木村 純氏

来年3月末の200万接続を視界に捉え
接続数と利用率の両面から販促を徹底強化
(株)アクトビラ
代表取締役社長
木村 純氏
Jun Kimura

アクトビラへの接続数が5月26日に100万台を突破した。デジタルテレビの新たな魅力を実現するアクトビラには、店頭においても強力なセールスポイントとして、期待はますます高まりつつある。アクトビラでは、接続数の拡大とコンテンツの利用率アップという2つの軸からのプロモーション展開にもさらに力を入れ、来年3月末の200万台接続も視界に捉える。4月に代表取締役社長に就任した木村純氏に話を聞く。

店頭はお客様との接点として
もっとも大切な情報発信拠点

周辺環境が一気に充実
5月に100万接続達成

── 4月1日に、アクトビラの社長にご就任されました。

木村氏木村 設立当初から社外取締役として役員会にも出席しておりましたが、やはり事業というのは、外から見るのと中から見るのとでは随分違いますね。社員の皆さんともいろいろ話をしながら、6月1日付けで、組織にも少し手を入れました。できるだけシンプルな形で仕事を進めていくことを狙いに、いままではフラットにいろいろなグループがありましたが、これを、事業開発部、マーケティング部、技術開発部の3つに集約して、大きくくくり直しました。仕事の流れも大変わかりやすくなったと思います。

── 昨年末のお話では、「09年末に100万接続達成を」とのコメントがございましたが、就任早々、5月26日に達成されたとの発表がありました。かなり前倒しでの実現になりましたね。

木村昨年は、アクトビラに対応した機種そのものの数がなかなか増えないこともあって、厳しい環境にありました。ところがこの春になって一気に、アクトビラ ビデオ・フルに対応した機種が各社新商品に出揃いました。ソニーさんからは、リモコンにアクトビラボタンをつけていただいたモデルも登場しています。また、光ファイバーの普及も大変順調ですし、宅内での接続という課題についてもPLCが使えるようになりました。これら取り巻く環境が短期間で充実したことにより、新規の接続数やさらにはその利用率まで、一気に上がってきたのではないかと考えています。

また、4月には、パナソニックさんが「ビエラでアクトビラ」、ソネットさんが「ソネット光でアクトビラ」と、同時期に違うコマーシャルで「アクトビラ」の名前を入れていただいたこともあり、認知率もかなり上がってきています。

昨年11月末時点の調査では、「アクトビラという言葉を聞いたことがありますか」という問いに対し、「ある」という回答は25%でした。それが3月末で38%、コマーシャルの後の4月下旬では45%です。まだまだブランドの認知率としては決して高いとは言えない数字ですが、それでも、ふたりにひとりはご存じいただいているレベルにまでなって参りました。

ここからさらに数字を上げていくためにも、「どうしたらアクトビラを使えるのか」、そして、「アクトビラを使ったら何が楽しいのか」。この2点をしっかりと伝えていくことは欠かせませんので、そこに重点を置いたプロモーションを積極的に展開しているところです。

2010年3月に
200万接続を目指す

── この夏商戦には、接続台数もまた一気に拡大しそうですね。

木村新規の接続台数は、4月には過去最高の7万台を記録しました。その後も5月に6万台を記録し、引き続き高いレベルをキープしています。動画対応が4割、静止画対応が6割というのが内訳ですが、こと、年が明けてからの毎月の新規接続数に限れば、動画対応のモデルの接続数の方が静止画対応の接続数を上回っています。全体でも、動画対応のモデルの接続機が半数を占めるのも、時間の問題です。

また、せっかくつなげていただいても、それで終わりではなく、どんどん使っていただかなければなりません。この点からも、動画対応の機器の利用率は、静止画対応の約1・5倍と、利用率も大変高くなっています。やはりテレビは、静止画より動画との相性がいいのですね。

この夏のボーナスシーズンには、店頭で販売される薄型テレビの30から40%がアクトビラ ビデオ・フル対応になってくることが予想されます。年末にはおそらく50%を超えてくるでしょう。店頭でも随分様変わりしてきて、アクトビラをセールストークとして有効にご活用いただけるようになりました。その期待にお応えしていくためにも、使っていただいている方が楽しいと感じて、毎日お使いいただけるように、コンテンツもさらに充実させていきたいですね。

