巻頭言

遥かなる上海

和田光征
WADA KOHSEI

浦東(プートン)新区の龍陽路駅から上海浦東国際空港までの約30キロ、リニアモーターカーに乗った。東京から新横浜までの距離を想定して頂きたい。

出発すると、徐々にスピードが上がる。あっという間に時速200km、300kmと上がり、400kmを超えると車内に歓声が上がる。そして最高速度430kmに達し、430〜431kmを体感した僅かな時間をピークにスピードダウンし、空港駅に到着した。出発から僅か7分余りであった。

途中、ちょうど中間辺りでドン!という音がした。上りと下りの車両がすれ違った一瞬である。

時速431kmの体験とはいえ、速度表示をしっかり見ていたため、その車窓風景までは認識できなかった。しかしそれは貴重な体験であった。

私にとって、はじめての上海である。人生で余りにも遅い中国本土への旅であるが、CAVジャパンさんの社員研修旅行に同行させていただいたのである。

成田から広州に飛んでCAVの工場へ。奇麗な、整理整頓された本社工場を見て、黄社長の経営姿勢を瞬時に読み取った。日本式品質管理を採用するなど、万全を期している。黄社長の社員およびワーカーへの愛情も深く、統率がしっかりとれており、CAVジャパン法月社長との強力な連携で急成長を遂げたこともうなずけた。

他企業の工場不況の中、優良企業として広州市長による表彰の申し出もあるとのこと、それも当然の帰結である。

CAVジャパンとCAVから生み出される商品の秋の陣が楽しみでならない。中でも真空管ハイコンポ、素晴らしいできばえで話題をさらうこと必定だろうと確信している。

広州から上海へ。中国での認識では、人口で広州がおよそ1000万人、上海はおよそ1858万人とのこと。北京は1740万人。トップは重慶で3000万人。

上海の2008年のGDPは1兆3698億元。上海メガロポリス圏のGDPは5兆元で中国全土の25%に達するというから凄い。中国有数の巨大都市で、2010年の上海万国博覧会に向けインフラ工事の真最中。世界不況など存在しないのでは、と思わせる勢いである。

上海といえば三国志を思い出す。三国時代、呉の孫権が242年に創建した龍華寺から上海は始まり、約2000年の歴史を持つ大都市なのである。近年大きな変化をもたらしたのが、租界時代を経て1980年ケ小平が唱えた改革開放だ。その後急激な経済発展を遂げ、さらなる発展の途中にある上海を、私は日本と対比しながら色々と思いをめぐらせ、目の当たりに体現した。

早朝6時、一人でウォーキングに出発した。7時にホテルに帰る予定で、租界地の高級住宅街を縦横に流れるプラタナスの並木道を早足で歩いていたら、どこまで行ってもホテルに帰る道がみつからない。

迷ってしまったことにようやく気づいて20分余り歩き回り、結局タクシーで7分かかってホテルに着いた。すっかり同行者の笑い者になってしまった。

明朝時代の老街と高層ビル、そして租界地の洋館が混在する上海は、ひろくて深いエネルギーに満ちた別世界であった。

ENGLISH