岡田守行氏

お客様目線で価値やメリットを
「見える化」し、営業活動を推進
シャープ(株)
執行役員
国内営業本部長
岡田守行氏
Moriyuki Okada

シャープの液晶テレビAQUOSが2001年1月の発売から今年で10年目を迎え、その節目でLEDモデルが投入された。さらにLED電球、プラズマクラスターイオン商品群、太陽光発電システムなどの新提案も含め、お客様目線でのメリットを訴求し続けるシャープ。新たな未来に向かうその取り組みを、営業本部長の岡田氏に聞いた。

 

自然に帰り、新しい未来を目指す
そこに必ずシャープの商品がある

AQUOS 10年目の節目に
LEDモデルが発進

── 昨年発売されたLED AQUOS第一弾モデル(LX1)が大きな話題になっています。

岡田 液晶テレビAQUOSは2001年に誕生し、今年で10年目を迎えます。この10年間で、インフラやコンテンツなどテレビを取り巻く環境は大きく進化しましたが、AQUOSは、大画面化や環境性能の向上などで常に最先端を走り続けてきました。そして、昨年末に、LEDをバックライトに搭載したLED AQUOSを発売しました。照明の分野でもLED電球が注目されつつあり、LED AQUOSの存在感は非常に高まっていると思っています。

また、AQUOSのCMキャラクターは、LED AQUOSのデビューを機に吉永小百合さんから本木雅弘さんにバトンタッチしました。アクティブで元気のある企業イメージ、高い商品技術力を本木さんのキャラクターを通じて強く打ち出せたと思っています。LED AQUOS第一弾のCMは、店頭等でも非常に大きな反響があり、想像以上のご支持をいただくことができました。

そして今月には、LED AQUOS第二弾として、SEシリーズを2月15日に発売しました。これは基本性能に磨きをかけ、LEDモデルのボリュームゾーンとしてご提案する商品です。テレビの前に人がいるかどうかを検知し、自動的に節電モードに切り替えるムーブセンサーを搭載し、省エネ性能にもこだわりました。LED AQUOSのラインナップが拡がり、お客様の選択肢も増えましたので、店頭では集合展示で存在感をアピールしていきます。

今後も引き続き、LED AQUOSのラインナップをさらに拡大し、お客様にLEDの良さを実感していただけるよう提案活動を強化していきます。2010年度中には、国内で販売するAQUOSの中でLEDタイプの構成比50%以上を目指して取り組んで参ります。

 

── 2011年7月の地デジ完全移行に照準を合わせ、テレビ市場は爆発的に伸びて参ります。しかし単価は下落していきますし、需要が最大になった後の落ち込みも見越していかなくてはなりません。そういう意味でもLED AQUOSは、テレビ市場に新しい価値をもたらす切り口だと思いますし、快進撃を続けているブルーレイ内蔵AQUOSの存在も心強いですね。

岡田氏岡田単価下落は業界にとっても厳しい現実です。今後もある程度の下落は続くと予測されますが、当社ではLED AQUOSの構成比のアップやブルーレイ内蔵など特長のある商品を積極的に展開し、お客様の満足度を高める提案活動を地道に進めていきます。

また、店頭では、録画機能搭載モデルの購入を検討されているお客様が増えています。テレビとレコーダーの煩わしい接続が不要で、簡単操作で高画質録画や再生ができる便利さにご支持をいただいております。その中でも、ブルーレイは目に見える記録メディアであり、安心感も感じていただけるので、ブルーレイ内蔵タイプへの注目度は非常に高く、AQUOSは、この分野でも引き続き取り組みを強化していきます。

 

例えば「テレビ1台分相当の省エネ性能」
のような提案がお客様の心を動かす

── LED AQUOSの今後の販促策をお聞かせください。

岡田技術やスペックの訴求も大切ですが、やはりお客様の目線での価値、つまりお客様にとってどんなメリットがあるのかを訴求して参りたいと考えています。今、お客様は将来に不安を感じ、節約志向になっているのは間違いありません。エコポイント制度でテレビ市場は盛り上がっていますが、お客様の商品に対する厳しい目は変わりません。またお客様ご自身が豊富な情報をお持ちですから、ややもすると価格の比較だけに集中されることになりがちです。

LED AQUOSは単価下落を食い止める商品として、ご販売店様からもご指示をいただいていますが、それがお客様にとってどんな価値やメリットを提供できるのかという目線が最も肝心です。一目でわかる圧倒的な高画質とか、ダントツに省エネであるとか、価値やメリットがなくてはお客様の心は動きません。

