勝村治司

魂をこめた音づくりを常に追求しながら
より多くのお客様へ感動をもたらす
エソテリック株式会社
代表取締役社長
勝村治司
Haruji Katsumura

セパレート型デジタルプレーヤーの高級モデル、プリメインアンプの新シリーズを投入、さらにネットワークプレーヤーも加わり、3つの製品軸が構築されたエソテリック。オーディオ銘機賞での受賞を弾みに、さらなる存在感を訴える。同社社長の勝村氏に今後 の意気込みを聞く。
インタビュアー/樫出浩雅 音元出版副社長、徳田ゆかり Senka21編集長 写真/柴田のりよし

プレーヤーとアンプの
強力ラインナップ展開

── オーディオ銘機賞で、製品特別大賞、開発特別大賞を始め、たくさんの製品が受賞されました。

勝村ありがとうございます。当社は来年30周年となりますが、節目の年に重要な賞を頂戴し、今後より一層のチャレンジをしながら進化し続けなくてはという思いです。いい部材を使いこなしてよりよい製品とする開発力、それをお客様に体験していだたく営業力を磨き、ご販売店様と一緒にまい進したいと思っています。

デジタルプレーヤーは29年前のエソテリック初号機P-1、D-1という2筐体のプレーヤーが源流です。3年前にはエソテリックの最高級モデルとして4筐体となるGrandiosoP1、D1を投入しましたが、この技術を受け継ぎ初号機同様の2筐体に収めたのが製品特別大賞を頂戴したP-02X、D-02Xです。

想定以上の販売実績を上げており、新しい商品に買い替え、それも一体型プレーヤーからセパレートの2筐体へとステップアップしてくださるエソテリックのユーザー様がそれだけいらっしゃるのは、大変ありがたいことと思っております。オーディオに情熱を持ったお客様がそれだけ数多くいらっしゃる。ご期待に応えられるよう一層努力をしなくてはと痛感します。

── プリメインアンプのFシリーズが開発特別大賞を受賞しました。昨年のセパレートアンプに続き、プリメインのラインナップも揃いましたね。

勝村エソテリックはプレーヤーのイメージが強いですが、優れたプレーヤーにふさわしいアンプを我々自身で開発しなければとの思いで、15 年ほど前から試行錯誤し取り組んで来ました。昨年セパレートのアンプでご評価いただき、今年は最高の一体型モデルに注力して参りました。

お客様が音楽をお聴きになる部屋の環境はさまざまで、スペースの制約にもお応えする必要があります。そのために一体型モデルの存在も重要で、セパレートに準じる位置づけでなく、独自の価値観で最高のものをつくろうという思いでした。 設計からすべて新規で起こし、プリメインアンプの最高峰としてF-03A、F-05、F-07を投入したのです。試聴会などで高い評価をいただいていますが、これからご販売店様と一緒にじっくりと取り組んで、より高いレベルでの音楽表現を訴求していきます。

── N-05が銀賞を受賞しましたが、ネットワークプレーヤーの展開も楽しみですね。

勝村ネットワークオーディオはかなり以前から重要視し、きちんとした音楽表現を目指して開発に着手してきました。パッケージソフトと聴き比べると弱い部分もあって、ハイレゾコンテンツの状況も見ながら慎重に取り組んでいたのです。今回ようやくこれならという表現に至り、N-05を投入し、おかげさまで海外を中心に大変好評をいただいています。

今後配信コンテンツの質がさらに良くなれば、ネットワークオーディオは近い将来必ず大きなマーケットになると見ております。エソテリックとしては、これまで注力してきたディスクプレーヤーとアンプにネットワークプレーヤーを加え、3つの軸でラインナップを強化していきたいと思っています。ネットワークプレーヤーでは当面、需要の高い海外が中心の展開になりそうです。さらにハイクラスなものが求められていきますから、お客様に感動をもたらす製品の開発を、しっかりやっていかなくてはと思っています。

── 海外展開の手応えはいかがですか。

勝村海外はアメリカ、ヨーロッパ、アジアともに売上げは順調に伸びており、国内のみならず世界に向けていい商品が出揃ったと思っています。我々の海外販売網は、ティアックを含めてしっかりしていますから立ち上がりが早く、ここ2〜3年で海外でのエソテリックの評価が高まり、いい状況になっています。将来的には、さらに伸ばしていければと思います。

最高峰の製品を展開し
お客様層拡大にもチャレンジ

勝村治司── ハイエンドとして、エソテリックブランドのアイデンティティをどう訴求しますか。

勝村エソテリックはオーディオの国内最高峰、並みいる競合ブランドの一段上を目指しています。価格的にも高めの設定ですが、我々が考え得る最高の商品をご提案しています。世界中には歴史ある素晴らしい製品はたくさんありますが、そんな中にあっても世界に向けて発信できる、逸品といわれるものをつくっていきたいのです。

我々はもともとボリュームを狙ったビジネスをしているわけではありません。ブランドを大切に、じっくりと取り組んで音楽の感動を皆様に味わっていただければと思っております。他とは迎合しない考え方です。「マスターサウンドワークス」を提唱してナチュラルな音づくりを目指し、そこに到達するためのノウハウをすべて導入する。そういうポリシーで魂を込めた音づくりを常に追求し、お客様に感動を与えるべく今後も努力して参りま す。

── 年末以降の展開も楽しみですね。

勝村おかげさまで今年度はほぼ計画通りの見通しで、来年以降の新製品の計画を進めています。市況は決してよくはありませんが、それを踏まえてお客様層を拡げていくことも考えていきたい。来年以降はそうした商品にも着手したいですね。

ユーザー層は比較的若く、40歳代の方が多くいらっしゃいますし、先日も20歳代の方が100万円以上の機器を購入してくださいました。そういう若い方々にエソテリックのファンになっていただき、少しずつ機器をグレードアップしながらさらなる感動を味わっていただきたいと考えます。

また、もっと注力したいのは女性層に対するアピールですね。以前にご販売店様と一緒にホテルのイベントに参加しました。ディナーを楽しみながらオーディオセットを聴いてもらうものでしたが、女性の方々を含めてかなりのお客様が集まってくださいました。そこで女性の方々からは、機器が重くて大きく、オーディオを楽しみたいけれども手を出しにくいとご指摘を受けました。軽くて音のいいオーディオというのは、超ハイエンドのカテゴリーでは難しいところがすが、今後考慮すべきテーマだと考えます。

低価格にシフトするのでなく、興味のある方をハイエンドオーディオに誘引できるよう、お店にも行きやすくなるような仕掛けをしていく。ティアックも含めグループ全体で考えていけたらと思います。

そして既存のお客様にご満足いただくことはやはり重要です。ラインナップを固めてモデルチェンジを適切なサイクルで行い、お客様を刺激して参ります。これからも進化しながら、エソテリックらしい商品をご提案していきたいと思っております。

◆PROFILE◆

勝村治司氏 Haruji Katsumura
1951年2月3日生まれ、東京出身。73年 ティアック(株)入社。90年 名古屋営業所長、94年 東京営業所長に就任。2000年 国内営業部長に就任。04年 エソテリック(株)取締役に就任、09年 同代表取締役社長に就任、現在に至る。

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