鈴村文徳氏

新しい世界の提示は、
メーカーとしての使命
新提案にどんどんチャレンジしていく
エプソン販売株式会社
取締役 販売推進本部長
鈴村文徳氏
Fuminori Suzumura

プリンター事業を礎に、市場で圧倒的なシェアを誇るプロジェクターや新提案のウェアラブル商品など、さまざまな展開に着手するエプソン。エプソン販売で新たに販売推進本部長に就任した鈴村氏に、販売促進、市場創造の大きな意気込みを聞く。

 

体感を促す場づくりは腕の見せ所
刺激を与え、マーケットを広げていく

「スマートグラス」で
市場拡大を図る

── 鈴村本部長は本誌に初めてのご登場です。ご経歴を紹介いただけますか。

鈴村私は1990年にエプソン販売に入社して以来、ずっとマーケティングの業務に携わってきました。販売推進本部に所属し、インクジェットプリンターのマーケティングを長年手がけてきたのです。そのうちの大半の時間はコンシューマー向けの商品のインクジェットプリンター一筋、なかでも「カラリオ」に長く携わってきました。

そうした中で、エンドユーザーの方々やチャネルの方々、特に家電量販店様とのお付き合いをさせていただきました。この7月から現職を拝命し、新たに映像系の製品も守備範囲に加わりましたので、家電量販店様やホームシアターの専門店様など、積極的にお付き合いをさせていただく所存です。

── 映像系の商品として、新たなカテゴリーである「スマートグラス」が注目されています。

鈴村 2011年11月にMOVERIO BT-100という商品を発売しました。これは、エプソンがこれまで培ってきた光学技術をはじめとする技術を総結集したもので、「ヘッドマウントディスプレイ」のコンセプトで展開致しました。映像を中心としたさまざまなコンテンツを場所や時間にしばられず自由に楽しむといった、ディスプレイの新たな価値を提案したものです。当時装着するディスプレイはすでにいくつか存在していましたが、当社の商品はシースルータイプであり、映像を見ながら周囲の状況も感知できることが他にはない大きな特徴でした。

このシースルータイプの装着ディスプレイ第2弾となるのが「スマートグラス」で、先日BT-200という商品を発売致しました。BT-100と比較してサイズをぐっと小型化し、重さも1/3ほどとしてより装着感を高めています。そして接続インターフェースの部分では、ミラキャストの方式でワイヤレスでのHDMI接続を可能にしたアダプターを用意し、これを同梱したBT-200AVというモデルも商品構成に加えています。BDレコーダーからの接続も可能ですし、いろいろな映像のソースをより手軽に楽しんでいただくことができるようになりました。

BT-200、BT-200AVともにコントローラーが新たにアンドロイドのアプリに対応したことも大きな特徴です。スマートフォンやタブレットのWEBコンテンツや写真、動画などを楽しめる情報端末として、親しみやすいインターフェースをご提供しています。そういう意味でもBT-200は、昨今特に注目されている“ウェアラブル端末”としての要素を強く訴求していきたいと考えます。大画面を手軽に楽しめる映像機器としての訴求はもとより、情報端末としての用途では特に使い方の幅が拡がります。シースルー画面を活かして、室内のみならず電車などでの移動中にも携帯できる端末としてお使いいただけるでしょう。

こうした考え方でビジネス用途にも積極的にご提案したいと考えております。装着して図面などを確認しながらハンズフリーで実作業に当たるといったような用途にも活用いただけます。さまざまな用途に向けてご提案できる、そこをしっかりと強調し、強みを活かして市場拡大を目指して参ります。

ウェアラブルの展開では
売上げ100億円を目指す

── ウェアラブル端末として、昨今さまざまな商品提案をされていますね。

鈴村エプソンではこれまで、「プリンターのエプソン」というイメージが強く出ていたと思いますが、今年度はより幅広い価値提供を目指して、グループ全体で「プリンターだけでないエプソン」というコミュニケーション活動を開始しております。ウェアラブル端末も新たな価値提供のひとつで、このスマートグラスのほかにゴルフスイングを解析する「M-Tracer」、GPS機能でランニングデータを計測する「Wristable GPS」、新感覚の腕時計「smart canvas」といった商品を展開しています。

エプソンではこうしたウェアラブル端末につきまして、5年後に100億円の事業にする目標を掲げています。プロジェクターを含め、これからのエプソンを担う商品を育てるといった意気込みの表れなのです。このようなものは生活を豊かに、楽しくする用途を訴求していきたいと考えます。それぞれの連携も含め、モノとモノを組み合わせたご提案でさらなる市場の拡がりも期待できると思います。そうしたところを追求し、お客様価値を広げていくのが我々の役割だと思っております。

