ハイコンポトップメーカー緊急座談会 <前編>

写真は向かって右側から、小林佳紀氏(オンキヨー株式会社)、市川博文氏(デノン ブランドカンパニー)、鹿野清氏(ソニーマーケティング株式会社)、和田光征(音元出版)、佐倉住嘉氏(ボーズ株式会社)、小宮山正前氏(株式会社ケンウッド)

総力を結集して市場を掘り起こす

  • 座談会進行 音元出版社長 和田光征
    Photo by Daigoro Tobari
  • 眠れるオーディオ市場が動き出した。団塊の世代向けに企画された商品が続々と登場し、その新たな切り口がにわかに脚光を浴びたのだ。現代のハイコンポの誕生である。強い反応を示したのは、実は若い世代。オーディオ復活の可能性が、ここにいよいよ見えてきた。今取り組むべき課題は何か、次なる方向性は何か、ひとつひとつを探るべく緊急座談会をここに敢行。ハイコンポをリードしてきたトップメーカーが、ついに一堂に会した。
団塊ジュニアとバブル世代もハイコンポに強く反応

――  今日はお集まりいただきまして、誠に有り難うございます。ではさっそく始めたいと思います。
ミニコンが1990年あたりから下降して以来今日まで、オーディオマーケットは縮小を続けてきました。しかしここにきて団塊世代の定年退職をいかに取り込むかというような動きが出ています。
団塊の世代は音楽を楽しもうという人が多く、これはひとつの追い風になっているかと思います。さらにそこに団塊の世代からの資産移動を見込める団塊ジュニア世代や、消費に積極的なバブル世代も加わって、ムードとしてはオーディオに対していい感じが出てきたという感じがいたします。
まずはその辺りの実感につきまして、お話を伺っていきたいと思います。

“ハイコンポのよさを活かせる店頭展開を”
ソニーマーケティング(株)
取締役 執行役員常務
鹿野 清氏
System 501
2007年「ピュアハートオーディオ」を宣言し、筐体奥行き25cmを実現した“大人のコンポ”System501を発売。本格的なオーディオへの取り組みに着手した

佐倉  4月に日本の7都市をまわってお店を訪ねました。それで聞きましたところでは、オーディオの景気は決してよくはありません。しかし私どもも含め、各メーカーさんが団塊の世代を攻めていまして、これは当を得ていると私は思っています。
音楽というのは、常に人間の衣食住の次に求められるものですから、マーケットはなくならないというのは当然のことだと思うのです。ただそういう中で、どういう感動をどんな環境で求めるかということが、世の中の流れの中で変わるのではないかと思っています。そういったテーマで、私どもなりに一生懸命にさまざまな要素を追い掛けて商品開発をしております。

鹿野  今日はこういった場をいただきまして、本当にありがとうございます。
当社はもともとオーディオの会社であり、音に対するこだわりというのは持っております。ここのところ数年はポータブル、パーソナルオーディオがメジャーだったのですが、もっと音楽と親しんでほしいという気持ちで、この1〜2年はオーディオにかなり本腰を入れ、この3月に「大人のコンポ」という、団塊世代の皆様方に向かっての商品提案をいたしました。
私もお店を回って感じますのは、この「大人のコンポ」に対して、実は大人の方だけではなく、30代から40代ぐらいの若い方が反応を示してくれるということです。
そんな中で我々も、本当にリラックスして音楽を楽しむ、そういった時間を提供できる商品づくりをしたいと思っております。今日は皆様方と意見交換をさせていただき、いろいろなことが見えてくるのではと思います。ぜひよろしくお願いいたします。

“メーカーが集まって雰囲気のいいデモを”
ボーズ(株)
代表取締役社長
佐倉住嘉氏
AMS-1W
90年代からボーズスピーカーの能力を最大限に活かす独自のシステムを展開。AMS-1IVはすでにシリーズ四世代目となる人気商品である

