仲井 一雄氏

お客様に商品を
きちんと体験していただくことで、
オーディオ市場は
活性化できると確信する
ハーマンインターナショナル株式会社
代表取締役社長
CBUジャパン プレジデント
仲井 一雄氏
Kazuo Nakai

ピュアオーディオの人気ブランドJBLなど数々の強力なブランドを展開するハーマンインターナショナル。同社で昨年新たに社長に就任された仲井氏が、本誌に初登場する。ハイエンドから身近な商品まで、さまざまなカテゴリーでオーディオ市場を刺激。その意気込みを聞く。

 

現状維持に発展や進化なし
新たなチャレンジこそが楽しい

新たなチャレンジで
オーディオ市場に刺激を

── 仲井社長の経歴をご紹介くださいますか。

仲井私は1977年に学校を卒業、電気メーカーに入社し、主に、海外での販売、マーケティングを担当していました。海外生活は24年に及び、特にアジアでの経験が長く、シンガポールのアジア統括会社時代には、西はアフリカから東はタヒチまで85カ国をテリトリーにしてビジネスを展開していました。

現在、ハーマンは全社的にみると、インフォテイメントと言われるカーナビゲーション関連の売上げが一番大きくなっており、マークレビンソンやJBLなどのオーディオ商品がそれに続きます。私は縁あって昨年から現職に従事していますが、そうした自動車関連のビジネスを扱う拠点と、国内の家電ビジネスの拠点とが日本国内にあり、双方を見ている状況です。特に、オーディオの分野でこれから、新たなチャレンジをさまざまに仕掛けて参りたいと思っています。

── 私はハーマンさんとのおつきあいが40年ほどになりますが、その間にオーディオの状況もずいぶん変わりました。

仲井今はほとんどの方が音楽をヘッドホンで聴いておられます。オーディオのマーケットそのものもシュリンクしており、私どもも自らがマーケットを活性化し裾野を拡げる活動をしていかないと、先細りになってしまうという危機感を覚えます。新しい施策を行いながら、是非ともマーケットを拡げていきたい思いです。

当社の原点は、JBLのブランドにも象徴されるように良い音を訴求することです。今後もそれを大事にしていくことと、いかに良い音が素晴らしいものかたくさんの人に知っていただくことが我々の使命と思っています。

当社は高級オーディオだけでなく、数々のブランドを展開しながら、ヘッドホンやアクティブスピーカー、ブルートゥーススピーカーなど幅広い商品を訴求しています。これらブランド、商品群に共通してこだわっているのが音質です。それぞれのカテゴリーで一番の音質をお届けしていると自負していますし、これらカテゴリーはまだまだ伸びしろがあると見ております。

ただ、そうしたカテゴリーでの我々のシェアは、まだ低い位置にあります。早く他社さんにキャッチアップし、我々の提供する商品群のあるべきポジションを確保していきたいと思います。

── ハーマンインターナショナルの社長に就任されての使命は何でしょうか。

仲井オーディオの世界をもっと拡げていきたいと思います。現状は、業界にとってあまりいい状態ではありませんが、お客様に商品をもっときちんと体験していただくことによって、市場は活性化できると確信しております。それをぜひ実現して参りたい。家の中でも外でも、そして車の中でも、いい音の体験を拡げて、業界を活性化したいと思います。

高級オーディオとともに
身近なオーディオを積極訴求

── 各々のブランドについて、あらためてご紹介ください。

仲井我々にとっての原点と言えるJBLは、売上げも最大であり、大事に育て、さらに認知度を上げていきたいと思っています。もともとは高級スピーカーのブランドですが、昨今では大変幅広い製品群を展開し、ヘッドホンやブルートゥーススピーカーなども手がけておりますから、高級オーディオと身近なオーディオ、双方のイメージ展開をしていく必要があります。

これからの商品群は高級オーディオと若者向け商品の2極化したブランド戦略になりますが、双方での認知度を高めるべく大事に浸透させていきたいと思います。

ハーマンカードンは、日本国内ではまだあまり認知度が高くありません。ただ商品をご覧いただければわかるとおりデザインに特長があり、JBLとは違ったお客様に対し、違った売り方ができると思います。デザイン家電の位置づけでのブランディングもできますし、それに見合った商流もあるでしょう。特に今年はこのハーマンカードンの再ローンチにトライしていきたいと考えており、商品ラインナップもさらに増やしていきたいと思います。

AKGはヘッドホンの世界で名が知られています。もともとプロ用のブランドであり、そうした面をプロモートしてブランド力を上げていきたい。またアクティブな若向けの商品も今後出て参りますので、これらを積極的に展開して参ります。ヘッドホンは業界自体が伸びており、今後の伸びしろもかなりあると思っています。当社の商品も好調に推移しており、今後は商品数を拡げてシェアを拡大して参りたいと思います。

REVELはアメリカのハイエンドスピーカーブランドで、昨年国内に再導入を図りました。JBLとは一味違った、音作りをご提供しています。海外ではかなり知られたブランドですので、国内での知名度を高めるべく、今年以降は本格的な展開を図りたいと思います。

マークレビンソンはいわずと知れた高級ブランド。この夏話題性のある新製品も控えていますので、しっかりしたプロモーションを展開したいと思います。

── 昨今は消費税増税の影響も見られますが、この夏以降は様相がまったく変わると考えられます。2013年度末は各社の決算も好調で、この夏の賞与は昨年と違って期待できる状況になりそうです。

