伊藤英晴

あらゆる音楽ソースの情報を余さず引き出す
最高の音質で再生する「モノ創り」を推進
アキュフェーズ株式会社
代表取締役社長
伊藤英晴
Hideharu Ito

ピュアオーディオ市場で高い存在感を示し続けるアキュフェーズ。強い信念に基づく確かな「モノ創り」とともに、販売店との強固な関係を築いて長期にわたりお客様の期待にしっかりと応え続ける。強力製品の受賞にあたり、伊藤社長のさらなる意気込みを聞く。
インタビュアー/徳田ゆかり Senka21編集長 写真/君嶋寛慶

独自のポリシーを貫き
市場の高い評価を獲得

── 今年で11年連続の「金賞」受賞です。

伊藤栄誉ある賞を頂戴し、大変光栄です。アキュフェーズは1972年の創業以来、高度な技術に裏打ちされた付加価値の高いオーディオ製品をつくり続けてきました。今日まで独自の経営姿勢やポリシーを貫けたことが皆様に評価され、大きな喜びと責任を感じると同時に、オーディオ業界発展のためますます邁進していく所存です。

受賞致しました「セパレート型SACD/CDプレーヤーDP-950/DC-950」は、2000年に発売したDP-100/DC-101以来、DP-800/DC-801、DP-900/DC-901と続いた高級デジタルオーディオのノウハウ全てを受け継ぎ、ハイエンドオーディオへの飽くなき挑戦と音へのこだわりを追求したものです。アキュフェーズ伝統の技に、回路・機構面とも先進のクオリティと最新技術を結集、SACD/CDやハイレゾ音源など、あらゆるデジタルソースの音楽情報を100%描き出し、より深い感動をお届けする最高峰モデルとして誕生しました。

トランスポートDP-950は重量級構造がさらに進化、自社開発のSACD/CDドライブで防振・制振性が限りなく向上、ディスクに刻まれたデジタル信号を高純度で引き出すことができます。電源部も強化され、DSDディスクの再生も可能で、さらにHS-LINKはVer.2に対応し、データとクロックを独立させた伝送が可能です。

デジタルプロセッサーDC-950は8系統のデジタル入力端子を装備、USB 入力は384kHz/32bit PCM、11.2896MHzDSDまで対応、HS-LINKはVer.2に対応して384kHz/32bitPCM、5.6448MHzDSDまで再生可能です。DACはESS社最新の高性能『ES9038PRO』を搭載、極めて高い変換精度とノイズの低減を高める独創的な「MDSD方式D/Aコンバーター」を構成しています。

弊社の決算月である9月の発売でしたが瞬く間に完売となり、前期の売り上げに大きく貢献してくれました。かなりの高額品にもかかわらず、国内はもとより海外でも非常に人気が高く、当面は生産に追われる状況が続きます。

── 御社の製品ラインナップは昨今のさまざまなメディアに対応しています。

伊藤アナログレコードやSACD/CDなどのパッケージメディア、FM放送、ハイレゾの音楽配信などのさまざまなソースメディアは全て重要で必須なものと考えます。今アナログレコードが人気ですが、昔に比べ、再生機器の性能が圧倒的に進化したことにより、元々レコードに入っていた素晴らしい音を余さず再生できるようになった結果でしょう。SACDソフトやハイレゾのソフトも同様で、再生機器の進化で、収録された深い音がもっと楽しく音楽性豊かに再生されます。オーディオ機器はそうしたメディアそれぞれの特性を活かし、お客様のご要望にお応えしていく必要があります。弊社はそのために、これからもあらゆる可能性に挑戦していきます。

── ご販売店やお客様に対する施策をお聞かせください。

伊藤高価な趣味製品であるハイエンドオーディオは、見て、聴いて、触っていただく訴求が必須です。お客様はお店で入念に情報交換をし、さまざまなノウハウを得て最高の音質で再生することを目指しておられます。こうしたご期待にお応えするためにも、確かな流通経路を堅持して製品をお届けし、サービスをしっかりと維持する必要があります。そこでご販売店に対しては、対面販売をお願いしています。そして新製品が発売になると、全国の主要なご販売店と一緒に試聴会を開催し、弊社の設計者が自ら講師となって、生の情報を正確にお客様にお伝えしておりご好評をいただいています。

また全国のご販売店を始め海外代理店からの強い要望があって、私どものオーディオに対する考え方や「モノ創り」へのこだわり、また歴史や経営方針、企業姿勢をあらためてご紹介しようと、今年の6月1日の創業記念日のタイミングでホームページをリニューアルしました。創業から40年以上が経ち、昔のアキュフェーズを知らないお客様も多くなりましたし、特に海外のお客様は日本からの情報が得にくい状況です。ホームページを通じてアキュフェーズとはこんな会社だったのかと再認識していただけるのではないかと思います。動画なども活用し、わかりやすい内容にしております。

次の時代へ向けて
飽くなき挑戦を

伊藤英晴── 今後の意気込みをお聞かせください。

伊藤今年で44周年となったアキュフェーズは、次の50周年、さらにその先に向け新たな飛躍を期して邁進します。設計や製造、販売において、今まで築いてきた独自の経営理念や企業ポリシーを貫き、アキュフェーズのブランドを強固にして参ります。

その原動力は、創業者が提唱した社是「科学技術を通して、人間性の向上につとめ、人類の発展に貢献する」と、基本理念「アキュフェーズを発展させていく力は、全社員の聡智を結集して《自らが感動する世界第一級の製品を製造し、正しく販売し、技術的にも、営業的にも業界の質的リーダーになる》という高揚した精神を持ち続けることである」。これらをしっかり守り、徹底した品質を追及し、高度な技術に裏打ちされた高付加価値を持った、お客様から信頼され心から満足していただける製品をつくり続けていくことです。

これまでのデフレの状況では、価値の追求より安価でも利益を出る低コスト策が追求されてきました。しかしこれからは、安全性や品質の高さに裏打ちされ、付加価値や趣向を重視した本物志向の製品やサービスがますます重視されます。作る側も売る側も、今までの考えを払拭する意識改革が必要でしょう。

弊社はこれまでと同様に、創業時の基本姿勢や経営理念を堅持しながら、長期的視点でアキュフェーズブランドを維持、発展させることに全力を注ぎます。弊社の株式は非公開、ほとんどが社内保有で株主優先の政策を打つ必要はありません。短期的な増収増益の追及より、内部体質の向上に力を注ぎ、なおかつ納税義務も果たせる決算となるよう頑張っていきます。

製品の性能や品質の維持向上はもちろん、適正な価格で良いものを市場にご提案できるようブランドの価値向上に努め、存在感や影響力を持つ企業であり続けたいと思います。何より重要なのは、お客様のご期待を裏切ることなく、お客様に信頼され心からご満足いただける製品をこれからも創り続け、ご販売店と一緒に歩んでいくことだと思っております。今後ともご販売店の皆様の絶大なるご協力とご支持を、よろしくお願い致します。

◆PROFILE◆

伊藤英晴氏 Hideharu Ito
1944年11月15日長野県生まれ。67年4月 トリオ(株)入社。73年4月 アキュフェーズ(株)入社、技術部、品質保証部、広報宣伝部などに従事。04年 取締役。09年 専務取締役。11年 代表取締役副社長。13年 代表取締役社長に就任、現在に至る。

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