細尾忠弘氏

文化を変え、文化を創り、文化を売る
家電で生活が変わると気づいていただく
シャープ株式会社 国内営業本部 副本部長 兼
シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社
代表取締役社長
細尾忠弘氏
Tadahiro Hosoo

茶葉を味わう「ヘルシオお茶プレッソ」やコードレスサイクロン掃除機「FREED」、「AQUOS 4Kレコーダー」など、一歩踏み込んだ商品提案を連打するシャープ。販売の前線を司るシャープエレクトロニクスマーケティングの新社長に就任した細尾氏に、2014年度の取り組みと意気込みを聞く。

 

変化していく生活スタイルを見据え
生活者目線のニーズを商品に結びつける

生活がどう変わるか
ということ

── 細尾社長は4月に現職にご就任され、本誌に初めてご登場いただきました。

細尾私はシャープに入社して以来、どちらかというと事業部での職歴が長く、特に健康・環境事業本部で冷蔵、調理、空調、プラズマクラスターなどの新製品のマーケティング、プロモーションに関わってきました。モノ作りについて細かく見ることができましたし、お客様目線での情報発信も経験できたと実感しています。2005年からシャープエレクトロニクスマーケティング株式会社でコンシューマー商品の販売を担当しておりますが、やはり、お客様目線での生活感のある商品訴求を重視しております。

── 2014年度は消費税増税に始まり、さまざまな分野でその影響を払拭する魅力的な商品が出て参りました。国内営業の取り組みをお聞かせください。

細尾最近のお客様の消費動向は非常に賢くメリハリがあるので、私達は「スマート消費」と表現しています。家電製品が充分に普及していない時代は価格や機能が重視されていましたが、今やほとんどの製品が家庭に普及していますから、お客様自身も気付かれていない価値を提案していく必要があります。つまり、お客様のご不満やご要望にお応えする商品提案です。

「スマート消費」の動向として、4つのキーワードがあります。1つめは「健康寿命」。国民の約25%が65歳以上と言われており、日常的な介護を必要とせず、自立した楽しい生活ができることを重視する考えが高まっています。そのために大事なことは、2つめのキーワードである「安全・安心」。日常の暮らしを不安やストレスなく過ごしていただくためにどのような貢献ができるのかが問われています。

3つめは「便利・時短・簡単」。お客様は快適で楽しい生活をもたらし、家事などの手間を減らしてくれる家電製品を求められています。技術の進化や性能の向上により簡単操作へのニーズも一段と高まってきています。そして4つめが「省エネ」。電気料金の値上げ、消費税アップによる支出の増加に伴い、家電製品の省エネ性能への期待が高まっております。

これら4つのキーワードに沿って、既存商品をさらに改善し、新しい使い方などを含めて提案していくことで、お客様の生活をサポートしていくことが私達の大きなテーマです。今よりもっと快適で便利な生活を実現し、家事がもっと楽しくなるような「生活提案」を通して商品を訴求していきます。

昭和30年〜40年代に家電製品の基礎はできました。それ以前にはなかったものばかりです。お客様にとって洗濯機は自分の代わりに洗濯してくれるもの、冷蔵庫は食品などを冷やして保管してくれるものとして登場し、従来の生活を変える新しい価値を提供してくれました。しかし、使い慣れてくると家電製品の価値は相対的に低下し、メーカーとしての訴求力や提案力も弱くなってしまったと反省しています。ここでもう一度お客様に、家電製品で生活が変わることに気づいていただくことに注力していきたい。つまり原点回帰です。

私達は「文化を変える」「文化を創る」「文化を売る」という考え方で、この夏期商戦に取り組んでいます。ものを売る発想だけでは、お客様に「気づき」を与えることはできません。すべてのお客様に1日24時間を有意義に使っていただこうという提案をしています。家電製品で家事労働が短縮された分、自分のための時間が生まれ、生活をもっと有意義にしていただくことができます。それは大きな社会貢献にもつながるという考えで取り組んでいます。本来、私達は商品を通じてお客様の生活をサポートし、快適な生活を実現させていくことが使命です。しかし、それが少しおろそかになっていたという反省があります。これから、ぜひお客様の「気づき」を拡げていきたいと考えています。

お客様目線でのものづくり
実感を呼ぶ販促活動を

── ヘルシオお茶プレッソやコードレスサイクロン掃除機など、新たな価値を提案する商品が次々生まれています。お客様のニーズや要望を見つける方策をお聞かせください。

細尾まずお客様と接するご販売店様と一体となり、購入動機などを分析する組織として、販売会社の中に「リ・ライフ事業企画部」を新設しました。生活者目線で掘り下げたマーケティング活動を展開し、そこで収集した情報を事業部にフィードバックし、ものづくりに活かしていく仕組みです。

従来は、技術優先で商品を作ってきた結果、営業力が相対的に弱まった部分もあるかもしれません。ものづくりはややもすると開発者目線になりがちですが、あらためて生活者目線にこだわりたい。今変わりつつある、またすでに変わっているお客様の生活や文化をきちんと見据え、それらを具体的に商品に反映させていくことを目的にしています。

