巻頭言

高付加価値の時代へ

和田光征
WADA KOHSEI

2016年のスタートにあたり、本年のテーマとして「あらたなはじまり」を掲げた。家電業界においてはネット通販を始め、単なる低価格志向からの脱却、高価値志向が高まるのではないだろうか。小社で言えば、ファイル・ウェブを核とする全媒体連動の「サンフラワーマーケティング」が真に定着することとなろう。

ネットは最安値から物を探す志向から、価値志向へと変容する様相がすでに見えている。そのことで、個人個人にとっての値ごろ感がはっきりとしてくるだろう。また個人の価値意識は商品そのものに対してばかりではなく、商品の入手の仕方、つまり手元に届けられたり受け取りに行ったりといったいくつかの方法を選べることも価値となるのではないか。

こんな例があった。ネットのゴルフ予約サイトでも安値志向が高まり、表示された最安値に合わせて、ゴルフ場は信じられないような値段をつけてくる。そのことで、単に安くゴルフができることだけが優先され、そのコースが本来もつ価値は問題の外となってしまう。私は自らのホームコースもそんな状況になっていたことを問題視し、ゴルフ場の会議で責任者に主張した。

例えば、都心からのアクセスが1時間余、コースは林間でフラット、さらに母体が有名企業、そうであれば必ず高い価値とそれに見合った価格を訴求できるはずで、しかも多くの方がその価格に納得できるはずである。私のそうした主張は正しかったようで、そのゴルフ場は昨年、入場者数が運営開始以来の記録となったそうだ。

ゴルフ人口の減少も問題視されているが、単なるデフレ志向のゴルフ場は撤退を余儀なくされるだろう。どんな状況であっても「おもてなし」の心で対応できるゆとりがないとお客様相手の商売は成り立たないし、高い価値も訴求できない。

振り返ると2002年、大分県の不便な山村出身の私がファイル・ウェブを立ち上げた際、ネット販売をテーマとして「わが家に三越百貨店がやってきた」といろいろな場所で話をした。商品には、@物流もアフターフォローも必要ないもの、A物流は必要だがアフターフォローはいらないもの、B物流もアフターフォローも必要とされるもの、の3つの原則があるとした。例を挙げると、@は金融商品や配信コンテンツなど、Aは地域物産品や書籍など、Bは家電などのハード類などであると主張した。

当時は大手メーカーの会議でも通販の問題が議論されており、なかなか結論が得られないようだったが、この3つの原則によることで、それぞれが別の次元に分けて議論され、会議がスムーズに進行するようになったなどという声を頂いたものだ。あれから14年を経て、新たな価値における値ごろ感が求められる今、また新たな段階が始まるという思いである。

そうした環境を踏まえ、ファイル・ウェブは今、月間100万人強が集結するサイトに成長した。ウェブとリアルの真の融合を現実的な形で推進し、オーディオビジュアルの価値を創造していきたい。

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