池田 達史氏

多様化するお客様のライフスタイルに寄り添い
映像のある豊かな生活を提案する
セイコーエプソン株式会社
ビジュアルプロダクツ事業部
副事業部長(事業戦略・営業担当)
内藤 恵二郎 氏
Keijiro Naito

プロジェクター市場のシェアNo.1に甘んずることなく果敢な挑戦を続けるエプソン。2016年新商品では、ホームプロジェクターのある生活提案を訴求し、新規お客様層へ深く切り込む。新たな展開に向けて、内藤副事業部長が意気込みを語る。

映像の楽しみ方は転機を迎えている
2025年、さらにその先へ向けて
もっともっと柔軟に仕掛けを施していく

お客様ひとりひとりの
映像の楽しみ方に寄り添う

── 御社はこのほど、ホームプロジェクターの強力な新商品を発表されました。発表会では新商品をセッティングした部屋のイメージを展開したり、想定されるお客様像が具体的に提示されたりと随所に新しいご提案があって、御社の並々ならぬ意気込みを感じました。

内藤今回我々は「dreamio style」として、お客様ひとりひとりがそれぞれのスタイルで映像を楽しむことをご提案します。新商品も、そういったさまざまな映像の楽しみ方を実現するもののひとつであるということです。我々はプロジェクター商品を展開するにあたって、従来の愛好家の方々のご期待に応えるとともに、市場の裾野を拡大することを重視しています。プロジェクターと言えば映画ファン向けというイメージであって、多くのお客様にとって敷居の高いものであったかもしれません。しかし今回、映画ファンの方だけでなく、もっといろいろな方のライフスタイルや生活シーンの中での大画面映像の楽しみ方を提案して参ります。発表会ではそうした提案の一部を提示させていただきました。

新商品の開発にあたっては、プロジェクター導入を敬遠しておられる方に対するアプローチも強化し、多面的な調査を行いました。大きな母数の中で、大画面が欲しいとおっしゃる方はどれくらいおられるか。欲しいけれども興味がないという方は、なぜそう思われるか、細かい分析もしていきました。その結果をもとに、大きな画面の映像を楽しみたい方をグループ化し、分類させていただき、お客様やお客様の生活のイメージをより具体化していったのです。

当社の社員にプロジェクターを家庭に持ち帰る機会を増やし、セッティングや視聴を行うといった活動も広げています。実際に使ってみて気づくことは大きい。自らの体験で、ここはどうしても変えなくてはといった思いを強くし、お客様の要望にはぜひともお応えしなければならないことを実感して、商品づくりに反映させています。

── 新商品は映像のクオリティもさることながら、使い勝手もより向上しました。新しいお客様に対する思いの表れですね。

内藤今回の新商品は、従来からの大画面の愛好者に向け4KとHDRに対応したEH-TW8300とワイヤレスモデルの8300W。そして明るいリビングでも鮮やかな映像をお楽しみいただけるEH-TW6700/6700Wといった2モデル4機種を投入しました。TW8300は圧倒的な4K映像をホームシアターファンの皆様に身近に楽しんでいただきたい思いで、我々の技術の粋を尽くしつつも実売30万円台という価格を実現しています。

TW6700は、これまで大画面を体験されたことのない方に対しても、大画面の楽しさをご提供するべく知恵を絞ったものです。お客様がプロジェクターの導入に対して感じる障壁を払拭し、ご自宅にも取り入れられると感じていただけるような内容としました。プロジェクターを家庭に導入される際のお客様のお困りごとは何かを調べると、代表的な要素が3つ挙げられます。それは、スクリーンの設置、本体の置き場所の確保、そしてケーブルの取り回しです。特に新しいお客様にアピールしたいTW6700Wでは、3000lmの明るさと7万対1の高コントラストで、明るいリビング、しかもスクリーンなしでも高画質な映像を楽しめるものとしました。レンズシフトを搭載することで、本体の設置場所の自由度も高めています。

配線についても機器間のケーブル接続の必要のない完全ワイヤレスを実現し、つなぐものは電源ケーブルだけとしました。本体にはスピーカーも内蔵して映像信号を送るだけで画と音を楽しめます。さらにブルートゥースオーディオにも対応して、外付けのスピーカーへもワイヤレスで接続できるようにしました。TW8300については満を持して、4Kの信号にもワイヤレスでの対応を実現しています。

こうした商品をもとに、新たなお客様に強くアピールするべくカタログも刷新しました。より生活シーンをわかりやすく表現し、プロジェクターによってもたらされる価値に踏み込んでいます。難しい表現は減らして、簡単にお家に導入できるといった訴求を強調しました。カタログの大きさにもこだわり、従来のA4サイズから女性のバッグの中にも入れやすいA5サイズとしています。

2025年に在りたい姿へ
新たな一歩を踏み出す

内藤 恵二郎氏── 多くのお客様にプロジェクターでの体験を味わっていただきたいですね。

内藤感動の大画面体験と快適なビジュアルコミュニケーション環境をご提供する、というのが我々ビジュアルプロダクツ事業部の経営方針です。それを実現するのはマイクロディスプレイ技術やプロジェクション技術といった我々エプソンが有するコアテクノロジーを搭載した商品ですが、それ以前にまずどういった価値をお客様に提供するかが重要です。 お客様が感動の大画面を得るというのはどういうことか。どうすれば豊かな映像体験ができるか、そのために我々ができることは何か。新商品もそのように目的から手段を考える論法で企画されました。