市川 私どもの場合は、ずっとオーディオ専業メーカーとしてやってきまして、コンポでは非常に多くの商品を持っております。全盛期とは比較になりませんが、ここ2〜3年は我々の市場も徐々に右肩下がりから抜け出したという感じを持っており、商品の顧客層を見ますと、一時期に比べ年齢的には若返っているように感じられます。
我々もオーディオの需要を掘り起こそうといろいろな試みをしている中、DENON銀座音楽倶楽部というところで、毎月1回好きなディスクを持ち寄ってオーディオファンの方に聴いていただくイベントを行っておりますが、その参加者の年齢層も、非常に幅広くなっています。
あるいは最近、小学校で試聴会をさせていただいております。ラジカセと我々のコンポーネント製品とを比較試聴すると、小学校のお子さんも音の違いに気づく。そういった面から見ましても、まだまだ我々の需要というのは幅広い年代がターゲットになる余地はあると思います。
我々も昨年の暮れに、ハイコンポというジャンルに入るCXシリーズという商品を出しました。やはりこれも団塊の世代にターゲットを置いた新しいデザイン志向の商品という側面があったのですが、実際には需要は我々が当初意図したところよりもはるかに幅広いものでした。
そういう意味では、まだまだ幅広い層がオーディオに対する興味を持っているのではないかと感じています。

“もっといい音を聴かせる仕掛けがほしい”
(株)ディーアンドエムホールディングス
デノン ブランドカンパニー  プレジデント
市川博文氏
CXシリーズ
90年初頭からいち早くハイコンポに着手、プレスタなどのロングラン商品を生み出した。昨年末よりCXシリーズを新展開し、新たなユーザー層にアピールする

小宮山 オーディオの中で昨今の変化として、ITと融合したものへの広がりがありますが、一方で高音質への志向、ピュアへの回帰基調といったものもあると思います。
私どもも90年代にK'sというハイコンポを出して、その後市場が縮小したということもあっていったんリセットしましたが、2004年にKシリーズを再び立ち上げました。このとき「お父さんのためのオーディオ」をつくろうということで始め、最初に狙ったターゲットとしては40代、50代というところでしたが、その後の追跡調査では、購買層が20代後半から50代後半までと意外と幅広いという結果でした。
団塊の世代と団塊ジュニア世代は、日本の人口構成の中で飛び抜けて大きい割合を占めるわけです。この方々は、音へのこだわり、あるいはデザインへのこだわりがあるのではないかということが、その追跡調査から出てきました。Kシリーズはその後も安定して売れています。
デジタルオーディオ系のDAPと言われるポータブルは、アップルさんがある意味文化を変えたと思います。従来の光メディアに代わって、自分の全財産である楽曲をいつも持ち運んで、好きな時に聴けるという文化です。プレーヤーそのものは2〜3万円以下ですが、それを聴くのに3万円以上もするようなヘッドホンが動いているということからしますと、やはりいい音で聴きたいという潜在ニーズがあるという感じがします。そこで私どもでは、Kシリーズを発展させた形で、昨年エシュールという商品を出させていただきました。

“沢山ある音楽ソースをいい音へ結びつけたい”
(株)ケンウッド ホームエレクトロニクス事業部 
事業部長/技師長
小宮山正前氏
Kシリーズ エシュール
90年代からK'sを展開し、ハイコンポ市場をリード。04年からKシリーズを新展開、さらに06年のKシリーズエシュールでハイコンポへの次なる一歩を示す

小林 私どもの場合は、とにかくいい音をつくりたいということでやってきましたので、特に団塊世代の退職というところだけに絞って商品をつくってきたことはありません。ハイコンポでは、1993年にインテック275という商品を出しましたが、1999年ぐらいまでのところでピークを迎えています。
市場としても、2000年以降は急降下し、2004年ぐらいになると落ちるところまで落ちたという感があり、そういう意味で非常に安定した形で現在まで来ているというのが現状かと思います。その間に当社はインテックシリーズを、275が最大で、205、185、155とサイズを小さく使いやすくつくっていったわけですが、あくまでもそこには音へのこだわりが中心にありました。
2004年にMD離れが起き、その後DAPなどが普及し始めますが、これによって音楽人口が少し増えてきているのではないかと私自身は感じているのです。また圧縮音源が増える中で、いい音で楽しみたいというユーザーが間違いなく増えてきているのではないかと思います。当社については、今後もこの二極化は間違いなく進んでいくだろうと捉えています。

