中野修義氏

充実した内容のエントリーモデルを投入
商品を通じてお客様と触れ合う機会を増やしていく
エプソン販売株式会社
取締役
販売推進本部長
中野修義氏
Nobuyoshi Nakano

2013年のホームプロジェクター新製品群を発表したエプソン。ホームシアターのミドルクラスファンに訴求するモデルに加え、1080Pを10万円以下で実現する戦略モデルを投入、エントリー層の取り込みに注力する。体感イベントも含め、強力新製品群に対する取り組みを、エプソン販売の中野氏に聞く。

 

くつろいで楽しめるのもホームシアターの価値
それを実現する手段としてプロジェクターを訴求したい

強力モデルを投入し
裾野の拡大を加速する

── プロジェクターのビジネスユース、そしてホームシアターユースの力強い新製品が発表されました。

中野 このたびホームシアターモデルとして投入した新製品は、EH-TW8200W、EH-TW8200、EH-TW7200、EH-TW5200、EH-TW5200Sの5機種。すべて3D対応のフルHDモデルで、3LCD方式を採用しています。

EH-TW8200W/EH-TW8200は、昨年のEH-TW8100W/EH-TW8100の後継モデルで、コントラスト比が60万対1と前モデルから約2倍向上、「超解像技術」や「フレーム補間技術」といった技術を採用しています。EH-TW7200は広範囲レンズシフトを搭載し、よりお求めやすさを追求したモデルです。これらはホームシアターファンのミドルユーザーであるお客様を想定し、おもにAV専門店様にお力添えをいただきながら訴求していきたいと考えています。

EH-TW5200は、解像度1080PのフルHD、3D対応でありながら、販売価格で10万円を切るところを実現した戦略モデルです。本格的なホームシアターとして楽しめる1080Pの美しい映像を実現するモデルを10万円以下の価格帯に設定しました。より多くのお客様にアピールし、ホームプロジェクターの裾野を広げるのが狙いです。

── TW5200は、今回の新製品群の中でもっとも注目したいモデルです。フルHDの本格的な映像をエントリークラスの価格帯に実現した、市場にとっても画期的な存在ですね。
エプソンさんではホームプロジェクターの取り組みとして、本格的なホームシアター向けのハイクオリティモデルを極めておられます。一方で身近な、より多くの方が楽しめるようなエントリーモデルにもたいへん注力されてきましたが、その線上にもっともブラッシュアップされた存在が投入されたと見ております。

中野 デジタルテレビが普及した今、ほとんど、どこのご家庭でもフルHDの映像は当たり前になっています。プロジェクターは超大画面の映像を楽しめるだけに、より画質のクオリティが問われますから、まずそこをきっちりとおさえ、そして手の届きやすい価格帯としました。より多くの方に納得していただけると期待しております。

ホームプロジェクターのエントリークラスの市場では、さらに下の価格帯でビジネスプロジェクターを活用している要素もあります。しかしそことは一線を画した存在として、TW5200を通じて1080Pの高解像度、15000対1のコントラストによる美しい映像をお客様に味わっていただくことで、本格的なホームシアターの醍醐味に触れ、今後さらにすばらしいホームシアターモデルに触れていただくステップにもなると考えます。エプソンが従来から提案しているDVD一体型モデルと同様、本体にスピーカーも内蔵しており、大画面映像を手軽に楽しんでいただくことができます。

── お客様はどのような方を想定されていますか。

中野 日頃から家で映画を楽しみ、それなりにこだわりをもたれて、プロジェクターに20万円〜30万円を出費するのはハードルが高いというような方をターゲットとしています。映画が好きな方は当然映画館にもよく行かれていますが、映画館はすばらしい再生空間である一方、見る際の自由度は制限されます。それが家の中のシアターであれば、映画を見ながら自由に食べたり飲んだり、話しをしたり、途中で休憩したりもできます。よりくつろいだ状態で映画を楽しめるというのが、ホームシアターの楽しさのひとつです。

映画館の超大画面と音響装置で本格的にご覧いただくことも楽しいものですが、家で自由にくつろぎながら、リラックスして映画をご覧になるのも、また格別の楽しさがあります。これもまたすばらしい価値として、ご提案できるのではないでしょうか。

── 戦略的モデルということでどうしてもモノとしての価値に目が向いてしまいがちですが、おっしゃることは非常に大事ですね。家の中でも映画館のような空間、大画面で映画を楽しめること、しかも他人を気にせずくつろぎながら自由に見られること。そういう空間やシチュエーションがつくれることの価値にこそ目を向けるのが大切ですね。

中野修義氏コンパクトな本体が
導入のハードルを下げる

── TW5200は、本体のサイズにも驚きがあります。

中野 シアタールームのある方はプロジェクターの大きさにこだわりませんが、多くのご家庭にとってホームシアタープロジェクターの大きさは、導入のハードルを高めると認識しています。日本のご家庭にサイズの要素は重要で、最大のソリューションと言っていいでしょう。

