山崎一彦氏

感動体験に関わる仕事に
携わる幸せを実感し
さらなる前進を図る
パイオニアマーケティング(株)
代表取締役社長
山崎 一彦氏
Kazuhiko Yamazaki

プラズマテレビ「KURO」の価値訴求マーケティングにより、テレビ市場における熾烈な価格競争から一線を画した専業メーカーとしてのポジションを明確にしたパイオニアマーケティング。今年6月に新社長に就任した山崎一彦氏によって、その方向性にはさらなる磨きがかかる。就任4ヵ月の同氏にご登場いただき、今後の意気込みのほどをお伺いした。

私の人生理念は「共生と進化」。
仲間と共に生き互いに進化しつつ
顧客価値訴求を追求していきたい

ターゲットマーケティングで
得られた実績と課題とは

―― このたびの社長ご就任、誠におめでとうございます。山崎さんは昭和55年にパイオニアに入社されたとのことですが、その後ご活躍されてきた時期というのは、パイオニアが音からさらに映像へと事業の幅を広げてきた変化の時期に重なると思います。そしてさらなる変革を遂げた、昨今の「KURO」の価値提案へとつながってくるわけですね。

山崎 一彦氏山崎「KURO」の顧客価値提案については、お客様はもちろん、得意先の皆様、御社をはじめご協力いただいたパートナーの皆様、そして競合他社様に対しても感謝を捧げたい思いです。昨年10月に発売した第8世代の製品は、全国でプレミアフェスタを実施し、販売店様にもご理解を賜るよう説明に伺ったわけですが、おかげさまで昨年の年末商戦でも大変いい結果を残すことができました。

この第8世代は、お客様の納得できるタイミングでなければ価格変更しないというスタンスで臨みました。発売して1年を迎え、9月6日を「KUROの日」として全国二百数十カ所でKUROの体験会を催しましたところ、その効果が一ヵ月以上持続しました。今現在も実績のいい状態が続いています。

―― お客様も納得のいく価格で購入したいと思っておられますし、自分が買った商品の価格は落ちないで欲しいという思いは、誰しもあると思います。

山崎お客様にとっての価値とは、満足感であったり、コンテンツを見るときの感動であったりするわけです。そこに関わることは大変幸せな状況であり、パイオニアの営業部隊はそういう喜びを伴った仕事ができているという実感を持っています。

反面、ここでテーマとなったのはターゲットマーケティングです。感動をご理解いただける方に価値訴求したいという方向性は間違っていないと思いますが、お客様に感動を実感していただく場の創出はまだ足りません。その解決に必要なのは継続するということです。今年も東京と大阪でプレミアフェスタを開催し、御社にもお力添えをいただきましたが、これをスタートとして今度は営業現場での創意工夫で広げていきたいと思います。

また催事の方法も随分変わってきました。当社の催事も家電メーカー型となった時期もありましたが、今ではおもてなしをテーマとし、普段触れられないような映像や音楽のすばらしさ、オーディオビジュアルの文化のすばらしさを知ってお客様に感動していただく、ということができるようになりました。

当社のセールスが本当の意味でおもてなしの心を持ち、「ようこそいらっしゃいました」のご挨拶から始まる、接客の教育が改めて必要になったわけですが、ここは随分進化致しました。楽しんでいただくためのコンテンツも厳選しております。お客様のし好やお望みに併せたソフトをご用意して体感していただくということですが、こういう現場サイドの創意工夫も大きく変わり、セールスのひとりひとりが能力を磨き上げていると感じます。

音に関わる全ての領域で
お客様の感動を目指して

―― 御社がレーザーディスクの事業を始められてから、そのポテンシャルを活かせるモニターをつくるというのがテレビ事業に参入されたきっかけだったと思います。それがいつの間にか、テレビ、録画機という商材を扱う中で家電マーケットのやり方と同期していった時期もあったかと思います。しかし昨年来のKUROにおける顧客価値訴求マーケティングによって、専業メーカーとしての方向性がより一層明確になり、全社のフェーズが揃ったと言えるのではないでしょうか

山崎そうですね。パイオニアトータルで方向性を共有したということと、もう一度パイオニアとして音を思い出すということに至りました。この10月1日に本体の社長である須藤から表明があったのは、今後、中・長期で音にこだわるメーカーとしてパイオニアの舵を取るということでした。ここではあえてオーディオとは言わず、音に関わるものすべて、と表現しています。

パイオニアの総合研究所であるような、音に対して過去からやってきた研究があります。どういう音に触れたときに人はもっとも感動や違和感を覚えやすいか、ノイズを反作用でどう消すか、といったような色々な研究テーマにそった蓄積があります。リソースの見直しもこれから図っていきます。そうして商品開発を行っていくと、パイオニアのこれまでの商品カテゴリーには収まらないものも出てくるはずです。たとえばコンポーネントのようなオーディオのセットだけではなく、お客様の生活領域で音に関わってくるところ、携帯電話の音や、踏切の遮断機の音のような、すべての音にパイオニアは関わっていくことになろうかと思います。

そういう方針が須藤から出ましたので、今後は次の時代に向け、持てるエネルギーのすべてを音の領域に注ぎ込んでいく、ここにナンバーワンプライオリティをおいていくことになるでしょう。また映像処理についても、こだわりをもって継続していきますし、音にこだわり抜くメーカーの展開する映像商品群も併せてご提供したいと思います。オーディオビジュアルトータルの領域を目指していきます。