女性のニーズをどう捉えるか 商品づくりに大きな課題

――  団塊をターゲットにしても、実際はもっと下の層が買っているという現象があります。我々がいろいろなメディアを展開する中で感じているのは、3つの層の存在です。まず団塊ジュニア、そしてバブル世代というのがあります。さらにその上に、団塊の世代。この中で意外と注目できるのはバブル世代です。
彼らは学生時代から消費性向が強く、加えてそこに親からの資産移動もあります。恐らくそういった人たちがハイコンポに動いてきていると感じており、この辺の層というのは、これからの市場を動かすエンジンになるという感じを私は持っているのです。

鹿野 心配なことは、お客様の大半が男性だということですね。女性の方の反応をもらえていないというところを、どう刺激したらいいのかという悩みがあります。

“チャンスは絶対ある。皆で掘り起こしたい”
オンキヨー(株) 執行役員 
AVC事業本部
小林佳紀氏
“オーディオPC”SPX-1
90年代から、ヒットモデルであるインテックシリーズをさまざまなサイズで展開。2007年に“オーディオPC”という新たな切り口で、オーディオの未来を切りひらく

市川 本来オーディオ商品を購入しようとして販売店にいらっしゃるのは、やはり男性ですね。ただ、ある程度デザイン的にきちんとした商品をつくりますと、フルサイズのコンポを反対していた奥様方の抵抗に遭わなくなったとおっしゃる販売店さんが多いです。やはり需要のきっかけには、女性の存在が大いにあると思います。

鹿野 最近はすべてのカテゴリー商品において、その最終の購入決定権がみんな奥様に移っています。我々も実は奥様方に向かっていろいろなアプローチを始めたのですが、ハイコンポの世界でもまさにおっしゃった通りです。もしそこにまた新しい切り口があるのであれば、新しいチャンスが生まれるという期待はありますね。

小宮山 切り口の1つはデザイン。やはり家や部屋とのバランスではないでしょうか。当社は60周年ということでエシュールの限定モデルを出させていただいていますが、その購入状況を見ますと、中には奥様が決めた、お子さんで決めたというケースもありました。商品のデザイン的な特徴を含め、従来のものにはない存在感に、共感していただいたと思っています。
あとは使いやすさですね。IT系の機能を盛り込んだ装置というのはボタンの数が限られているものですから、操作が複雑でよく分からない。それに比べれば、ハイコンポというのはある意味で非常にシンプルさを問い掛けたところがありますので、女性にはむしろ使いやすいかなという感じはしますね。

佐倉 私どもはアウトレットモールに店を出していまして、モールそのものは9割が女性のお客様です。その中の1割か2割の男性が我々のところに来る際、女性も一緒に来ます。女性だけで来る場合もあります。
音楽は男性よりも女性の方がむしろ好きですよね。けれども、女性に訴求する手段はなかなかないんです。女性対象のメディアへも、なかなか売り込みができないですね。ただ、先ほどケンウッドさんがおっしゃったように、使い勝手が良くてデザイン性に優れていれば、女性は買って下さるのではないでしょうか。実際に売っていてそう思います。

鹿野 私どもも、限られた流通しか持っていないのですが、オーディオの店先にはやはり、なかなか女性の方は近づき難いのかなという気はしますね。もっと女性の方にも来ていただけるような工夫は、必要だと思います。多分、いい音を聴くともっと動くのではないかと思うのですが、その場をまだ与えきれていないのが現状です。

佐倉 女性の場合はオーディオのハードにお金をかけるよりも、旅行などもっとプライオリティの高いものが別にありますね。

小宮山 Kシリーズを購入されるお客様は、やはり男性の方が多いですね。ただ、ご夫婦でお店先に来ていただいて、財布は奥様が握られている。先ほど言ったデザインとか、あとは販売店員さんに「これはいい音ですよ」という紹介をしてもらったりしたときに反応があるという感じですね。
確かに女性1人で買いに来るかというと、それはなかなか難しい。私どももやはり女性を対象に、どうやって訴求していくかというのは課題だと感じています。