仲井これまでハーマンは、JBLスピーカーやマークレビンソンのアンプなど高額な商品だけに注力しているという印象が強かったかと思います。しかし現在は各ブランドで幅広いカテゴリーの数多くの商品を展開するに至っております。現代の多様化する音楽の聴き方に対応し、専門性を幅広い分野で活かしながら、音を楽しむ生活にトータルに貢献していきたいと考えます。

そうした思いで今年は、幅広い商品群をきちんとお客様にご提案するべく、まずは情報をしっかりとお届けしたいと思います。各ご販売店様とともに店頭での活動もしっかりと展開して、伝わる活動を心がけて参ります。

これまで当社が得意としてきた高級オーディオの分野はますます注力し、既存のオーディオファンの皆様に向け、専門店の皆様のお力を借りてしっかりとアピールして参ります。また顧客管理に一層重点を置いて、どなたが購入されて商品をどう使ってくださっているかをしっかりとおさえ、お客様と直に対話することなども含めてお客様の動向を捉えた上、商品の在り方や販売の糸口を探る活動を推進していきます。このような活動によって当社の商品のファン、また高級オーディオのファンを増やしていきたいと思います。

ヘッドホンやスマートフォン周りのスピーカーなどは、量販店様のお力添えを特にいただくことになるかと思います。言うまでもなく、これらカテゴリーの主戦場で、店内シェア、ディスプレーシェアを格段に上げるべく、努力して参ります。そのための体制改革を計画しており、商品の情報をきめ細かくお伝えし、プロモーションの提案も積極的に行っていきます。商品の良さが店頭に伝わり、売り上げ拡大につながる最大限の努力をして参ります。

店頭での仕掛けやお客様へのアプローチ、体感をもたらす環境づくりをさらに積極的に展開。ヘッドホンなどは店頭での専用ブランドブース設置も視野に入れ、しっかりと対応して参ります。また、展開するブランドの力も高めつつ、それぞれのブランドの差異化も図って参ります。ブランドの性質により、また展開する商品ごとにも位置づけを明確にして、お客様に情報をお届けして参ります。

そういう意味で商品によっては、生活家電の売り場だったり、女性層に向けて美容家電の売り場だったり、従来とは違う場所でのアプローチも必要になるかもしれません。そうした提案も積極的に行って参りたいと思います。

活動の場を拡げ
お客様に直に接していく

久保 省三氏── 体験の場を用意することは重要です。気軽に聴ける場、敷居を低くしていろいろなお客様をお迎えできるような場づくりを推進したいですね。

仲井私どもでもお客様に直接当社の商品を訴求し、対話することができるハーマンストアをこの7月、六本木ミッドタウンにオープン致します。幅広いお客様に向け、まず当社の商品をご体験いただくところからしっかりとアピールして参ります。

ここは当社が展開するすべての商品をご体感いただける場所となります。高額なハイエンドのピュアオーディオのシステムも、どんな音で鳴るのかを数多くの皆様にご体感いただければと考えております。またオーディオになじみのない皆様に向けては、初心者向けのセミナーなども展開したい。ウェブ上で予約を受付け、お聴きになりたい商品のリクエストもいただきたいと思います。

── 新たな展開に際しての、御社の組織をご紹介ください。

仲井これまでいわゆる営業の立場からの動かし方をして参りましたが、新たにマーケティングのファンクションをしっかりと据えて、プロダクトマネージャーを置くとともに、ブランドアンバサダーの仕事も加えます。ひとつの商品で複数のブランドをもつ困難を克服できるよう、それぞれのブランドのアンバサダーを立て、商品、価格、販路、プロモーションそれぞれの戦略をしっかり考えつつ活動する部署としました。

そしてブランディングの基本である顧客満足度向上を目指し、お客様に近いところで活動を行う部署として、ダイレクトショップ、オンラインストア、コールセンター、サービス窓口などをひとつの責任者のもとで展開し、お客様情報がそこに集約するように致します。

営業面ではこれまではひとりのセールスマンが高級スピーカーからヘッドホンまで手がけておりましたが、高級オーディオとポータブルオーディオとの担当を分けて、それぞれの専門性を活かした取り組みとする体制をつくりました。前者は専門店様を、後者は量販店様をメインに担当して参ります。

── 仲井社長はご経歴の中で売上げが前年を割ったことはないと聞きました。その秘訣は。

仲井同じことを継続していてはだめだと思います。いつも必ず新しいことにチャレンジすることが私の信条です。それがたまたまいい方向に行き、これまでの結果が得られたのだと思っています。現状に満足していると、この先の発展はありません。殻を破って新たなことにチャレンジするのは、どんな場合でも大切なことなのです。

それは企業の動き、業界の動きを考えても同様だと思います。当社としても、常に新しいことに着手して参りたいと思います。当社も今年からは、これまでとはまったく違った商売の仕方を推進している自負があります。

お客様にとって魅力的な商品を市場に投入し、情報をしっかりとお伝えしていく。そしてオーディオの市場を活性化していくために、さまざまなチャレンジをして参ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

◆PROFILE◆

仲井 一雄氏 Kazuo Nakai
電機業界一筋。主に海外の営業マーケティングに携わる。駐在した国、4ヵ国。訪問した都市は160を超える。近年では国内の携帯ビジネスも統括。前年割れしない男の異名を持つ。モットーは“現場、現物、現実”。

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