岡田 淳氏

<CELLレグザ>が
伝える映像を見る喜び
テレビの在り方とビジネスが革新される
(株)東芝 デジタルメディアネットワーク社
映像マーケティング事業部
日本部
部長
 
岡田 淳氏
Atsushi Okada

話題の<CELLレグザ>がいよいよベールを脱いだ。12月の市場投入へ、店頭の期待が高まる中、東芝でも「白黒テレビやカラーテレビが登場したときのような、いつしか忘れ去られてしまっている、テレビのある感動を呼び戻したい」と意気軒昂だ。これからのテレビの在り方、そしてビジネスに一石を投じる<CELLレグザ>。国内販売の指揮を執る岡田淳氏に話を聞く。

 

私たちが想像できないような色々な
楽しみ方をしていただけます

<CELLレグザ>で
テレビ復権

── 話題を集めた<CELLレグザ>がCEATEC2009の会場で大々的に発表されました。

岡田<CELLレグザ>で、テレビの在り方を変えていきたい。我々が込めたこの強い思いを感じ取っていただくためにも、皆さんの注目を集める会場で、大々的に発表を行いたいと考えていました。

テレビは単なる家電商品ではなく、エンターテインメントの商品なのです。戦後の街頭テレビの時代に始まり、白黒テレビが登場するや一躍、家庭の主役となりました。テレビを見るために早く家に帰ろうとか、茶の間のテレビの前には家族がみんな集まりました。それまでにはなかった画期的かつ魅力的な娯楽だったのです。

次に登場したカラーテレビでも、新聞のテレビ欄にはカラーで放送されるものにはマークがつけられて、ただ、カラー放送だというだけで番組にかじりついたものです。

あのときの感動や驚きが、いつのまにか忘れ去られてしまったように思います。ここでもう一度、テレビの原点へ返り、テレビをもっと楽しんでもらいたい。うちへ帰って何もやることがないからテレビでも見ようかというのではなく、「早く帰ってテレビを見よう」「テレビをもっと楽しもう」という世界を、<CELLレグザ>でもう一度提案していきます。「テレビ復権」とまで言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、エンターテインメントとしてのテレビの価値や楽しさを実感していただきたいのです。

<CELLレグザ>ではまた、従来のテレビにはできなかった、新しい使い方・楽しみ方を実現しています。これも、お客様にどんどん体験していただきたい。

まずは画質です。テレビの大きな特徴は、わざわざ出掛けて足を運ばなくても、テレビの前でいろいろなものが楽しめるようになったことです。しかし、例えば夏の花火や、これからの風物詩で言えば街中の鮮やかなイルミネーションなどは、やはり、その場に行かなくてはあの感動は味わえません。今のテレビでは残念ながら、そこまでの再現能力がないのです。

ところが<CELLレグザ>は、あたかもその場で見ているような体験ができます。それほどまでに高画質なんです。店頭で見ていただければ、「これは普通のテレビじゃないぞ」ということが、誰の目にも一目瞭然でおわかりいただけると思います。

また、3TBのハードディスク(HDD)が入っています。これの何が凄いのかというと、チューナーも14機搭載されていて、地デジ番組を8チャンネル丸録りする設定ができます。これにより、例えば家に帰って「テレビを見よう」というときに、今放送されている番組に限らず、24時間過去にさかのぼって興味のある番組を見ることができるようになりました。これは「タイムシフトマシン」機能によるものです。もちろん、興味のある番組を簡単に探し出せるように、「ローミングナビ」という高度な検索機能も併せて搭載しています。


── 冒頭のお言葉にもあったように、これまでのテレビの概念を覆してしまう商品ということですね。

岡田ここまでできるのも「Cell Broadband Engine」を搭載した「CELLプラットフォーム」があるからです。大変高い評価をいただいている<レグザ>のメタブレインプロのおよそ143倍という超高速の処理能力で、スーパーコンピューター並みの演算処理能力になります。だから、並外れた高画質やこれまでにない新しい楽しみ方をお客様にご提案できるのです。テレビをもっともっと楽しんでいただくことができる。<CELLレグザ>の登場を機に、間違いなくテレビの使い方が変わっていくと思います。

