吉清和芳

体感型アプローチに積極的に取り組み
新しい需要、新しいお客様をつくる
パナソニックコンシューマーマーケティング(株)
代表取締役社長
吉清和芳
Kazuyoshi Kissei

地域の活性化を図り、顧客開拓、需要創造を進めるパナソニック。体感の場づくりを強化、さまざまなお客様にアピールするチャネル政策を推進するパナソニックコンシューマーマーケティングの取り組みについて、同社社長の吉清氏が語る。
インタビュアー/徳田ゆかり Senka21編集長 写真/柴田のりよし

チャネルの強みを活かし
お客様にアプローチ

── 昨年のご就任以来、手応えはいかがでしたか。

吉清市場全体は2014年の消費税増税の反動からようやく回復しましたが、まだ力強い巻き返しには至っていません。しかしながら、依然底堅い需要はあると思います。予断を許さない状況は続きますが、一方で新しいチャンスもおおいにあると思っております。そこで私どもとしては、商品やサービスの価値向上にますます注力し、流通の皆様が求める新しい需要、新しいお客様づくりにどう取り組むかがポイントになります。

当社では、2017年度も「地域創生」「顧客開拓」「需要創造」の3つのテーマを引き続き進めていきます。「地域創生」では、地域ならではの需要をしっかりと捉えた特徴的な商品を投入し、全国各地のご販売店様を通じてお客様にアピールしていきます。薄型テレビ「ビエラ」のプロモーションとして展開する「ビューティフルジャパン2020」のプロジェクトで、47都道府県に関わる独自のコンテンツを作成してCMやデモ映像に活用、お客様の身近な風景を通じて、東京オリンピックに向けた需要創造の取り組みも順調です。

「顧客開拓」では、顧客の属性それぞれのニーズを捉え、シニアの方々に向けた「Jコンセプト」、30〜40代の方々に向けた「ふだんプレミアム」、20代の女性層に向けた「Panasonic Beauty」などを展開し、新たなお客様に向けアピールしております。また「需要創造」では新しいカテゴリーの商品に取り組んでおり、新しいところでは、体幹を鍛える健康機器の「コアトレチェア」をご提案しております。

チャネル別の政策では、LE社で地域専門店である「パナソニックショップ」様全店に対し、お店の発展と価値向上を図る「ショップバリュー政策」を2017年度から本格的にスタートさせます。高齢化していく地域のお客様の生活基盤のインフラをしっかりと支え、パナソニックショップの販売網を再強化して参ります。また地域専門店様にとって将来の中心顧客となり得る30〜40代ファミリー層の新しいお客様を開拓する取り組みも推進し、商品提案とともに増客につながる顧客接点を広げて参ります。

CE社が推進する量販店様への取り組みでは、あらためて店頭の売り場づくりを重視します。お客様と私どもの商品の出会いの場である店頭の展開にしっかりと注力したいと考えます。昨今は量販店様でリアルの売り場とネットとを融合させる取り組みが進んでいますから、ネットを通じてさまざまなお客様に深い情報を発信し、店頭ではより具体的な体感を味わっていただく。こうしたお客様への価値の伝達と、体感・経験をしていただくことを量販店様でのマーケティングの基本にして参ります。

── チャネルに合った効果的な政策が展開されますね。

吉清地域専門店様の強みは家まるごとのご提案や、日々のお困りごとへのきめ細かな対応ですが、今後若い年齢層のお客様にもそうしたニーズはあると考えます。ご年配の方と30〜40代の方が同居する二世帯、三世帯のご家庭にも有効だと思います。お客様の家の間取りから家電の状況などつぶさに把握しておられる専門店様ならではのご提案ができます。

これからはご高齢の単身世帯やご夫婦だけの世帯が圧倒的に増えていくというデータもあります。そんな中でも、本当の意味でお客様の家の中に入ってさまざまな暮らしのご提案ができるのは、街のでんきやさんならでは。その強みは大変大きいですね。

ショップバリュー政策では地域専門店様の承継にも注力していますが、お店が新しい世代に引き継がれるとともに、若い世代のお客様の取り込みにも期待しています。新しいお客様とともに承継も進めやすくなると思います。

一方でより幅広いお客様、数多くのお客様に情報発信ができる量販店様も重要な存在です。地域専門店様、量販店様それぞれの得意分野を生かし、お客様にアピール致します。パナソニックならではの商品を提供し、価値をわかっていただける売り場提案、接客提案で、チャネルに応じたマーケティングを強化して参ります。

丁寧な商品研修で
イベントのスキルを上げる

吉清和芳チャネルに応じた
マーケティングを強化し
価値が伝わる売り場づくりと
接客を提案する

── 体感を伴う店頭づくりがますます重要になります。

吉清以前は量販店様ではお客様に対峙する時間も短く、効率のいい接客が求められる傾向にありましたが、今はむしろじっくりと丁寧に接客することが重視されています。お客様に対する新しいご提案にはそうした姿勢が不可欠ですし、またそれができなければ需要創造も顧客開拓もままなりません。そのためには、お客様に体感を伴うアプローチ、店頭づくりが大変重要です。

私どもでは地域専門店様、量販店様それぞれを対象とした商品研修を推進しており、この1年間で相当の回数を実施していますが、ご参加店や人数も大きく伸びております。これまでなかなかお出でいただけなかった量販店様もご参加くださって、皆様の関心の高まりを感じます。

