巻頭言

新しい時代の到来

和田光征
WADA KOHSEI

 米国発の金融危機は世界を一瞬にして覆い、株価は10月第2週だけで世界的に50%も暴落、百年に一度といわれる経済危機をもたらしました。そして経済は現在もマイナス基調で進行中であり、その対策に各国首脳が全力で取り組み始めましたが、危機から抜け出すには数年かかるだろうといわれています。

 この経済危機の主なる元凶が、市場原理主義とヘッジファンドの存在でしょう。彼らは株価や商品価格の振れ幅をコントロールして儲けただけであり、結局は世界に経済危機をもたらしたのです。

 危機が具体的におこる前から、米国のサブプライム問題が世界の金融に影響を与えていましたが、その根本には利ザヤを稼ぐヘッジファンドが動いていました。彼らの資金は原油へ向かい、それを高騰させていき、さらには原材料の高騰をも引き起こし、健全なものづくり産業を苦しめていきます。そして企業価値をROE(株主資本利益率)で測り、短期的に利ザヤを稼いでいきます。

 今回の経済危機は、こうしたヘッジファンドが暗躍し易い市場原理主義から、実体経済を反映した資本主義へ経済が移行することを意味します。苦しい時代が当分続くでしょうが、このことの実現は、私が心より期待するところです。そしてヘッジファンド等は、規制される方向へといくでしょう。

 ところで、今回の金融危機に巻き込まれた企業たちをみてみると、AIGは救済され、リーマンはそれが叶いませんでした。いずれも世界的企業であり、従業員数も数十万人を数え、破綻となると全世界への影響は大きいはずです。

 リーマンを利用していた人種は投資家たちで、当然、ヘッジファンドも主たる顧客でした。投資家の精神は人のためにというより、自分の利益を優先するのが常道ですから、自分の投機については自分で責任をとりなさいということでしょう、税金による救済など、とんでもないことなのです。また、リーマンで記憶に新しいのは、ライブドアがTBSに買収を仕掛けた時、資金を用意したことです。まさにヘッジファンドそのものだったのです。当然ながらの倒産です。

 AIGは生保です。人々が将来のために保険に入り、安心を求めますから、これは倒産すると大変なことになります。個人の預金や保険については原則的に守るという国の方針が、AIGを救済したのです。

 世界経済は益々厳しいものになるでしょう。

 個人消費が低迷→モノが売れない→モノづくりの現場がモノをつくれない、モノを売る現場でモノが売れない→倒産、解雇で雇用が不安定になり、失業率上昇→消費者は生活防衛型に→個人消費の低迷→実態経済の悪化

 この連鎖によって、経済は当分厳しくなることは確実で、そのことを踏まえた対策を早期にとる必要があるでしょう。とりわけ、株価の大暴落は富裕層の可処分所得を直撃しており、高額商品への打撃は計り知れないものがあります。

 そうした中にあって、デジタル家電は異業種に比べれば幾分恵まれているのかも知れません。

 地に足のついた時代の到来を切に願いながら、年末商戦を盛り上げたいと思います。

 

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