市場環境が厳しい状況で、テレビ自体のコモディティ化が進んでいます。弊社としてはこのような時代にあえて高付加価値商品である〈CELLレグザ〉を市場投入し、テレビの楽しみ方を変える提案をしたいと考えています。

現在は高価な<CELLレグザ>ですが、今後、普及機まで拡大し、コモディティ化を進めたいと考えています。弊社としては高付加価値モデルを次々と開発し、テレビ市場の価格維持に寄与したいと考えています。

DNAを伝え
感動の輪が広がる

── 市場にお目見えするのは12月になりますが、お客様にはどのように受け止めていただけるでしょう。

岡田氏岡田さきほどお話した画期的な高画質や録画機能以外にも様々な機能が搭載されています。もうひとつの特長と言える「ネットワーク対応」では、例えば、日本でも大変人気があるユーチューブを見られる専用のブラウザを入れています。

ユーチューブの映像は一般の方が撮ったものですし、ハイビジョンカメラで撮影したものとも限りませんから大画面で見るには画像があまりよくないのがウイークポイントなのですが、<CELLレグザ>では、こういったコンテンツを私どもの超解像技術と「CELLプラットフォーム」により、高画質で楽しむことを可能にしました。地デジやBSデジタルの放送だけでなく、インターネットの映像もきれいな画質で楽しめますので、ここでもまた、テレビの楽しみが大きく広がっていきます。

<CELLレグザ>は「高機能・多機能」であることも大きな特長です。これまでのテレビには見られなかったアプローチです。お客様がそれぞれの生活シーンに合わせて、私たちメーカーが想像もしないようないろいろな楽しみ方をしていただけるのではないかと思います。白黒テレビやカラーテレビが世の中に出てきたときのあの感動を、もう一度ご提案することができる商品だと確信しています。

できるだけ多くの人に感動をお伝えしていくためにも、高単価な商品だけでは不可能です。最初にご購入いただくのはこだわりのあるマニアの方が中心になると思いますが、そういう方からの口コミ効果は大変大きなものがあります。「いままでにないテレビが出たのか」「そんな楽しいことができるのか」というメッセージを広く伝えていただくと同時に、1年後、2年後、3年後と、同時にこのDNAを使った商品を一般化していくことで、感動の輪がどんどん広がっていくと思います。

ひとつの例を申し上げますと、現在、私どもの「Zシリーズ」が大変好調です。特に外付けUSB HDDへの対応やネットワーク対応が高く評価されているのですが、私どもがそれぞれの対応を手掛け始めた2006年当時には、土壌はまだ整っていませんでした。映像をネットワークで見るということも一般的ではありませんでしたし、外付けHDDも高価でした。

それが、環境がどんどん変わってきて、ネットワーク化や外付けのHDDによる録画は、マニアに限らず、一般の方でも当たり前のようになっています。当初のDNAが今、一般商品に生かされているというわけなのです。

── <CELLレグザ>が大きな話題を提供していますが、<レグザ>のラインナップも年末商戦へ向けて一新され、重厚なラインナップが完成しました。

岡田氏岡田<CELLレグザ>のほかにも、5シリーズ25モデルの新機種を揃えました。録画であったり、画質であったり、ネットワークであったり、多様化するお客様の声にお応えするためには、それだけのラインナップが必要だからです。

今回、リニューアルした目玉のひとつがRシリーズです。上は52V型から下は19V型までカバーし、全機種に超解像技術を搭載し、USBによる外付けHDDに対応した新シリーズです。HDD録画をもっと幅広く、より多くのお客様に楽しんでいただきたいというのが狙いになります。

特に、19、22、26V型クラスは、エコポイント制度の後押しもあり、2台目、3台目需要としてこれから本格化してくるパーソナルサイズです。寝室や子ども部屋でテレビを楽しむときにも、録画したものを手軽に楽しみたいという要望は強いと思います。Rシリーズなら、市販のHDDを購入していただくだけで、簡単に録画対応モデルになります。