お客様のし好はますます多様化しています。昨今はテレビを見る時間が減っている傾向にありますが、録画やインターネットを通じて視聴スタイルが多様化したということで、映像を見る時間そのものが減ったのではない。そんな多様化するスタイルに寄り添い、お困りごとを解決して、お客様の生活をより豊かにしたいと我々は思っています。お客様ひとりひとりが「私にとっての大画面環境はこうであると嬉しい」と思ってくださるようなものづくりを展開したいのです。そういう意味では、プロジェクターを提供することだけが私たちの最終目的ではないと思っています。

── かつて大画面といえばプロジェクターの独壇場でしたが、生活の中心にあるのはあくまでもテレビで、プロジェクターは「2WAYシアター」のように、“もうひとつの楽しみ方”を提案する存在でした。しかし今はテレビも生活の中に当たり前にあるとは限らない。映像を見ていないときは画面の存在を完全に無くせる、さらには大画面に限らずもっとアクティブな映像の楽しみ方が訴求できるプロジェクターの存在は、あらためて見直されますね。

内藤今年3月、当社は、エプソンの2025年に在りたい姿を描いた長期ビジョン「Epson 25 」を制定、発表しました。映像機器についても我々の事業部の若いメンバーを中心に、家庭や企業内などこれまでプロジェクターが活躍した領域から、そうでない領域までを対象とし、映像文化や我々が持つコアテクノロジーが生きるのはどんなところかを議論して参りました。すると、家庭の中でも映像を楽しむ場面はもっともっとあるのではないかという結論に至りました。映像を楽しむ代表的な手段はテレビですが、その使い方がある程度限定されるのに対して、我々はもっと違う手段でお客様価値をご提供できるのではないかと考えます。そのようにして、我々の次の在りたい姿が見えてきました。

2025年の外的環境、お客様の志向、そして我々を取り巻くいろいろな技術がどうなっているのかを予測し、お客様が望む映像のあるライフスタイルについて仮説を立てる。その中で、エプソンでなければ提供できない価値を突き詰めて参ります。そうして我々の次の方向性を定め、それをひとつひとつ実現する商品を開発しながら、お客様のライフスタイルを変えていきたいという思いです。

内藤 恵二郎氏これまでにとらわれない
新たな価値創造を

── エプソンでなければ提供できない価値、それはプロジェクターとは限らないということですか。

内藤そこは重要なポイントですね。大画面だけでなく、エプソンの技術でもっと違う映像環境がご提供できるのではないかと考えます。画面の形は四角を想定しがちですが、そこにこだわる必要もないですね。光の表現によっていろいろな情報や環境の変化を伝え、コミュニケーションや感動体験を提供できるのが、私たちの次の変化と考えます。

もっともっと柔軟に、お客様の生活を豊かにできるような仕掛けをしたいと思っています。プロジェクターとはまったく違うカテゴリーに見えるヘッドマウントディスプレイも含め、どこでも、またはどんな姿勢、どんな活動の中でも映像が楽しめる、といった考え方ができますね。話題のVRやARなどもこの範疇に入ってくるかと思います。映像の楽しみ方は、今の時点でも非常に多様化しています。コンテンツのあり方も変わって来ており、今は大きな転換期だと思います。今回発表しました新商品は、我々が大きく変わっていく2025年を見据えた、第一歩とも言えるでしょう。

── プロジェクター、そして映像体験の新たな可能性の追求ですね。

内藤我々は今回、「dreamio style」に端を発し、新しいお客様の掘り起こし、新提案をしていこうとすべてを見直しました。ホームプロジェクターの市場で当社は8割近いシェアを頂戴していますが、今後さらに市場を拡大するためには、今までプロジェクターを敬遠してきたようなお客様ももっと取り込んでいかなくてはという強い思いがあります。ホームシアターのスタイルに捉われない提案で、よりいろいろな方に気軽にプロジェクターを楽しんでいただきたいと思います。

私は1989年に発足した映像機器事業部で翌年プロジェクター部門の新規採用になり、ずっと映像機器にかかわってきました。その過程で、リアプロジェクションテレビも担当し、苦労もしましたが、当社の中でもっともコンシューマーに向いた商品に携われる貴重な機会を得て、お客様視点やライフスタイルの考え方を勉強させていただけたと思っています。この経験を糧にしながら、これからの事業を伸ばしていきたい。

映像機器事業部は25年間拡大成長してきましたが、次の25年、さらに50年をいかに展開していくか。未来を見据えた視点で仕事にまい進していきたいと思っています。まずは新商品について、これから年末にかけて販売促進も行って参ります。「dreamio style」の傘のもと、より多くのお客様に映像体験をご提供できるよう、量販法人様、オーディオ専門店様、あるいはウェブで、多面的にお客様と接しながら販売を拡大していきたいと考えます。ぜひご期待ください。

◆PROFILE◆

内藤 恵二郎氏 Keijiro Naito
長野県出身。1990年4月 セイコーエプソン(株)入社。2003年4月 映像機器事業部 RP企画営業グループ課長(リアプロジェクションTV)。2013年10月 ビジュアルプロダクツ事業部 VP事業戦略推進部 部長。2016年4月 ビジュアルプロダクツ事業部 副事業部長 兼 VP事業戦略推進部 部長。

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