鹿野 私どもは、もっとお手ごろな、3万円とか4万円のセットも持っていますが、そこはもう確実に女性がメインです。その人たちがもしいい音を聴いたら、それがたとえ10万円や20万円でも動くのかなという期待もあります。

メーカー間の力を結集しさまざまなプロモートを

佐倉 価格が10万円となると、やはりキツいですよ。女の人はなかなかハードウエアにはお金をかけないですね。女性のメディアがもう少しオーディオを取り上げてくれると、流れが変わってくると思いますが。

小林 インテックを275から205というサイズにしたときには、女性のお客様が多かったですね。そういう意味では今おっしゃったソニーさんの奥行き25cmの商品とか、使い勝手のよさというものはとにかく奥様ソリューションの商品だと思うんですよ。置き方で部屋が狭くなるとか、配線が複雑だとか、その辺のところをうまく解決するしか方法はないのかなという気がします。
ハイコンポにおいても使い勝手や大きさ。シンプルで、女性でも子どもでも誰でもすぐに使いこなせるというようなところがポイントではないでしょうか。あとは佐倉社長がおっしゃったように、どうやってメディアにそこのところを訴えて盛り上げていかれるかということ。
たとえば宣伝でもみんなで一緒になってやるような方法もあるのではないでしょうか。この市場は絶対にチャンスがある。音楽をいい音で聴きたくないという人なんて、基本的にはいないと思うんですね。
最近は安い商品よりもハイコンポの方にメーカーがみんな力を入れていっているので、もう1回掘り起こせる可能性というのはすごくあると感じています。

――  「ハイコンポ」というジャンルの登場は1993年頃で、ミニコンが全盛でした。全盛であるがゆえに、次の仕掛けをしておかないと駄目ということで、そのときに提案したのがハイコンポでした。
ハイコンポについては、基本的にそのメーカーのブランドを前面に出して、これこそうちの音なんだ、あるいはうちのデザインなんだというところを表現してほしいと考えました。
その表現の条件としては、だいたい左右のサイズが25センチから30センチ。クオリティはいわゆるフルサイズのシステムと同等かそれ以上。それからリモコン、つまり簡単操作ということです。それからもう1つは、ハイデザイン。こういったことによって商品の性向が変わってきたと思います。
それである段階に達し、もう少し上の層を狙おうと今度はスーパーハイコンポという表現を使いました。ボーズさんのウエストボロウや、ケンウッドさんのエシュールがそのあたりから登場してきました。
かつてこのような動きがありましたが、それがここに来てもう1回元気になってきました。むしろあの当時よりもかなり進化した商品が揃ってきたと思います。
オンキヨーさんのオーディオPCですとか、デノンさんの場合には単品としても高い意味を持ったCXシリーズという商品を出されましたし、ソニーさんのシステム501は奥行きが25センチという、ある種の革命的な商品。ボーズさんのAMSシリーズも含めて、いろいろと商品が出揃いにぎわってきたなということですね。
それぞれのハイコンポのマーケットをどうやって押し上げていくかというテーマは、今まだ緒に就いたばかりです。やはり今の商品群も、ハイコンポというジャンルに収めて、共通認識をもって展開していくべきだと思っています。

鹿野 残念ながら、お店に行きますと相変わらず同じような並べ方で、棚の中に商品が収まっているだけなんですね。
これは我々の仕事でもあるのですが、量販店さんであれ、オーディオ専門店さんであれ、もう少しハイコンポのコンパクトさとか、いい音というイメージをつくる店づくりを進めていく必要がありますね。

小林 我々が一緒になって、ハイコンポコーナーという1つの売り場提案を確実にやっていく。そしてその中で、例えば昔ながらの試聴会のような敷居の高いやり方でなく、もっと違った形でのアピールをするというようなことはできるのではないかと思うのです。