―― PASS会の活動も、昨今ますます活発になっていますね。

山崎PASS会では経営研究会、ディスプレイ販売研究会、オーディオ販売研究会、インストール販売研究会という4つの研究会が動いております。

パイオニアマーケティングが新体制に変わり、経営塾をスタートさせました。そのメンバーは当社の支店長、部長すべてと、パイオニアの国内営業部隊のマーケティングにかかわる部長です。その1回目は合宿形式としまして、自分たちの人生理念は何なのか、何をもって生きる喜びを感じたり、自分のミッションを感じたりするのかということの確認を致しました。そして併せてパイオニアの国内の営業、あるいはパイオニアそのもののミッションとは何なのかというところを追っていきました。

皆で合意確認をしながら、パイオニアのミッションとしてお客様やパートナーの皆様と一緒につくりあげていくものは、「感動」である、という結論に至ったのです。そういう作業をして、経営を担うメンバーとしての新しいスタンス、新しい考え方を皆で整理したということなのです。

重要なパートナーであるPASS会の経営研究会においては、実は先行して同様のテーマで進行しておりました。昔私自身がお世話になった販売店様、地域店様もいろいろな形で変貌されていますけれど、根本で一番必要なのは、何を持ってお客様に評価されるか、存在意義を認めていただくか、ということになると思います。経営研究会は4回を終えて、組織としての方向性を見据え、いい講座だったという評価もいただくに至りました。

ディスプレイ販売研究会は先日全3回を終えました。高精細な大画面ディスプレイがもたらすコンテンツの魅力がどれだけお客様に感動を提供するかということを考えましたが、映像のすばらしさや音の果たす役割を学びあい、新たな発見や、方向性の再確認をしていただけたのではと思います。

オーディオ販売研究会はまだ1回目を終えたところです。パイオニアのルーツである松本記念音楽迎賓館とNHK放送技術研究所で行いました。音のルーツにふれるということと、今後の映像と音楽の融合についてNHKの技術研究所がこれから進めていこうとするところを、オーディオに関わる専門店様に知っていただく機会をご提供しました。オーディオの楽しさを再認識し、ウンチクを深めていただける場となったのではないでしょうか。

インストールは大きな可能性を秘めています。その魅力を学び、このビジネスをさらに認知させることはできないか、そのためには何が必要か、インストール販売研究会では私たちも一緒になって市場を理解し、これからのビジネスの進むべき健全な方向性を模索する活動をしているのが現状です。

今期はこの4つの研究会を当初の目的どおり成就させるというのが最大の課題となっております。来期は4つの研究会のテーマをもういちど皆さんと討議し、方向性を決めたいと思います。

―― 校條前社長が顧客価値訴求の方針を出されて以来、御社は変わりました。本来のパイオニアらしいマーケティング活動を推進してこられ、私にとっても大きなインパクトがありました。

成功体験を蓄積し
共に生きながら進化する

山崎取引先様と実際に交渉にあたった私たちの部隊にとって、それはかなり高いハードルでした。ただ、これからのパイオニアの方向性や専業メーカーとしての立ち位置はどうあるべきかということは我々ひとりひとりにとっても重要な問題でしたから、社内でも徹底的に論議して意思統一をし、テーマをひとつひとつ解決しながら時間とエネルギーをかけてやってきました。それだけに社内のひとりひとりのセールスに対して得たものは大きく、自信や成功体験といったことが蓄積されました。
山崎 一彦氏
最近明確になってきた夢があります。私個人の夢でもあり、幹部との共有が拡がり始めたものでもあります。それは、パイオニアの社員や、流通の皆様をはじめパイオニアと縁の深い皆様と共に権威付けをしたいということです。映像にこだわり感動はなにかを考えること、オーディオの知識と知恵とを追求すること、お客様がくつろぐリビングという空間を極めること、オーディオ、映像、ビジュアル、この3つの要素をわかるということで、我々は数少ない貴重な部隊になると思います。そこにオーディオやインストールのところに関わる人間のステータスを上げられるような、オフィシャルな資格づくりができないかと考えているのです。

また今後のパイオニアの事業については、ご存じの通りスピーカーを揃えておりますし、AVアンプもラインナップを出しました。BDのプレーヤー、レコーダーの方向も明確に決まりました。ディスプレイに関しては協業という大きなテーマはありますが、継続する、協業の強みを活かすということで意志決定しております。

パイオニアの名前に相応しい領域とは何かというときに、本当の意味で身近にある音の領域を広げる、音をより心地よいものにする、という工夫そのものが必要だと考えます。音楽という文化を素晴らしい形で体感していただく、そのために必要な商品群は何かということになって参ります。ここは中・長期的にぜひご期待いただきたいと思います。そして短期的にはホームシアターの流れにそった形で、コンテンツの素晴らしさを伝えるものをご提案していきます。

私の人生理念は、「共生と進化」です。人生の楽しかったときを一緒に過ごした仲間、そして新しく出会う仲間、そういう人たちと共に生きながら互いに進化していきたいということ、これが私の根源的な願いです。そういうスタンスでパイオニアマーケティングの社員、各流通の皆様方、その先にいらっしゃるより多くのお客様、そういう皆様と一緒に進化していきたいという思いでおります。

―― これからのますますのご活躍に期待しております。本日はありがとうございました。

◆PROFILE◆

山崎 一彦氏 Kazuhiko Yamazaki
1957年生まれ。1980年にパイオニア(株)入社。宇都宮営業所勤務。85年東京中央営業所、91年近畿量販営業所および量販部、大阪中央営業所に勤務。97年国内営業部 マーケティング部 AVシステム課長に就任。98年首都圏量販部長に就任、2003年関西統括部長に就任、2005年パイオニアマーケティング(株)量販部長に就任、その後商品本部長、営業本部長を歴任し、2008年6月に同社代表取締役社長に就任、現在に至る