本多健二氏

売り場誘導の仕掛けや体験機会創造で
高付加価値戦略を力強く推進
ソニーマーケティング(株)
執行役員常務
本多健二氏
Kenji Honda

ハイレゾ対応、Android TV機能など、4Kテレビの新たな魅力を打ち出したソニー。市場活性化への鍵を握るこれらの付加価値を体験する場、そこへ誘導する仕掛けにもさらに力を込める。4Kテレビ、ハイレゾなど市場創造を牽引するソニーの果敢な取り組みを本多健二氏に聞く。

 

さらなる技術の進化が
感動価値をもっと高める

── 審査委員から高い評価を獲得した「KJ-75X9400C」が批評家大賞を受賞されました。

本多これまでにない臨場感を生みだす4Kブラビアの最新モデルを選出いただき、大変うれしく思います。4Kテレビ普及元年と捉えた昨年は、一気にラインナップを拡充し、お客様からの高い支持をいただきました。今年はいよいよ4K放送やコンテンツの配信も始まり、圧縮率の違いなど4Kコンテンツも多様化してきますので、どのようなコンテンツであっても映像をキレイに見ていただくことを主眼において開発を行った製品です。さらに映像だけでなく、これからの高音質化の進展を見越してハイレゾ対応としています。

── 4Kテレビの普及が高付加価値化の流れを牽引しています。

本多ほんの数年前まで、多くのお客様が我が家には大きすぎると思っていた55V型クラスのテレビが、省スペース化やお求めやすい価格帯になってきたことを背景に、今では抵抗感なく購入いただける環境になってきています。人間の欲求の究極は、見たままの映像を映せること、聴いたままの音を出せることです。4Kテレビの世界では、技術の進化でさらなる大画面化も、ハイレゾによる高音質化も格段に向上しています。私たちの感動価値もどんどん上がっていくと思いますし、市場はこれからまだまだ伸びていくと確信しています。

── テレビでYoutubeを楽しまれる方も増えてきましたが、使い勝手の面から「Android TV」機能を新搭載されました。

本多テレビがネットワークにつながることで、これまでになかった新しい楽しみ方ができるようになりました。Youtubeをはじめとしたネットワークを介した動画コンテンツのニーズはどんどん高まっています。そんな中で従来のテレビ放送やネット動画など、たくさんのコンテンツの中からどれだけ簡単に早く、見たいものを探せるかがとても重要になってきますが、「Android TV 機能」はこの点で大変優れています。加えて、ハードウェアの性能はぐんぐん上がり、テレビでもサクサクとスマホのような感覚で使用できるようになり、従来の操作性やスピードに関する不満は大幅に改善されたと思います。

ソニーのテレビをお買い求めいただいた3割強のお客様がネットワークに接続されているという調査結果もあります。環境は整ってきていますので、映像の美しさや音の良さといったテレビ本来の機能とともに、新搭載のAndroid TV機能で、さらに広がる新しいテレビの楽しみ方を同時に訴求して参ります。

── そして、ハイレゾをテレビにも搭載されました。

本多「ハイレゾのコンテンツがないではないか」とよく指摘されますが、今、急速な勢いで増加しています。現在人気を集めるウォークマンをはじめとしたオーディオのハイレゾ機器では、これらハイレゾのコンテンツはもちろん、多くのお客様は「DSEE HX」というプロセッサーでCDなどの音源をハイレゾ相当の音質にアップコンバートして楽しまれています。皆さんその音質に大変びっくりされます。

しかし、ヘッドホンやウォークマンだけがハイレゾの楽しみ方ではありません。ハイレゾの世界に目覚めると、家中の音をハイレゾにしたくなる。テレビもそのひとつなのです。そこで今回、一歩進んでテレビでも高音質を体験できるようハイレゾの機能を搭載させていただきました。他にもHT-ST9のような薄型のシアターバーもハイレゾ対応としました。4K画質のテレビとハイレゾの音質の組み合わせをどんどん推奨して参ります。

店頭への誘導を仕掛ける
WEBコンテンツを展開

本多健二氏── ハイレゾを追い風に、オーディオ市場では御社がリードされるヘッドホンや関連商品が依然好調ですね。

本多近年、楽曲を圧縮してたくさん持ち歩ける、ストリーミングでいつでも聴けるといった、手軽さや便利さが優先される一方、いい音で聴くことが後回しにされる傾向がありました。ところがハイレゾの音を一度体験されると、皆さん「こんなに違うのか」と目を丸くされます。

ハイレゾは、ウォークマンから広がりはじめ、ヘッドホンやポータブルアンプなど周辺機器の動きも大きくなってきています。特にヘッドホンは、1万円以上の商品の金額構成比が実に4割近くもあり、購入されているのは若い人が中心です。いい音を聴く喜びや充足感が確実に芽生えていると思います。

面白い調査データがあるのですが、ハイレゾウォークマンを購入された約5割の方が、すぐに他のハイレゾ機器を買い足されているのです。いい音をきっかけに、次の購買動機に火がつくのではないでしょうか。そして、この流れをどう後押ししていけるかが大切なテーマで、さきほどお話しした通り、テレビやシアターシステム、ワイヤレススピーカーなど、身近なオーディオ機器をハイレゾ対応にしたくなった時にそれらが一緒に店頭で演出されていることが重要です。これから発展していくハイレゾの世界観を特約店の皆さまとともにアピールしていきたいと思います。

── 4Kもハイレゾも、一層の理解を進める体験の場がますます重要になりますね。

本多4Kテレビと言っても、やはりまだ知らない人が大勢いますし、知っていても、まだ早いから要らないと考える人も少なくありません。ところがこの2年の取り組みから実感したのは、店頭で4Kテレビの映像を実際にご覧になると、そうしたお客様の気持ちが一気に4Kに傾いていくことです。また、テレビを買われる方は、事前にWEBサイトで色々な情報を調べて来店されるケースが増え、特に大型テレビではその傾向が強まっています。そこへ、どのように4Kテレビの価値を伝えられるかが一つの鍵になると考えています。

そこで、従来の2Kと4Kの比較視聴の取り組みに加え、今年はWEBを使った仕掛けを用意しました。「4Kのコンテンツで私を見てもらうとこんなにきれいに見られます。是非、店頭で」と北川景子さんが語りかけるWEBコンテンツで、それならば買う前に一度4Kテレビを見てみるかと店頭へ足を運んでいただくきっかけとなるのではないかと思います。すると、それを受けたコンテンツが流れていて、髪の精細感や衣装の色鮮やかさをはじめ4Kブラビアの魅力が実感できるという内容です。弊社のWEBサイトをはじめ、店頭での露出度を高めて参ります。

── 今までになかった面白い仕掛けですね。

本多Android TV 機能やハイレゾも同様で、高付加価製品の訴求では店頭での体感や体験が大変重要になります。製品の価値に実際に触れていただく店頭とそこにお客様を来ていただくための仕掛けをどこまで実践できるか。さらに注力していきたいと思います。

◆PROFILE◆

本多健二氏 Kenji Honda
1960年7月15日生まれ、神奈川県出身。1983年4月 ソニー(株)入社。2011年4月 ソニーマーケティング(株)ホームエンタテインメントプロダクツマーケティング部統括部長、2015年4月 執行役員常務に就任、現在に至る

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