佐倉 雰囲気のいい形でのデモを、メーカーさんが集まってやるというようなことも話題性があっていいですね。

小林 全国の主要店からスタートして、やはり店頭でデモを行っていく、というところですね。ハイエンドと違って、もっと気楽に味わっていただけるようなアクションを起こさないといけないという気はしています。

鹿野 私どもはたまたまサイズの小さい商品をつくったものですから、その小ささをお客様に伝えるために、やはり実際の部屋だとか戸棚に置いてみないとなかなか分からない。たとえば家具屋さんでの展開なども考えてはいるのですが、なかなか難しいですね。我々も全く同じ悩みを持ちながら、どこかきっかけが欲しいと思っているのです。
今日の話も非常にありがたく感じていまして、もし全国のキーになるお店でそういうコーナーづくりができたら、それだけでも全然変わってくると思います。

小林 むしろ大型量販店さんの中でスペースをもらうというのも手ですね。1000坪、1500坪の店があるのだから、そこを活かした訴え方をしていったほうが効果は高いのではないですか。

鹿野 今まさに量販店さんのフロア面積もさらに増えているわけですが、そこでは同じものをたくさん並べている。ならばそれこそその一角に、コンパクトの良さをアピールするぐらいの棚づくりができればと思います。

小宮山 お客様への、エンドユーザーに対しての訴求というのが1つ。それから、今おっしゃっているお店に対する訴求ですよね。両方をどうやっていくかです。

市川 先ほどから出ている話で、女性の需要という部分と、ポータブルオーディオプレーヤーによる音楽の訴求というところを見ますと、ポータブルオーディオプレーヤーというのは必ず女性も男性も需要があると思います。
女性の方は、ポータブルオーディオプレーヤーを買うのに電器屋さんに行くわけです。そこでハイコンポのような、デザイン的なセンスが優れた、きちんとしたオーディオ商品というもので音楽を聴く機会があればと思います。
今までポータブルオーディオプレーヤーで聴いていた音がこんなに素晴らしい音で聴ける、もっと安らげるということをアピールできるような仕掛けができれば、これはもう女性の需要として、もっともっと開拓できるのではないでしょうか。
それは我々もずっと考えてはいるのですが、具体的なアイデアに至っていないのが現状です。

鹿野 私もそういう悩みから、ポータブルオーディオを接続できて、PCを使わずに楽しめるというコンセプトでシステムをつくったのですが、そういうことをもっと、ハイコンポ的なところまで持っていくことも必要なのかと思います。やはり10万円というところが1つの壁になりますね。

市川 一言で女性と言っても、やはり幅広いですからね。それが例えばシングルの20代の方を指すのか、それとも、団塊ジュニアやバブルエイジの奥様を指すのかというところで、また違ってくるとは思います。
確かにシングルになってしまうとやはり10万円というのは1つのハードルになってしまうでしょうし、これがもう少し上の層で決定権がある奥様という見方をすれば、別に10万円というところにハードルはないのではないかと思います。

―― バブル世代とか団塊ジュニアの世代というのはほとんど家族ですよね。そこが狙い目だと思います。これはシアターの場合もそうです。だから、皆さんがリビングシアターとかリビングオーディオとかいうような提案ができるのも、その世代がターゲットなんですよね。

鹿野 そういう意味ではますます、使い勝手を含めてデザインの要素は大きいですよね。

小宮山 全体層を増やそうとすると、やはり先ほど言ったDAPを扱う若い層ですね。またDAPは今、かなり年輩のサラリーマンまでお持ちです。
私どももポータブルも出して感じましたのは、音楽を聴くシーンがさらに多様化してきている。音源は何かというと、買ってきたCDもあり、借りてきたCDもあり、配信もあれば、パソコンにも入っている、携帯電話にも入っている。音楽ソースがこういろいろばらまかれている状況下で、最終的にはいい音で聴いていただきたい。何かここを結び付けるような仕掛けを、やはりメーカーサイドとしてはやっていかなければいけないのかなと感じています。
今、私どもとしてはシームレスワールドというテーマで、デジタル音源なども扱える、ハンドリングできる、アナログ音源なども扱える。そういうようなことで、とにかく音楽に対して、音に対してユーザーの方にもう少し意識を向けてもらって、拡大した層の中で、こういういい音もあるんですよという方向に導けたらという思いがあります。
女性ユーザーだけに絞ってということはなかなか難しい。しかし、全体層を増やした中で、というやり方はひとつあるかもしれません。いろいろな音源にいろいろなインターフェースを提供して、音楽を聴くシーンをサポートができればと思います。それで全体の層に対して、もう少し音楽の方に目を向けてもらえればという思いです。