TW5200は幅29.7cm、奥行24.7cm、高さ10.5cmと、ノートパソコンに匹敵するほどのフットスペースを実現した、コンパクトサイズとなりました。これなら普段はどこかにしまっておき、使う時だけ出して設置することも気軽にできます。また、台形歪み補正機能を搭載していますから、設置の際も場所を選びません。ここは一般家庭にとって重要な要素だと思います。

── スクリーン付属モデルも展開されますね。

中野 日本のご家庭のリビングでは、壁面がほとんど窓やドア、家具に占められて空間がないケースが多いですね。プロジェクター映像を投影する場所を確保するためにも、専用スクリーンは必須になってきます。

TW5200のスクリーン付属モデルは本体の価格にプラス5000円でご提供しており、10万円以下を想定した本体価格を大きく上回らない設定です。家庭内がどのような環境であっても、スクリーンを設置すれば映画が見られる。また専用スクリーンを設置して投影することで、より映像がきれいに見られると訴求していきたいと思います。こうした環境整備も裾野拡大につながることと重要視しています。

── 御社では2年ほど前からプロジェクターのイベントを大々的に展開しておられますが、手応えはいかがでしょうか。

中野 我々は一昨年にホームシアターシステムを積んだトレーラーをショッピングセンターの駐車場などに派遣し、全国規模の体感イベントを実施しました。昨年にはオープンしたばかりだった東京ソラマチでの体感イベントを行いましたが、今年も同様に年末商戦に焦点をあて11月2日から10日まで開催します。

東京ソラマチのイベントでは大変多くのお客様が列をつくって並んでくださり、その状況に私自身も驚きました。3Dのホームシアターを体感していただいた多くの方がアンケートでよかったと回答され、また2割ほどの方は購入を検討したいと回答され、非常に手応えを感じました。こうしたイベントを通じ、まず体感していただくことの大事さをあらためて認識しました。こうしたことがホームシアターの裾野拡大につながると思います。昨今は日常的に体感できる場所が少なくなりましたが、こうしたイベントでおおいに刺激したいと考えます。

店頭をしっかり整え
お客様との接点をもつ

── TW8200W/8200、TW7200は専門店を中心に訴求されるとのことですが、TW5200はどのように展開されますか。

中野 10万円未満のクラスのプロジェクターは、WEBでの販売が主流となっています。しかし我々の商品については、最大のチャネルとなる量販店様を中心に、暗室をもっておられるご販売店には実機を設置させていただきますし、そうでないご販売店様にはモックのかたちで配備させていただきます。

現状この価格帯のプロジェクターはモックですら見ることができない場合も多いかと思いますが、我々はTW5200においてお客様と触れ合う機会を少しでも増やしていきたいと考えています。WEB上では機器に触れて映像を体感することはできません。またWEB上では確信的に検索しなければその情報に触れられることもなく、そもそもプロジェクターをご存じない方とコミュニケーションすることができません。それができる場所こそが店頭ですから、お客様の体感と購入が連動するようしっかり整備したいと思います。量販店様にとっても、10万円を切る商品が投入されることでプロジェクターの売れ行きが変わると思います。その需要性の高さもしっかり訴求していきたいところです。

── ホームプロジェクターの市場をどのようにご覧になりますか。

中野 発表会ではホームプロジェクターの市場が1万8000台弱と申し上げましたが、エプソンのビジネスプロジェクターであるEB-S02、EB-S12、EH-TW400といったモデルはホームシアター用として使われるケースが2割ほどあります。その総数はおよそ1万2000台で、ホームプロジェクターの2/3にあたり、これだけの数がビジネスプロジェクターに流れてしまっていると考えられるのです。10年ほど前にエプソンでは、480P、720Pのプロジェクターをエントリーモデルとして展開していましたが、当時の販売台数に対して今のエントリーモデルの台数はぐっと落ちてしまっています。お客様がビジネスプロジェクターのローエンドモデルの一部に流れているということです。

以前480Pでプロジェクターをご覧になっていた方も、昨今の1080Pのテレビの画質に触れるともうもとには戻れませんね。TW5200は、そういうお客様の買い替え需要にもマッチするものなのです。価格帯も当時と同様で非常に訴求しやすい。こうしたことからも、ホームシアタープロジェクターの市場は十分拡げられると考えます。お客様に今いちどホームシアターのよさをしっかり訴求していくことは、裾野開拓にとっての急務と考えます。仕事から帰って、リラックスして映画を楽しむ。休日にご家族でゆっくりと楽しむ。そうしたシチュエーションやそれに付随する楽しさ、幸福感といったものをしっかりとアピールしていきたいと思います。

◆PROFILE◆

中野修義氏 Nobuyoshi Nakano
1982年 信州精器(現セイコーエプソン(株))に入社。83年 エプソン販売(株)に出向。05年 エプソン販売(株)コンシューマ東日本営業本部長。07年 マーケティングセンター長。09年 取締役兼マーケティングセンター長。10年より取締役兼販売推進本部長。

back