なかでもシリーズものは、オンデマンドとは大変相性がいいコンテンツになります。昔の連続ドラマなどは、お客様のニーズも大変高いと思いますので、各テレビ局さんにもどんどんやっていただけるようにしていきたいですね。

── 流通サイドにおいても大変大きな期待感が感じられます。

木村今まで各社のアクトビラ ビデオ・フル対応の商品は、ラインナップのトップエンドの商品でした。高価なこともあり、お客様も比較的年齢層の高い、高所得者層に限られていたのが実情です。それが、かなり安価な商品にも搭載されてきましたので、若い方や女性の方にも使っていただけるようになりました。それにあわせて、当然、コンテンツも、広がりという面から、これまで以上に充実を図っていかなければなりません。

── エコポイント制度もスタートを切り、勢いの衰えない薄型テレビ需要はさらに加速する気配を見せています。

木村09年度は、テレビ販売が1000万台を超えるのではないでしょうか。そうなると、その中で400万台くらいがアクトビラ ビデオ・フル対応の商品となることが予想され、接続率から計算すると、あと1年でさらに100万台接続ほど増えるのではないかと思います。2010年3月末に200万接続を達成できれば、さらに勢いがついてくると思います。

アクトビラならではの
強みを最大限に活かす

── キャンペーン等の展開にも、かなり力を入れていらっしゃいますね。

木村まずは、接続していただくこと。そして、接続された方には実際にどんどんお使いいただくこと。その両面からの展開が必要になります。接続を増やしていただくためには、アクトビラだけでは力不足ですから、メーカーや量販店さんとタイアップしたプロモーションを進めさせていただいています。

また、コンテンツを楽しんでいただくためには、現在、約8000コンテンツまで充実しましたが、少なくとも2万くらいは必要だと考えています。アクトビラはプラットフォーム会社ですから、自らコンテンツを製作するわけではありません。ここは、数多くのコンテンツプロバイダーさんにご参画いただくこと。また、既存のコンテンツプロバイダーさんには、商品レンジをどんどん広げていただくことをお願いしています。

── 具体的な計画はございますか。

木村氏木村6月20日から、全国の大型量販店を中心にした約1100拠点で、パナソニックさんとのキャンペーンをスタートしました。1拠点2日間くらいを目安に、コーナーブースを設けてお客様にアクトビラを実際に体験いただくものです。従来、こうした施策は無料のコンテンツが主でしたが、今回はTBSさんのご協力をいただき、TBSオンデマンドさんのドラマや音楽などの有料コンテンツを実際に購入していただけます。課金のステップを実際に体験いただくところに重きを置いたイベントで、アクトビラって聞いたことはあるけど、こんなに簡単にいろいろなコンテンツが見られるんだということを、ひとりでも多くの人に体験いただきたいと思います。

ソニーさんからは、「Edy」「eLIOカード」での電子マネーによる決済を可能にしたブラビアがラインナップされましたが、対象のブラビアをご購入して、電子マネーで決済いただくと、500ポイントをプレゼントするキャンペーンを現在開催しています。そのポイントをアクトビラでご使用いただくと、さらに500ポイントをプレゼントするキャンペーンを同時開催しています。

これまでのクレジットカード決済に対しては、パソコンにクレジット番号を入れることに対して拒否感の強いお客様もいらっしゃいますので、今回のブラビアの電子決済による反響は大変楽しみにしています。

また、7月中旬からはソネットさんとのキャンペーンを予定しております。ソネットさんではアクトビラを利用した会員の獲得に取り組んでおられます。会員になっていただいた方にアクトビラポイントをプレゼントして、アクトビラをご利用いただこうというものです。

── 新しい試みにもチャレンジされていますね。

木村6月16日からは、地域別の広告動画配信をスタートしました。デジタルテレビにセットされている7桁の郵便番号で、それぞれのテレビがどの地域にあるものなのかを特定できますから、それを利用して、地域限定や地域で内容を変えるなど、デジタルテレビならではの新しい宣伝手法を展開します。

4月からeTENさんとは、天気予報に連動して変化する広告サービスを開始しています。例えば、天気が雨なら雨具、花粉情報の飛散量が多いときには花粉用の目薬など、天気予報に連動して、リアルタイムに変化する新しい広告サービスです。