たとえばキッチン家電の実例では、見て、触って、食べての「MSTプロモーション」と呼ぶ活動を行っています。社員の方々自らが実際に商品に触れて料理づくりを体感していただく研修を経て、店頭のイベントで再現する取り組みです。まず私どもの社内で、全国各地域の支社からリーダーを集めて徹底的に実践教育を受けさせ、職場にフィードバックし「キッチン部」と呼ばれる研修メンバーを構成します。彼らがご販売店様に対して体感研修を丁寧に行う。炊飯器「おどり炊き」でご飯を炊き、オーブンレンジ「ビストロ」で料理をつくり、美味しさを味わっていただきます。こうして研修を受けたお店の方々は「キッチンマイスター」として、イベントもスムーズに実践されます。

地域専門店の合展会場でも体感型の場づくりが進化しております。地元の市役所やJAとのコラボレーションで銘柄米や地元の特産品をキッチン家電や200VのIHクッキングヒーターで調理して、実食していただくイベントなどを積極的に行っています。こういった体感型のアプローチを推進する取り組みが、これからの顧客接点マーケティングの基本になって参ります。体感型イベントをたくさんの商品で展開し、地域創生、顧客開拓、需要創造を推進しています。多くの体感で新しい需要をつくり、新しいお客様をつくる、2017年はこれをさらに進めたいと思います。

さらに2017年のテーマとして、「群マーケティング」を推進して参ります。お客様へのトータルな「憧れの生活」のご提案です。ここでも体感イベントを進め、複合的な店頭展開にチャレンジをしたい。キッチン家電、ビューティ家電、健康家電、AVでは4Kのビエラとディーガとシアターバー、サウンドジャンプリンクなど、さまざまなカテゴリーで強化していきたいと思います。

盛りだくさんの重点商材で
群マーケティングを推進

吉清和芳

── セット販売、複合提案では、店頭でのカテゴリーをまたいだ見せ方が難しい部分もあると思います。

吉清これまでは量販店様の店頭でそういうご提案は困難でしたが、昨今は法人様も非常に前向きに捉えてご協力くださっています。一方、地域専門店様はお客様一人ひとりを知り、それぞれに合ったご提案が強みですから、より積極的に推進したいと思います。

地域専門店様、量販店様、そして業態店様、私どもの関わるチャネルでそれぞれのお客様や商品に合わせ、新しい価値提案をしていきたいですね。どの業態のご販売店も強い問題意識を持って、自ら変化しようと努力しておられます。売上げの数字だけでなく、お客様のリピート率を高めるための施策など総合的な力の向上を図っておられる。そのご活動をバックアップして参りたいと思います。

── リフォームや住宅のソリューション提案も、さらに注目されるカテゴリーですね。

吉清2017年にいよいよ本格的に取り組む商材です。地域専門店様では「街のでんきやさんのリフォーム」として、お客様に寄り添う視点で、お家まるごとのご提案ができます。キッチン、バス、トイレなどのリフォームの分野はもちろん、太陽光発電システムと蓄電池、HEMSといったエネルギーマネジメントの分野にもさらに注力して参ります。

トイレやIHクッキングヒーターなどは街のでんきやさんのお得意商品ですが、キッチン、バスなど大型商材のリフォームの間口はまだ広くはありません。時間をかけて取り組む商材で、人手が取られる懸念もあるでしょう。当社としても万全のバックアップ体制で、お店全体のスムーズな運営をサポートして参ります。玄関や外壁などのカテゴリーも広げて、ノウハウに磨きをかけていきます。2017年度はぜひ、間口と奥行きをしっかりと広げていきたいと思います。

── テクニクスのお取り組みも楽しみです。

吉清 ターンテーブルのSL?1200Gが登場して、大変多くのお客様にご好評いただきました。テクニクスの展開では、専門の営業部隊が対応し、オーディオ専門店様、量販店様、地域専門店様にご協力いただいて試聴環境をもっておられるお店様でしっかりとお客様への体感訴求を進めております。各地の合展でも試聴の場が設けられるケースが増えています。お客様がお好きなレコードを持参されるなど楽しまれており、オーディオ熱が再び盛り上がるきっかけになればと期待しております。2017年度も丁寧に、しっかりと展開して参ります。

── 体感の場づくり、お客様づくり、市場創造の2017年ですね。

吉清2017年度は、10年後を見据えたマーケティングのスタートの年にも位置づけています。2018年3月にはパナソニックグループの100周年を迎えます。節目に相応しい新しい需要創造商品とマーケティングをご販売店様に提案し、ご商売を強力にサポートして参ります。2018年の平昌オリンピック、2020年の東京オリンピックに向けては、テレビの買い替え需要も動き出すものと思います。そこで「ビューティフルジャパン」の地域密着プロモーションを展開しつつ、地域専門店様、量販店様の拡販をサポートして参ります。

こうした取り組みの最大の目的は、何と言っても新しい需要を創り、新しいお客様を増やしていくこと。2017年もより一層、お取り引きいただいております流通の皆様と一緒に、お客様への新しい提案に取り組んでいきたいと思います。

◆PROFILE◆

吉清和芳氏 Kazuyoshi Kissei
1961年生まれ。1984年 松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社。2012年 AVCマーケティングジャパン本部 本部長に就任。2013年 パナソニックコンシューマーマーケティング株式会社 CE社 社長に就任。2016年 パナソニックコンシューマーマーケティング株式会社社長に就任、現在に至る。

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