、販売を担当する(株)プロモーション・ワークス 代表取締役 社長 矢口正幸氏にインタビューを実施した。オーディオファンにとってもケーブルメーカーにとっても“待望の新素材”となるPC-Triple Cは、果たしてPCOCCの代わりになり得るのか?

FCM(株)の芥田氏(左)と、(株)プロモーション・ワークスの矢口氏

■オーディオ用ケーブルに多く採用されてきたPCOCC

最初に、PCOCCについて少し振り返っていきたい。PCOCCは、古河電気工業が1986年に開発した素材で、一方向性凝固組織の特徴を持つ高純度銅線だ。名称は「Pure Cupper Ohno Continuous Casting」の略で、ちなみに「Ohno」とは素材の開発者である「大野」篤美氏の名前に由来する。

PCOCCの長所は、その純度の高さだった。一般的な銅素材は多数の結晶から構成されており、結晶と結晶の隙間(結晶粒界)に不純物が入り込みやすい。しかしPCOCCは、特殊な製法によって結晶構造を単一化した単結晶銅としており、結晶粒界が極めて少ない。これによって不純物の混入が抑えられ、高い純度を実現し、優れた導電特性を確保していた。

しかし、ここ数年の国内の市場の低迷を受け年間販売量が減少し、事業継続が困難な状況に陥ったことから、古河電気工業では2013年3月にPCOCCの製造中止を発表。同年3月末日までに受注を終了し、同年8月末日までに生産を終了、同年12月末日までに販売を終了した。

この報を受けPhile-webでは昨年3月に、連載コーナー「高橋敦のオーディオ絶対領域」にて、ケーブルメーカー3社にPCOCC生産中止に関する突撃インタビューを実施したが、いずれのメーカーも手がける製品の多くにPCOCCを採用しており、生産中止に際してPCOCCと同等以上の素材を探しているとのことだった。今回ついにその代わりとなり得る素材が登場した形となる。

なお、今回お話を伺った芥田氏と矢口氏は、かつてPCOCCの開発に携わっていた人物だ。以前に芥田氏は古河電気工業に在籍しておりPCOCCの開発に従事。また、PCOCCの取り扱いを長年行ってきたプロモーション・ワークスの矢口氏も、同素材の開発に携わっていた1人だった。今回発表された新素材PC-Triple Cは、PCOCCに引き続いて両者が共同開発したものとなる。

芥田氏と矢口氏は、PCOCCの開発にも携わっていた

「PCOCCがクオリティの高い素材としてオーディオの世界で受け入れられ、20年以上にわたって長く愛用されてきたことは大きなことだと思います」と芥田氏は語る。また、矢口氏によれば、PCOCCの生産中止が発表されたときには惜しむ声が多く寄せられたという。

「生産中止の報道を見た多くの方から、『なんとかならないのか』と反応を頂いていました。『PCOCCに代わる新しい素材は出てくるのか』という期待を多くの方が持っていると感じましたし、それにお応えしなくてはならないと思いました。そこで、PCOCCの開発時から一緒にやってきた芥田さんに『PCOCCの代わりになる新しい素材を開発できないか』とご相談したんです」と矢口氏は振り返る。相談を受けた芥田氏は、改めて「結晶を連続させた構造」を有する銅素材の開発を行った。そして出来上がったのがPC-Triple Cだ。

さて、このPC-Triple Cが「PCOCCの代わりになり得る」とされる“連続した結晶構造”を実現した製造方法に迫っていきたい。そこには「特別なOFC素材」と「連続鍛造」という2つのポイントがあった。

次ページPC-Triple CがPCOCCの代わりになり得る理由とは?「特別なOFC」と「定角連続移送鍛造法」

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