巻頭言

人間万事塞翁が馬

和田光征
WADA KOHSEI

近頃「人間万事塞翁が馬」が脳裏を占めている。

『中国の北の方に占い上手な老人が住んでいた。北は胡という異民族が住んでおり、国境には城塞があった。ある時、老人の馬が北の方へ逃げてしまった。老人をなぐさめると「このことが幸福にならないとも限らないよ」。

ある日、逃げた馬が胡の良い馬を連れて帰ってきた。近所の人達のお祝いに老人は「このことが災いにならないとも限らないよ」。暫くすると、息子が落馬して足を骨折した。老人は「このことが幸福にならないとも限らないよ」。

1年が経った頃、胡が襲撃してきた。城塞近くの若者はすべて戦いに行き、村を守ることができたが、その多くは戦死してしまった。老人の息子は足の負傷もあり戦いに行かずに済み、無事であった』

城塞に住む老人の馬がもたらした運命は、福から禍へ、また禍から福へと人生に変化をもたらした。全く禍福というものは予測できないものである。だから安易に喜んだり、悲しんだりすべきではない。

禍も悲しむにあたらず
福もよろこぶにあたらず

私は同時に「得意澹然、失意泰然」を深く思う。物事がうまくいっている時こそ淡々とせよ、うまくいかない時は堂々と泰然とせよの意であり、私の長年の座右の銘である。ここ数年は、まさに人生を狂わされた時間ではなかっただろうか。私は多くの人にこの言葉を話し励ましたが、要は自然体であれということである。

そして私自身もまた、自ら創り出した言葉を復唱している。この欄でほとんど披露したものであるが、私の内面を支えた言葉である。

「人間好きは商売上手」

まず人間が真に求めているもの、その極は“平和と幸福”である。人という字も人間という字もヒトではなく人、複数を表現しているが、複数にして初めて人であり、人間なのである。その人間の認識が重要であり、すべてはここから始まるのである。

故に商売の鉄則は「人間好き」こそ原点である。人間は、人間好きでない限り生きてはいけない。従って、人間が好きで好きでならない人にはプラスのバリアが張られて自ずと商売もうまくいき、評価され、さらに人が集まってくるのである。

「成功の四原則」
本道 本質を理解し自分のものにする
誠意 真摯であること
熱意 真摯だけではいい人で終わる。やはり強い熱意がなければ成就しない。
感謝 ありがとうございますの思いが己を大きくしていく。

「三世代マーケティング」

80年代前半、団塊、団塊ジュニア、そして団塊の親たちを捉えた三世代マーケティングについて、小誌で特集を組み訴えた。その後、経済誌が三世代マーケティングの大特集号を刊行した。

私は「人間万事塞翁が馬」が脳裏を占めると言ったが、団塊の世代が60歳代後半となりはじめるのを見て、それが福か禍かと思いを巡らせているところである。

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