鹿野 今、特に若い人は、DAPに限らず携帯電話でも音楽を楽しみますが、それでも音オンチというのではなくて、たまたまいい音を聴いたことがないだけなんですよね。けれども、今の10代の子たちは携帯音楽とDAPしか聴いていないので、このまま30代、40代に成長するとどうなるのかという心配はあります。市川さんが先ほど学校でやられたとおっしゃっていましたが、すごくいい話ですね。

――かつてウォークマンが出たときも、みんな心配していましたよ。ところが、意外とそうではないんですよね。人間のほうが利口で、むしろ装置が手軽になることによってますます音楽を楽しんでいきますよね。潜在需要を掘り起こしてくれていると考えていった方が、次のステップにつながるのではないかと思います。

佐倉 音楽を再現するための道具というのはどんどん進むということは確かですけれども、人間の音楽への嗜好というものは変わらないですからね。

次のテーマとなるのは日本独自の録音文化

市川 日本のオーディオの歴史は録音とすごく密接にかかわっていますよね。昔はFMエアチェックが1つのオーディオの需要を画したし、それから今度はウォークマンが出まして、カセットテープに自分の好きなレコードなりCDを録音する。次のステップはMDになっていって、今それがDAPになった。そこでは、DAPの音を記録するための装置はPCになってしまっている。今あるオーディオの需要というのが一通り出尽くしたかというふうに思えるのですね。
そこでこの先どうやって発展させていくかという1つの方法として、オーディオを録音するための装置として考えるのか、それとも純粋に音楽を楽しむための装置として考えるか。その岐路に来ていることは確かだと思います。

―― 音楽を録音するという文化は絶対に大事だと、鹿井さん(編集註:オーディオ協会会長)も言っておられます。人間には好きな音楽だけを集めたいという欲求があるのだと。今はそれがPCで簡単にできてしまいますね。あとは、その質をどうするかということが問題です。

鹿野 それから、デジタルのおかげで大容量の中に膨大な数の楽曲がたまるようになりました。それは過去にできなかったことですよね。これをもう少し分かりやすくするというテーマがあると思います。

小林 日本人は、国民性としてすごく録音が好きなんですよね。そこでオンキヨーの場合は、インテック205に合わせたオーディオPCで、24ビット96ヘルツの非常に高音質の音源をダウンロードし、再生するというところを1つの切り口として、開発を何年もかけてやったわけです。
これは時間をかけて広げていきたいと思っています。メーカーさんの中でこれを「いいよね」ととらえていただいて、一緒になってやっていただけたら、もっと早く広められるのかなという気はしています。

鹿野 実は私どもも43cm幅の中にハードディスクを入れたものを出します。それも圧縮音源でなくて、あえてリニアPCMでCDを落とそうという考え方です。これこそいい意味でのデジタルIT技術で、それを逆に今度はリニアのPCMのいい音で、とにかくどんどんためこんでいく。リニアPCMで入るということが一番大きいと思っているんです。

小林 音楽配信のこれからの広がりを見たときに、そういう商品が必要ではないかということで決断しました。当初は、オンキョーがPCつくってどうするんだと言われましたけれど、あくまでも高音質を追求していく上において、それから今のメディアに対して、それでいい音が出せるのだったらいいのではないかという結論でした。

鹿野 そういうことも含めて、さきほどお話があったお店での演出といったことを皆さんと一緒にやらせてもらえれば、この市場は活性化できるのではないかと思いますね。

ハイコンポトップメーカー緊急座談会 <後編>