お客様目線でのマーケティングが弱くなっていた大きな要因は、減点主義的な要素が強かったことに加え、従業員のチャレンジ精神が希薄になったことだと反省しています。今後は、営業として、加点主義を採り入れるとともに若い社員が積極的にチャレンジできる環境を作っていきます。チャレンジが100%成功することはありませんが、失敗を責めることなく、皆で反省して翌日にはさらにチャレンジしていける社風を構築していきます。これも原点回帰です。それを従業員全員の目線で行動できれば新しい発見があり、従来発想ではない視点での提案活動もできると考えています。

細尾氏── 販売促進の方策についてお聞かせください。

細尾昨年は住宅の新築ブームとなり、今年はリフォームやリノベーションが注目され、家自体がますます進化しています。実は家電製品も著しく進化していますが、商品の提案力が低下したことで進化のポイントをきちんとお伝えできていませんでした。

先ほど「文化を変える」「文化を創る」「文化を売る」と申し上げましたが、進化した家電製品がお客様の生活の中でどのようにサポート、貢献できるかを具体的に実感していただけるような提案活動をしていかなければなりません。理屈でなく、お客様が見て触って、肌身で実感して納得いただけること。これらは言葉以上に大事なことです。まず営業マン自身が体験し、言葉では表現できない感動を全国のご販売店様と共有していくことが第一歩です。

その具体策が夏期商戦の「起承転結」販促です。お客様に「お気づき頂き(気)」、「生活スタイルを見せて提案(承=Show)」、「自店で(転機に=転)」、「決めていただく(結)」という考え方で、お客様との出合いの場として体験型の演出を行う活動です。全国16箇所で5月からキャラバンを展開し、ご販売店様も営業マンも同じお客様目線で体験、確認していただき実売アップを目指しています。

ご販売店様に対する取り組みの中で、地域密着の電気店様との連携は非常に重要と考えます。ご高齢のお客様が増えている中、お客様のご自宅を1軒1軒訪問し、電気に関する相談を地道に行う「総点検活動」を促進しています。地域に密着している強みを活かした提案活動です。

当社は地域電気店様の活動状況や成功事例などの情報を相互に共有し、需要創造や顧客創造を目指す活動を展開しています。北海道から九州まで全国各地域の販売事例や提案方法などを共有し、販促の強化につなげています。また量販店様を含め、M・S・T−N・K作戦(見て頂き、触って頂き、体験頂き、納得頂き、買って頂く)を通じて商品の価値をしっかりご提案していきます。こうした活動を通じて、お客様の不満やニーズをしっかり吸い上げることが重要です。売るための情報も大事ですが、そればかりに固執してはお客様に満足していただけません。

夢があり、楽しい生活がある
新しい文化を提案していく

── 4Kレコーダーもいよいよ離陸します。

細尾話題の4Kは6月2日に試験放送がスタートしましたが、4K映像を見たいというご要望にお応えするため、4Kレコーダーをいち早くご提案しました。アンテナなど受信環境が整っている全国の主要な店舗を対象に、4K試験放送をライブで視聴体験していただけるよう取り組んでいます。また秋口にはネット配信で4Kコンテンツも視聴できるようになります。テレビの楽しみ方がもっと広がり、お客様の満足度が上がります。

当社は、4K対応AQUOSに加え、2Kながら4K相当の高精細表示が可能なAQUOSクアトロンプロもラインナップしています。これらを夏期商戦から年末に向けて訴求し、一気に需要を高めます。今こそしっかり、テレビ視聴の新しい文化を提案したいと考えています。

── 今後の意気込みをお聞かせください。

細尾先ほどからの繰り返しになりますが、新製品によって生活がどう豊かになるかを正しくきちんと提案していくことが大事です。それを私達は「文化を変える」「文化を創る」「文化を売る」と表現しています。夏期商戦を皮切りに、秋から年末に向けて徹底的にやっていきたい。

昨今は人と人、人と家族、人と地域、人と社会の絆、つながりが大切な時代だと言われています。たとえばキッチンがオープン型になりましたが、それは人と家族のコミュニケーション強化という意図がベースにあると思います。そんなキッチンに相応しい商品を提案していきたいと考えています。

このようなライフスタイルの変化に私達自身がいち早く気付いて、もっと楽しい文化を提案できるよう努力していきます。そのためにも営業力を強化し、元気のある商品、夢のある商品をどんどん提案していきます。そしてこの14年度をしっかり戦っていきます。「苟に日に新たにせば、日日に新たに、又日に新たなり」を肝に銘じ、惰性に陥らないよう、従業員が一丸となって精進していきたいと考えています。

◆PROFILE◆

細尾忠弘氏 Tadahiro Hosoo
1973年シャープ(株)入社。2011年シャープエレクトロニクスマーケティング(SEMC)常務取締役。2012年専務取締役。2014年4月にシャープ(株)国内営業本部副本部長兼SEMC代表取締役社長に就任。

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