例えば、SEシリーズの46型と当社の昨年の同等モデルの年間消費電力量を比較しますと、なんと32型一台分に相当する年間消費電力量が削減されています。凄い差です。昨年の同等モデルの年間消費電力量は約200kWh/年ですがSEシリーズは118kWh/年であり、スペックで訴求しても実感が湧きませんが、32型のテレビ一台分相当の省エネであることをご説明すると、その差を実感していただけます。お客様目線の価値とは、まさにこのような目線なのです。

今後も、テレビ市場は厳しい競争が続いていきますが、様々な課題を乗り越えられる基礎体力をつけること、すなわちお客様目線でのご提案ができるスキルを、メーカーもご販売店様も身につけることが求められています。

以前、私はフォローの風は皆に吹いているという話をさせていただきました。風は確かに皆に平等に吹いていますが、風の受け止め方で格差が出てきます。例えば、LEDテレビの販売構成比が半分以上のご販売店様もあれば、ほとんど販売されていないご販売店様もあります。その要因は、お客様目線での売り場づくり、トーク、販促などであり、それがお客様目線での提案になっているかどうかが販売台数の差になっていると思います。

風をしっかりと受け止めて、実績を伸ばすには、「見える化」、つまり価値やメリットをお客様の目で確認していただけるようにする提案活動が大切です。例えば、LEDとCCFLの画質の差や消費電力の差をきっちりと店頭でお見せすることでLEDの価値やメリットを実感していただけます。特長や機能の訴求だけではお伝えできないことが、実感とともにご理解いただけます。

プラズマクラスター搭載商品は、効果や効能が目に見えません。実際の効能を目で見えるようにする取り組みが必要です。イオンの放出量や空気の循環状況などを「見える化」し、お客様が納得していただけるような方法を検討しています。

 

シャープの商品があって良かったと
思っていただくための努力を続ける

岡田氏岡田 また、今年の営業活動の大きなメッセージとして、「自然に帰る」というテーマを設定しました。LEDテレビは「自然な画像を楽しむ」、LED電球は「自然な明あかりで暮らす」、プラズマクラスターイオンは「自然な空気で暮らす」、そして太陽光発電は「自然のエネルギーで暮らす」という4つの視点で市場拡大を目指しています。現在、社会的に関心の高い環境やエネルギー問題ともマッチし、業界としても全力で取り組んでいかなければならないテーマであり、これらは「自然」といったキーワードで表現できます。

プラズマクラスターをお使いいただいているお客様から「部屋の空気が変わった」という感想をいただきます。私達が普段生活している空間は、イオンのバランスが崩れている状況ですが、プラズマクラスターイオンをお使いいただくことで、自然界のイオンバランスに近い空間に変えることができ、部屋の空気が変わったことを実感していただいたということです。

またLED AQUOSでは、コントラスト感のある自然な画質を実感していただけます。LED電球も、自然光のような明かりが実感できます。太陽光発電システムも、まさしく自然のエネルギーを活用していただける商品です。そういう意味でも「自然に帰る」というテーマは、2010年に相応しいキーワードであり、営業活動を通じてご提案していきたいと思います。

 

── 経済や技術進化などいろいろな要素が、今分岐点に来ているのですね。

岡田 そういうことだと思います。技術の進化だけをそのままお客様にご説明してもその価値やメリットを実感していただくことはできません。しかし、技術の裏付けがなくては新しい価値を生み出すことはできません。当社には、先ほど申し上げた「自然に帰る」4つのカテゴリーで商品が揃っています。

それらの商品の価値やメリットを実感いただく提案活動の前提として、お客様のニーズにきちんとお応えできる商品開発が不可欠です。技術の進化とマーケットの動向をすり合わせることが非常に重要になっています。また、提案活動をする際には、具体的な目標を設定することが必要です。例えば、LED AQUOSの販売構成比50%以上を目指すとかプラズマクラスターやLED電球を全ての空間に設置するといった目標を皆で共有し、実践していくことが必要です。これらはメーカーだけでできることではありませんので、ご販売店様と一緒になって、取り組んでいくつもりです。

 

── 「自然に帰る」とおっしゃいましたが、今我々が驚くのは、自然に帰った先にシャープの商品があるということです。太陽光発電システムやLEDというのはインフラであり、とても大きな世界ですが、御社はそれを何十年もかけてつくってきたということですね。
リーマン・ショックに端を発した大不況で家電業界は大打撃を受けましたが、御社は太陽光を全面に出しアピールし、新型インフルエンザの大流行とタイミングを同じくしてプラズマクラスターを大々的に展開しました。節目節目で革新的な提案をなさっています。