かつて「テレビデオ」という商品がありましたが、構成比も約2割、年間で150〜200万台もの需要がありました。ビデオのスペースが不要になる省スペース性や接続の面倒さが省けるといった点から人気を集めました。05年くらいまで需要があり、現在も保有されている方が多いと思います。HDD録画対応で中小型まで揃っているRシリーズは、その買い替えモデルとしてもまさに最適です。

外付けのHDDを付けていただくだけで、簡単に録画も楽しめるようになるというのは、これも新しいテレビの楽しさのひとつです。積極的に提案していきたいと思います。今回は初めて、500GBの純正HDD「THD-50A1」も用意しました。名刺大のコンパクトサイズですから、置く場所要らずで、省スペースの要望にもお応えすることができます。

 

「記憶するレグザ。」で
録画対応を前面訴求

── 御社が力を入れて提案されてきた録画対応テレビの構成比が上がってきましたが、さらに広がっていきそうですね。

岡田録画対応をどのようにしてお薦めしていくかが、販促面においては一番のポイントだと考えています。

外付けHDDも、40V型クラス以上の大型商品をお求めになるお客様は認知されている方も多く、同時にご購入されている方も多いようです。しかし、一人暮らしで中小型サイズのテレビを探しにこられたようなお客様には、まだ、浸透度が低いようです。そうしたお客様に対し、店頭からも「簡単に録画できるんですよ」ということをご説明いただきたいと思います。

今回は福山雅治さんのCMも、録画対応を全面に打ち出して展開していきます。「記憶するレグザ。」をキャッチコピーに、幅広い層のお客様へ、これまで訴えてきた画質と共に録画する楽しさをお伝えしていきます。

新しく加わった「Rシリーズ」、画質ももっと高画質で楽しみたいという方には「Zシリーズ」、外付けは面倒であるという方には内蔵タイプの「Hシリーズ」と万全のラインナップを完成しました。今回、Hシリーズの42V型と37V型の大型モデルには新たに「クリアパネル」を採用し高画質化を実現しています。

 

── 地デジとエコポイント制度の相乗効果で、テレビ市場にはかなり勢いが出ています。

岡田年末商戦のピークは対前年比で180〜200%くらいはいくのではないかと思います。エコポイント制度が終了する予定の来年3月末には、相当の駆け込み需要が予想され、200%以上はいくのではないでしょうか。2台、3台と同時に購入されるまとめ買いのお客様も増えています。32V型がここに来て急伸していますが、値頃感も手伝って、すでにパーソナルとしての用途がこのサイズにまで高まってきているのではないかと思います。

テレビがこれだけ注目されているこのチャンスに、<CELLレグザ>をはじめ、<レグザ>が提供する新しい機能や楽しみ方を、できるだけ多くの方に知っていただきたいですね。

 

── 大型化・薄型化も進み、次のテレビはどうなっていくのか。お客様も大変関心が高いテーマと言えるのではないでしょうか。

岡田メーカーは、次の時代のテレビにはこのような可能性があるのだということを、常に提案し続けていかなければなりません。より付加価値の高いものをお伝えていく中で、今回の<CELLレグザ>もそのひとつです。多機能・高機能でいろいろな楽しみ方ができます。お客様はそれぞれの生活スタイルの中で、当初、私たちが想像もしなかったような録画の楽しみ方ですとか、高画質のLEDバックライトで楽しまれる映像も、映画だけではないと思います。

私たちが提案をし続けなければ、テレビは安ければいい、番組を見られればいいというコモディティ化した商品になってしまいます。東芝は業界の先頭に立って、テレビがもっと楽しいものであることを、また、そう感じていただける新しさを実現し、これからも訴え続けていくことで、販売価格のダウンを抑制し、ご販売店様が望んでいる単価アップをご支援させていただければと考えています。

 

◆PROFILE◆

岡田 淳氏 Atsushi Okada
1982年(株)東芝入社。ビデオ事業部国内営業部門で販売企画・販促・広告に携わる。2003年4月デジタルAV事業部DAV国内営業部長に就任。DVDレコーダーの国内市場導入を行う等録画機器の国内営業活動に長年従事。2009年10月に現職就任、現在に至る。趣味は読書、映画鑑賞。