── ウェアラブル商品はどういったチャネルで展開しているのでしょうか。

鈴村今の時点では家電量販店様でのお取り扱いが中心で、あとはネット通販と自社ダイレクト販売サイトです。スマートグラスで今後期待できる業務用途については、量販店様に加えてシステムインテグレータのチャネルなどでもお取り扱いいただけると考えています。

おかげさまで家電量販店様では、スマートグラスについて非常にポジティブなご評価をいただいています。前モデルに対して商品としての完成度が上がって、具体的な使用シーン、使用してのメリットがお客様にわかりやすくお伝えできるものになったということです。現在店頭では、映像機器のコーナーに黒物商品としてしっかり訴求していただいております。初代機はなかなかそうした展開ができなかったのですが、今回はテレビコーナーの一角で、映像商品の専門販売員の方に接客していただいている状況です。商品の特徴を現状でもっともわかりやすく訴求できる方法として有効と考えています。

またネット販売などではGPSウォッチやカメラなどと一緒に“ウェアラブルコーナー”といった表現での商品展開が始まっています。こうした流れは早晩、量販店様の店頭にも登場してくるものと考えられ、期待したいと思います。

── 新たな価値提案、市場創造のためには既存の売り場展開だけでなく、新しいアプローチは必要ですね。

鈴村今はまだイノベーター層の方が中心となって購入されている状況ですが、今後は裾野の拡大を図っていろいろな方へのアプローチが必要になってきますし、そういう際に量販店様の店頭展開が重視されます。これによって生活やスタイルがどのように変わるか、どんなメリットがあるか、わかりやすく示す提案が必要だと思っています。

そういう中で実際に商品を装着していただき、目の前の大画面を見ていただくような、実感を伴う体験を促進することは非常に重要だと思います。お客様が実際に商品を体感できる場としては、今のところ量販店様の店頭が最大のポイントです。それ以外のイベント展開などについてはこれから考えていかなくてはなりません。それはこの商品に限らず、ホームシアタープロジェクターなどでも同様で、まだまだ知られていない、伸びしろの大きい存在だと思っています。

さらなる可能性が広がる
プロジェクターの展開

鈴村氏── ホームシアタープロジェクターについても、今年はさらに期待が高まりますね。

鈴村今年は秋以降に新たなホームシアタープロジェクターの発表が控えていますが、お客様からは当然、もっときれいな画質、もっと使いやすい製品といったご要望があり、ここにお応えできるものをご提案する予定です。おかげさまで、プロジェクターにおいて我々は高いシェアを頂戴しております。ホームシアター商品もしっかりとラインナップを組んでおり、エントリーからハイクラスまでそれぞれのお客様のニーズに合った商品をご提供するべく、今後もしっかりと取り組んで参ります。

その中でも、裾野を広げていくところは特に重要だと考えます。ホームシアタープロジェクターは今のままのマーケットサイズで展開していっても、ある程度のシェアを頂戴している状況としては販売が伸長することはありません。やはり市場拡大に注力していかなくてはなりません。エプソンでは昨年、10万円を切る価格帯のところにフルHDプロジェクターEH-TW5200を投入しました。この手応えが非常に大きく、市場そのものが1.6倍に拡大しています。こうした事例を見ても、まだまだやりようはある。

まだご存じないお客様に体感していただくということは、難しいことではありますが、必ずやっていかなければならないことだと思っています。見ていただき体感を促すリアルの場づくりをいかに効率よくやっていくか、それこそが我々マーケティングの腕の見せ所だと思います。今後も市場に刺激を与えて、マーケットを広げる努力をしていきたいと思います。

── これからの意気込みをお聞かせください。

鈴村プロジェクターに関しては、今絶好調であると認識しています。プリンターに携わってきた立場から見ると、毎月売上げ達成、売上げ拡大でうらやましい思いでした。エプソンとしてもこの勢いを維持し、市場そのものが伸びている中で、我々の商品がしっかりとお客様のニーズに合致し、守りに入ることなくそこを追求する手を緩めないようやって参りたい。

その一方で、これまでやってきたことの延長線上での展開では何も発展しませんから、新しいことにもどんどんチャレンジして参ります。お客様に新しい世界をお見せするのは、メーカーとしての使命。そういう意味でも、スマートグラスを始めとするウェアラブル端末の訴求もしっかりやって参ります。またもちろんインクジェットプリンターについても、従来以上に注力して参ります。

エプソンは今、新しい商品を出し、新しいサービスを出したというタイミング。そこを束ねてしっかり訴求していきたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

◆PROFILE◆

鈴村文徳氏 Fuminori Suzumura
岐阜県出身。1990年4月 エプソン販売(株)入社。2009年4月 プロダクトマーケティング部長。2013年4月 BP MD部長。2014年6月 取締役。2014年7月 取締役 販売推進本部長。

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