岡田当社は1990年から「目の付けどころがシャープでしょ。」というスローガンを使用してきましたが、今年1月から「目指してる、未来がちがう。」に変更しました。その思いは、お客様にシャープの商品があってよかったと思っていただけるよう、技術や商品に対する努力をこれからも続けていくという覚悟でもあります。まさにそこにシャープの商品があるかどうか、ということです。

新スローガンの「目指してる、未来がちがう。」は競争することが目的ではありません。従来の概念にはとらわれない「オンリーワン」をベースに、新しい基幹技術や商品を柱に、暮らしや世の中をよくしていきたいという願いを込めています。未来とは、お客様の生活の変化であり、想像以上の驚きとワクワク感を共有していくという意味です。

 

── 御社は98年に「すべてのテレビを液晶にする」と宣言され、そこに集中してこられました。そのとおりの形をつくってきたという足跡が、さまざまなカテゴリーに見受けられます。

岡田経営トップによるその時々のメッセージが明確でわかりやすく表現されますので、社員も驚くほどの高い目標を設定し、取り組みます。トップのメッセージを実現するために先輩方も努力されてきました。そのような積み重ねで今があると思います。

需要創造と言いますが、文字通り、需要は自分たちで創造していかないと、進歩や進化はありません。そういう意識は全社で共有しています。これから世の中や生活はこう変わるということをイメージしながらご販売店様と一緒に取り組んでいくことが、シャープのオンリーワン営業につながっています。

 

── 今ある姿というのは、10年前、20年前にまいた種が成長した結果です。そしてまいた翌年もまた種はまかれていたわけです。そういったひとつひとつが、自然の摂理と一体となって動いているからこそ、今「自然に帰る」となって花開いたわけです。「目指してる、未来がちがう。」というのはどういう未来か。今描いている「自然に帰る」という思いの延長線上にそれはあるはずです。そのとき主役になる商品を、シャープは持っているということです。

岡田その通りです。その責任を果たすためにも、今後、さらにスピードをアップして理想の未来を実現していかなくてはいけないと思っております。昨年の10月から液晶パネル生産がスタートした「グリーンフロント堺」は、徹底的に環境に配慮し、他に類を見ない最先端の工場です。そこから生み出されるものは、省エネ性能に優れた液晶パネルです。

AQUOSは従来、亀山で生産された液晶パネルを搭載していたことから「世界の亀山モデル」として、流通やお客様に認知いただいておりました。これからは、「グリーンフロント堺」で生産された最先端の液晶パネルを搭載したAQUOSも登場して参ります。ただ、「グリーンフロント堺」で生産される液晶パネルも全て亀山工場で開発された液晶技術、つまり匠の技術に基づいており、今後、AQUOS全体の先進性を表すキーワードとして「亀山ブランド」をアピールして参ります。

昨年より、LED AQUOSをご提案しておりますが、薄型テレビとLEDテレビは全く別の商品と思われているお客様が非常に多くいらっしゃいます。すなわち、LEDテレビは、従来の延長線上の薄型テレビではない魅力的な商品だと感じていただいております。それほどLEDテレビのインパクトは大きく、(CCFLとの)画質や環境性能の違いを認識していただいています。私達としては、LEDテレビの価値やメリットを展示や販促、接客を通じて、見える形でご提案することを心がけていかなくては、お客様のご期待にお応えすることはできせん。

お客様のご期待にお応えできる商品を開発し、新しい価値をご提案できれば、新しい需要や買い替え需要がまだまだ発掘できると思います。特にテレビでは、リビングからパーソナルルーム需要へつながっていきますので、中小型ゾーンのご提案も力を入れていきます。先日発売した20型のNEシリーズは、若い女性スタッフをリーダーに商品開発し、一人暮らしの若いお客様にもご提案できるようデザイン性にこだわったモデルです。アイデアはまだまだあります。独りよがりにならず、2011年以降に向けてもしっかりと推進したいと思います。

 

◆PROFILE◆

岡田守行氏 Moriyuki Okada
1954年生まれ。1977年シャープ(株)入社。1999年7月シャープエレクトロニクスマーケティング(株)取締役 首都圏統轄本部 第三営業統轄部長に就任。2001年10月専務首都圏統轄本部長。2002年4月専務第二営業本部 東日本担当。同年7月シャープ(株)AVシステム事業本部オーディオ事業部長。2004年4月シャープエレクトロニクスマーケティング(株)副社長。同年10月同取締役社長。2008年5月にシャープ(株)国内営業本部長。同年6月に現職に就任。

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