デジタルテレビ向けのネット型の広告は、まったく新しい分野となります。パソコンにおけるクリック数やページビューの評価は、テレビは接触時間も長いですし、適切ではないと思います。その評価手法については、専門家の間でも研究が進められているところです。また、7月7日からは、「アクトビラ占い」で、新しくデジタルコンテンツ課金もスタートします。

動画のアクトビラ ビデオ・フルで一気に勢いが加速してきましたが、一方、静止画においてこれから期待しているのは「ショッピング」です。これまでのショッピング番組はリニアですから、自分の欲しい商品がいつ出てくるのかわかりません。しかし、アクトビラはオンデマンドというのが最大の差別化ポイントです。商品ジャンルでも検索できます。また、デジタルテレビ向けのネットサービスとして、PCとどう違うのかといった差別化もポイントとなります。例えば、画質が圧倒的にきれいで、大きな画面で見られる。IDやパスワードなしで、アクトビラボタンひとつで、セキュアなサービスが提供できるといった点がポイントになります。アクトビラならではのよさを、もっと伝えていかなければと思っています。

積極的なコラボレーションで
店頭の情報発信力を強化

── やはり、プロモーションにおける店頭の役割は大変大きいですね。

木村デモをして、お客様に見ていただくのが一番わかりやすいですからね。そのためには、売り場にもきちんと光ファイバーを引いていただくことが必要です。メーカーさんともいろいろな展示プロモーションでやらせていただいてきましたが、多くの拠点で、きちんとデモをしていただける環境が整ってきています。

課題としては、これまではアクトビラ ビデオ・フル対応のモデルがトップエンドの大型モデルでしたから、壁面の展示がほとんどでした。それが、17V型の小さなテレビにまで対応が拡がってくると、島展示されるケースも出てきます。そこへ光回線をもってくるのは結構大変なんですね。

この春のキャンペーンでは、デモ用にアクトビラ専用のサーバーを用意して、光でつながなくても、アクトビラのプロモーション映像をあたかもリモコンで操作して見られるような工夫も行いました。今後、こうしたシーンが拡大してきますから、どういう状況でも、きちんとデモができるツールを提供していかなければなりません。

店頭では、ISPさんが会員獲得のキャンペーンにアクトビラを入れていただいたり、キャリアさんが光ファイバーの推進のためにアクトビラを推奨いただくなど、量販店さんを含めた、さまざまなスタイルでのコラボレーションの取り組みも活発になってきました。

いろいろなトライアルを行いながら、例えば、コンテンツのカタログについても、今回はミニサイズのものも用意して、新たに、アクトビラそのものの説明や、どうしたら簡単に接続ができるのかといった情報提供にもウエイトを置いてみました。店頭はお客様との接点としてもっとも大切な情報発信拠点ですから、量販店さんのご協力をいただきながら、メーカーさん、キャリアさん、IPSさんとの共同戦略で取り組んでいきたいと思います。

── この1年で対応モデルが一気に400万台増えてくるわけですから、まさに社長にご就任の年が、非常に大切な年になってきますね。

木村この2009年は事業として、サービスを立ち上げていく重要な年になります。来年の今頃は、日本で売られているデジタルテレビはアクトビラ ビデオ・フル対応が当たり前という状況になっても何ら不思議ではありません。ヤフーさんなどもIPTVの事業には大変力を入れていらっしゃいます。アクトビラに限らず、いろいろな会社から様々な話題が提供され、大変賑やかな市場になるのではないかと思います。各社がお互いに新しいコンテンツを競い合いながら、IPTVという業界そのものがもっと活性化していくことで、デジタルAV市場の活性化にもつながっていくと確信しています。

◆PROFILE◆

木村 純氏 Jun Kimura
1973年、松下電器産業(株)(現、パナソニック株式会社)入社。97年パナソニックデジタルコンテンツ(株)代表取締役社長、00年松下電器産業潟lットワーク事業推進本部欧州事務所所長、01年eネット事業本部ハイホービジネスユニット長、03年eネット事業本部本部長。09年4月(株)アクトビラ代表取締役社長に就任。